2025年4月から日曜深夜枠での放送が決まったTVアニメ『ワンピース』は、これまでになかった展開に期待大です。しかし、それ以上にファンが期待/懸念していることがありました。



オリジナルの展開が多かった初期のアニメ『ONE PIECE』 (C)尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

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ファンが時間帯移動を不安視する理由とは

 TVアニメ『ONE PIECE(ワンピース)』は、2025年4月から初めて深夜枠へと放送時間帯が変更されます。これまでのアニメの歴史を振り返ることで、今後の展開について考察してみましょう。

『ONE PIECE』がTVアニメとして放送開始されたのは1999年10月20日のことです。最初はフジテレビ系列の水曜日19時の放送で、『Dr.スランプ アラレちゃん』や『ドラゴンボール』シリーズといった鳥山明先生原作のアニメが約18年間に渡って放送された人気枠でした。ここでの放送は2001年3月21日までとなります。

 2001年4月15日から日曜日19時半の放送枠に移りました。この時間帯は、19時からTVアニメ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が放送されていたこともあり、「週刊少年ジャンプ」の人気作品が続けて放送されていたことで話題になります。

 アニメ『こち亀』終了後、2005年1月9日からその19時開始枠へ移動することになりました。この枠では2006年9月24日まで放送されます。ちなみに、ここまでの放送時間枠はいずれも、次の時間はバラエティ番組が放送されていました。

 そして2024年1月現在続いている、日曜9時半からの放送となったのが2006年10月1日のことです。つまり『ONE PIECE』の放送時間枠でもっとも長いのが現在の枠ということでしょうか。もはやファンには馴染み深い枠といえるでしょう。

 もっとも、この放送枠は『ワンピース』にとって良いものだったとはいえません。なぜなら、それまでのゴールデンタイムで放送されていた時はフジテレビ系列のフルネットでしたが、日曜9時半になってからは一部の地域でしか放送されないローカルセールス枠だからです。

 ところが2025年4月6日より移動される日曜23時15分から23時45分の放送枠は、18年半ぶりとなるフジテレビ系列フルネットとなる予定だといいます。つまり『ONE PIECE』は全国的な放送枠に復帰したといえるでしょう。

 もっとも、この放送枠に懸念を抱くファンもいました。それは2024年からこれにかぶるアニメ枠があるからです。それがCBCテレビ制作で、TBS系列全国ネット枠の「アガルアニメ」で、その放送時間は23時半からの30分間です。

 録画機器や映像配信が普及した現在、裏番組があっても大した問題ではない……そう考える人も多いことでしょう。もっとも、そこには現代ならではの問題もありました。それがSNSです。

 SNSで自分の意見をつぶやきながらTVを視聴するというスタイルが普及した現在、やはり時間はかぶらない方がいいと考える人も少なからずいるでしょう。つまり『ONE PIECE』と視聴層がかぶる作品ほど、影響がある人が増えるといえるかもしれません。

 このアガルアニメ枠の4月からの番組は『戦隊大失格』の第2期と発表されていますが、この枠ではこれまでに『キン肉マン 完璧超人始祖編』の1期および2期が放送されてきました。このことから『キン肉マン』の3期があれば、『ONE PIECE』との激突は避けられないと予想する人もいます。

 古来よりTV局では、人気番組には類似作品をぶつけることが多くあります。それを令和の時代になっても見る可能性があるとは思いませんでした。しかも共に集英社の人気作品です。集英社が放送時間のかぶりを気にする可能性もあるでしょうが、過去の裏番組事情を見ていくと放送枠はTV局側に決定権があるので、避けることは無理かもしれません。

 仮に『ONE PIECE』VS『キン肉マン』の裏番組対決があった場合、どちらを生で観るかで作品への愛を試されることになるでしょう。ちなみに筆者は両方を録画して睡眠を優先する予定です。



おなじみ「ウタ」もアニオリキャラ。画像は「ウタの歌 ONE PIECE FILM RED」通常版ジャケット (C)尾田栄一郎/2022「ワンピース」製作委員会

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今後のTVアニメ『ワンピース』で予想されることとは

 TVアニメ『ONE PIECE』の放送時間変更については、ほかにも予想されることがあります。今後の制作方針のようなものです。

 これまで『ONE PIECE』は週刊連載と並行しTVアニメが制作されてきました。アニメの30分は原作マンガの3話分前後に相当し、そのため、原作に追いつくという問題は常について回ります。

 それゆえ原作ではなかったアニメオリジナルの展開、通称「アニオリ」が入ることは当たり前でした。数カットの時もあれば、1話丸ごとアニオリの話だったこともあります。そして、アニオリは昔からファンの評価を真っぷたつにすることもありました。

 これまでのTVアニメ『ONE PIECE』の歴史を振り返るとわかりますが、最初のころは大きなエピソードが終わった後、アニオリの短編シリーズが入るというパターンが多く見られました。それがいつしか少なくなって、「ワンピース時代劇」や「チョッパーマン」といった番外編が入るようになります。

 近年になってからは劇場版と連動したアニオリがありました。これは劇場版のサイドエピソード的なもので、前後のストーリーとはまったく接点のない形です。最近ではキャラクターが解説する総集編や、本編終了後のおまけコーナーで尺を稼ぐといった方法で原作との距離を一定に保っていました。

 現在、『ONE PIECE』は「SPECIAL EDITED VERSION」として「魚人島編」を再編集したものを半年予定で放送しています。そして、時間帯移動後は「エッグヘッド編」の続きから始まる予定です。

 実はこの編成から、TVアニメ『ONE PIECE』の今後を想像するファンが少なくありません。それは分割クール制の導入です。つまり、これからは原作マンガにアニオリを加えるのではなく、忠実に再現しようという方向になるだろう、というわけです。

 おそらく「エッグヘッド編」終了までTVアニメ化した後、一時的に制作を休眠状態にして、原作との距離を一定に保つという方法になるでしょう。その間、まったく別の作品をやるのではなく今回の「魚人島編」のように過去シリーズの編集版を放送するのではないでしょうか。

 これにはいくつかの利点があります。最大の利点は原作との距離を一定に保てることです。もうひとつは長期シリーズとなったがゆえ、過去のシリーズを忘れた人向けの救済策になることでしょうか。実は筆者の周りにも現在の「魚人島編」を観て、話がつながった、思い出した、といった意見がありました。

『ONE PIECE』は何年もかかっている伏線が多数あり、長期作品になったことで話がわからないという「ワンピース難民」が一定数いると聞いたことがあります。その救済と思えば、過去シリーズの総集編はもってこいといえるかもしれません。

 また、総集編を挟むという方法には一定の鮮度を保つという意味合いもあるでしょう。通常の分割クール制では放送期間のない時期にファンが離れることがあり、これを避けるためには何かを発信し続ける必要がありました。

 近年、分割クール制の人気作品のコラボが目立つのは、まさにこれが理由です。それがコラボ商品でなく一定期間のTV放送だと考えると、その効果はコラボの比ではないかもしれません。

 これはあくまでも筆者の想像です。しかし、これまで聞いた話から推測すると可能性は低くはありません。週刊連載中の作品を随時TVアニメ化して四半世紀以上経つ『ONE PIECE』は、今後もTVアニメの常識を刷新する作品になるのでしょうか。4月からの放送が待ち遠しいです。