球界のご意見番“エモやん”こと江本猛紀氏への年始インタビュー。前編では2024年を振り返ってもらったが、今回のテーマはメジャーを含めた今年の野球界について。ストーブリーグの話題を皮切りに変わりゆく野球と球界に対し、その師・故野村克也氏のごとくボヤキまくる。(全3回の2回目)
佐々木、上沢の移籍騒動にエモやんが私見
――今年も相次ぐメジャー挑戦。2024年、セリーグ最多勝(15勝)を獲得した巨人の菅野智之投手もオリオールズに単年約20億円で移籍が決まりました。単刀直入に、菅野投手はメジャーで活躍できそうですか?
江本孟紀(以下、同) 活躍っていうのはどの程度のことを言ってるの?
――1年間ローテーションを守って2ケタ勝利くらいでしょうか。
ありえないね。年齢的にも球威的にも。
――ずいぶんバッサリ……。
去年15勝といっても完投は3つしかないでしょ。5、6回投げてリリーフに助けられた勝ち星も多い。
まあ、最近はアメリカでも完投できるピッチャーは少ないけどね。投げすぎると肩肘が壊れるってすぐ言うけど、なるべく働かないで金を取ろうってアメリカの契約社会的な考えを正当化してるだけじゃないか。
――契約といえば、ロッテの佐々木朗希投手が23歳にして早くもポスティングシステム申請してメジャー挑戦を表明。しかしこれは、いわゆるメジャーの協定にある“25歳ルール”によって、古巣のロッテへの譲渡金が大幅に減少することから、一部ロッテファンを中心にネガティブな反応も起こっています。
ファンは単純に(佐々木がメジャーに)行ったらチームが弱くなるからね。これはあくまでも憶測だけど、入団するときにロッテと佐々木の間でそういう契約にしたんでしょ。だったらそれは守らないとしょうがない。
ただ、それで物議を醸すなら、新しくルールづくりをしなくちゃダメ。ポスティングできる基準の成績を設けるとか。
上沢(直之)の件(※1)だって、別に違法じゃない。それが問題視されるなら(メジャー移籍後)3年とか5年とか戻ってこれないようにすればいい。
(※1)2023年オフに日本ハムからポスティングシステムを利用して米球界入りも、わずか1年でFAに。その約1か月後にソフトバンクへの入団を発表した。国内FA権を取得せずとも1年で国内他球団に移籍したことから、プロ野球ファンからは“上沢式FA”と揶揄されている
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「もう俺がコミッショナーをやるしかない」
――「メジャー挑戦」という言葉に重みがなくなってますね。
今の制度はMLBにしかメリットがなくて、NPBがマイナー化しちゃってる。そんなことでいいの?って思うよ。
今はお客さんも入って儲かってるからいいけど、来年にヤクルトの村上(宗隆)、再来年に巨人の岡本(和真)とどんどんアメリカ行っちゃったら、名前も知らないやつばかりになる。そしたらお客さんが来なくなるんだから今のうちに手を打たなきゃいかん。
――江本さんならどのような対策を?
独立リーグの選手がNPBに支配下でドラフト指名されたら、契約金などの一部を移籍金として独立リーグに支払う必要がある。
ポスティングも譲渡金を球団だけでなくポスティング基金としてコミッショナーに入れて、それを少年野球なりお金のない野球界に分配する……というのが私のひとつの案。まあアメリカ側が嫌がる可能性があるけどね。
――さすが元政治家です。
こういうことを考えられる俺がコミッショナーをやるしかないよ(笑)。
―― 一方で野球のルールに関しては改革が続きます。変わりゆく野球について思うことは?
俺のまわりもみんな「時代だから……」って言っていて、そのとおりだしそれだけの話だね。
ただ、ルールの変更もそうだし、投球数とか選手へ過保護に扱いすぎて、成績のいい人が出てこなくなる。そうすると、選手全員の目標が低くなるよね。なのに給料だけは上がって、そのへんのギャップには違和感があるよ。