ヴィクトリアの滝が唯一無二の存在である理由は? / Credit:Canva
Just learned that standing this close to a 380 feet waterfall is a thing (Devil’s pool – Victoria falls ) pic.twitter.com/Y5PVQVwxzk
— Nature is Amazing ☘️ (@AMAZlNGNATURE) May 25, 2024
巨大な滝を間近で見ると、人は自然の力に驚き、畏敬の念を抱くものです。
この動画に映っているのは世界三大瀑布の1つ、アフリカ南西部にある「ヴィクトリアの滝」です。
この滝は単純に落差のある地形の境にできた滝と異なり、細い地面の割れ目に膨大な水が流れ込むという、非常に変わった地形で唯一無二の存在だと言われています。
ゲームならともかく、こんな景色が現実にあると考えると、その地形がどのような歴史を経て形成されたのか気になってきます。
特殊な地形の形成プロセスを見ていきましょう。
目次
世界三大瀑布の1つ「ヴィクトリアの滝」とは?ジグザグに後退していく「ヴィクトリアの滝」とその形成
世界三大瀑布の1つ「ヴィクトリアの滝」とは?
Just learned that standing this close to a 380 feet waterfall is a thing (Devil’s pool – Victoria falls ) pic.twitter.com/Y5PVQVwxzk
— Nature is Amazing ☘️ (@AMAZlNGNATURE) May 25, 2024
この動画では、巨大な滝の先端(滝口)に女性が寝そべっており、映像からこの滝がどれほど巨大か伝わってきます。
この滝は、世界三大瀑布の1つである「ヴィクトリアの滝」です。
幅2km、落差108m、最大で毎分5億リットルの水が流れ落ちる大瀑布であり、ジンバブエ共和国とザンビア共和国の国境に位置しています。
ヴィクトリアの滝の位置。 / Credit:地図データ ©2025 Google
そして動画の場所は、ヴィクトリアの滝の「Devil’s Pool 」です
これは滝の淵にある天然プールであり、水量の少ない時期には実際に人が入ることができます。
ヴィクトリアの滝 / Credit:Canva
周辺地域では雨季と乾季があるため、その関係で滝の水量は増減します。
増水期と渇水期では、水量に10倍もの違いがあるのです。
有名な滝は数多く存在しますが、これほど水量が極端に異なる滝は他にありません。
そして増水期には、高さ800mの水煙が立ち昇り、数十キロ離れた場所からもその水煙を確認できます。
そのため地元民族は、この滝を「雷鳴の轟く水煙」と言う意味の「モーシ・オワ・トゥーニャ(Mosi-oa-Tunya)」と呼びました。
雨季に水煙が吹き上がる様子(1972年) / Credit:Wikipedia Commons
また、1855年にはイギリスの探検家がこの滝を見て、当時のイギリス女王の名を冠して「ヴィクトリアの滝(ビクトリア・フォールズ,Victoria Falls)」と呼び始めました。
ヴィクトリアの滝は、ユネスコの世界遺産に登録されていますが、国によって公式名称が異なるため、2つの名「Victoria Falls」「Mosi-oa-Tunya」が併記されています。
ちなみに、世界三大瀑布の他の2つは、「イグアスの滝」と「ナイアガラの滝」です。
そして落差の世界一はエンジェルフォール(落差978m)であり、幅の世界一はイグアスの滝(幅4km)です。
ヴィクトリアの滝は、これら世界一の滝と比べると、確かに落差や幅の点で劣ります。
しかし、地理的特徴や特殊な形成の点からすると、「唯一無二の滝」だと言えます。
では、なぜそう言えるのでしょうか。
ヴィクトリアの滝の形成プロセスから解説します。
(広告の後にも続きます)
ジグザグに後退していく「ヴィクトリアの滝」とその形成
絶え間なく水が流れ落ちる「滝」は、どのように形成されるのでしょうか。
典型的な滝は、長年にわたって「流れる水」によって形成されます。
最初その場所には、緩やかな流れの河川が存在しています。
典型的な滝が形成されるプロセス / Credit:Canva,ナゾロジー編集
しかし時間が経つにつれ、地形や地層の違いによって、浸食に強い地層が残り、浸食に弱い地層が削られるようになります。
これにより、河川の一部で流れが急になる「遷急点(せんきゅうてん)」が形成され、棚が作られます。
さらに年月が経過すると、棚の端が徐々に削られ、遷急点が上流に移動します。
また、棚のすぐ下は水流によって深く削られていき、棚はより高さを増していきます。
結果として、私たちの知っている「高い棚から水が流れ落ちる」という滝の形が作られます。
この形成プロセスから分かる通り、地層の違いをきっかけとして滝ができるケースが多いので、地層の境界面や断層が生じた場所で滝ができやすいと考えられています。
では、ヴィクトリアの滝はどのようにして誕生したのでしょうか。
ヴィクトリアの滝。滝の後にはギザギザの渓谷が続く / Credit:Canva
ヴィクトリアの滝は、アフリカ南部を流れてインド洋に注ぐ河川「ザンベジ川」の途中にあり、その形成にはやはり川の浸食作用が関係しています。
しかし、通常の滝とは異なり、川底が特殊です。
約1億8000万年前の火山活動によって作られた玄武岩の台地は、その後の地殻変動の繰り返しで、横方向や斜め方向の大きな割れ目を複数形成しました。
そして、その割れ目に土や砂が入って積み重なることで、柔らかい堆積岩が作られます。
つまり、北から南に流れるザンベジ川の底は、「固い地層部分」と「亀裂型の柔らかい地層部分」が組み合わさった状態になっているのです。
亀裂型の柔らかい地層部分は、川の浸食作用の影響を受けやすいため、この亀裂の形にヴィクトリアの滝が形成されることとなりました。
ヴィクトリアの滝の形成プロセス。川が亀裂型の柔らかい地層部分を削り、滝を作る。年月と共に滝は後退し、ジグザグの渓谷を残す / Credit:Canva,ナゾロジー編集
そして、年月の流れと共に、滝は亀裂の形に沿ってジグザグに後退します。
その際、固い地層部分だけを残していくため、滝が後退した後には、ジグザグの深い渓谷が残されることになります。
これまでこの過程は繰り返されており、現在のヴィクトリアの滝は、20万年~30万年かけてジグザグに後退していったものだと分かります。
また残された渓谷の規模からすると、かつてのヴィクトリアの滝は、現在よりも大きかったことも分かります。
今後も、ヴィクトリアの滝は北に向かって後退していくはずです。
地殻変動の亀裂によってジグザグに後退していく巨大な滝、それが他の滝と一線を画す「ヴィクトリアの滝」なのです。
参考文献
Victoria Falls
https://sevennaturalwonders.org/world/victoria-falls/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部