見慣れない男性が医進館内をスマホで動画撮影している
これだけの受講料を支払った医学部受験生たちも、受験直前にふいに破綻の知らせを聞かされたことは同じだ。
「医学部受験生は一人当たりの収益がかなり多く、たとえ数十人でも昨年春の開講時に会社は多くの売り上げを手にしたはずです。それが1年もたたずに破綻しなければならなくなるとは、どういう経営が行なわれていたのか」と別の予備校関係者はいぶかしむ。
破綻に絡んでは別の不審な状況も明らかになっている。破綻方針が公になる前に、ニチガクやメディカル医進館の備品が持ち出されていた疑いがあるというのだ。現職の同社関係者が話す。
「昨年は12月30日が最後の開館日で、塾生らは自習も含めて建物内で勉強をしていました。ところがその日の昼までに、医進館にあった“赤本”と呼ばれる各大学の過去問集が本棚からほとんどなくなったのです。赤本はこの時期の受験生が最も頻繁に使う参考書で、これが本棚からなくなったことは受験生にはショックだったでしょう。この出来事がきっかけで経営危機がいよいよ本格化したのではないかという噂が飛び交いました。
そして案の定、今年の最初の営業日である1月4日朝、破綻方針がニチガクの建物に貼られた紙で知らされたのです」(関係者)
別の同社関係者は「今から思えば、11月ごろから見慣れない男性が医進館内をスマホで動画撮影していると話題になっていました。また、すでに代表取締役を退いていたB氏はそのことを隠したまま12月になると頻繁に医進館を訪れ、また別の見慣れない男性を伴っていたのを多くの人が目撃しています」と話す。
会社側からは弁護士に、会社整理の依頼が遅くとも昨年12月初旬には行なわれている。こうした破綻劇を主導したとみられるB氏は、破綻方針公表後は電話に出ず、自宅のインターフォンにも応答がない。
B氏は年末に医進館で何をしていたのか。赤本はなぜ破綻公表前に本棚から消えたのか。関係者は「日本学力振興会や関連会社間の資金の流れについて警視庁も関心を持っている。会社整理の作業と並行して捜査対象に浮上する可能性がないか、関係者は注視している」と話す。
受験生を苦境に追いやり、予備校業界全体への信用にも響きかねない問題の解明はこれからだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班