「最近の野球は数字にとらわれすぎている」
――江本さんの師匠とも言える野村克也さんが生きてたらなんと言うでしょうか?
野村はポピュリズムべっとりのオヤジだから、大衆迎合して大谷はすばらしいって言うと思うよ(笑)。
―― 一方、日本、とくにセリーグでは阪神の近本光司選手が19でトップ。これは盗塁がデータ上、ハイリスクローリターンという認識が広まっているからなんでしょうか?
それはデータが間違ってるんだよ。最近では野球をやったこともない、データを分析するスタッフがベンチに入ってる球団もあるでしょ。
データを否定してるわけじゃないよ。俺らのときも野村のデータ野球があったからね。でもコンピュータで野球するわけじゃないし、データは参考程度。最近の野球は数字ばっかり見すぎなんだよ。
――年末に『情熱大陸』に出演していたイチローさんも同じことを話していました。
そうでしょ? 同じまっすぐでも投手によって質が違うし、バットに当たる瞬間までボールなんて見てられないんだから。つまり、投手が投げて打者のところまでくる0.4秒のうち、0.1~0.2秒で判断しなくちゃいけないんだから、感性で打ってる部分がある。
投手だっていろいろなケースを想定するけど、いざ勝負が始まったら打者の雰囲気を感じるしかない。データじゃ説明できないミステリアスさがあるのが野球のすばらしいところでしょう。
でもそんなこと言ってると、すぐに老害とか言われる。お前らだって“若害”だろってね(笑)。
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“エモやん節”は健在。#2では、オフを騒がせた移籍など、2025年シーズンの展望を聞きます。#2へつづく
取材・文/武松佑季 撮影/村上庄吾