週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、松重豊主演のテレビドラマ「孤独のグルメ」の劇場版、HYの名曲「366日」をモチーフとしたラブストーリー、有名インフルエンサーの死を巡るサスペンス・スリラーの、バラエティ豊かな3本。
■集大成にふさわしい豪華な内容となった…『劇映画 孤独のグルメ』(公開中)
【写真を見る】井之頭五郎が究極のスープのレシピを求め世界各地を巡る旅へ(『劇映画 孤独のグルメ』) / [c]2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会
いまや中国や韓国でも配信されている「孤独のグルメ」。「おじさんがご飯を食べているだけなのに」と人気を最も訝しがっているのは当の松重豊本人だろう。舞台出身の演技派の彼の代表作がまさか半ドキュメンタリーのグルメドラマとなろうとは。とはいえ、放送開始から13年目でドラマはシリーズ11作となり、原作者より監督より誰より、「孤独のグルメ」そして主人公の井之頭五郎(ゴロー)について、詳しいのは松重豊本人といえる。『劇映画 孤独のグルメ』ではその松重が主演の他、監督と脚本にも挑戦。集大成にふさわしい豪華な内容となった。
初期から見ている人には懐かしい、元恋人がパリにいるゴロー。今回は冒頭、その娘役として杏が登場。杏のいるパリでも、さらには謎の島に漂着し、内田有紀ら女性たちに囲まれようとも、そして「梨泰院クラス」の敵役、ユ・ジェミョンを待たせようとも、今回もゴローは誰にも邪魔されず、気を使わずにものを食べるという幸福な孤高の行為を全うする。劇中では名作グルメ映画『タンポポ』(85)を彷彿させるカットも。40年前、松重と下北沢「珉亭」のバイト仲間だったザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトが主題歌を担当、力強い歌声を響かせる。(映画ライター・高山亜紀)
■崇高で美しい愛の物語…『366日』(公開中)
20年にも渡る男女の純愛を沖縄と東京を部隊に描く『366日』 / [c]2025映画「366日」製作委員会
沖縄を代表する人気バンドの1つであるHYが、2008年に発表した大ヒット曲から着想をえて紡がれた純愛ラブストーリー。叶わぬ想いを歌った失恋ソングをモチーフとする本作では、運命的に出会った男女の20数年に渡る濃密な愛の物語がオリジナルストーリーで描かれる。
沖縄。たった一人の肉親を亡くし、生きる希望を見失っていた高校3年生の湊(赤楚衛二)は、後輩の美海(上白石萌歌)の言葉に背中を押され、東京の大学に進学して再び「音楽を作る」という夢を追いかける決意をする。2年後、美海も湊の後を追って上京し、二人は365日では足らないほどの幸せな日々を過ごすのだが、そんなある日、予期せぬ事態が訪れる。思慮深くて優しい湊と天真爛漫で明るい美海。まるでお互いを自分のミッシング・ピースのように深く想いあう姿が清らかで尊い。赤楚、上白石そして美海を一途に愛し続ける幼馴染の琉晴を演じた中島裕翔らのアンサンブルも絶妙で、澄み渡った青空と紺碧の大海原が広がる沖縄の唯一無二の景色も本作を一段格上げさせている。楽曲「366日」のアンサーソングに彩られた崇高で美しい愛の物語に涙し、そして魅了されてほしい! (ライター・足立美由紀)
■現代社会を象徴するような人物たちの思惑が絡み合う…『#彼女が死んだ』(公開中)
ピョン・ヨハンとシン・ヘソンが3年ぶりの共演を果たした『#彼女が死んだ』 / [c] 2024 NGENE FILM ALL RIGHTS RESERVED
自分の周りの人々の行動を観察することに喜びを感じている男ジョンテ。不動産会社に勤務する彼の“趣味”は、顧客の住居に入り込んで得た“記念品”を収集するまでにエスカレートしていた。ある日、偶然、見かけたインフルエンサーの女性ソラに興味を持ち始めたジョンテは、彼女の家に入るチャンスを得る。動画配信やSNSの普及によって、「見せること」、「見ること」への関心が加速度的に高まっている現代社会を象徴するような人物たちの思惑が絡み合うサスペンス・スリラー。
殺人事件の犯人へと追い詰められていく主人公が「のぞき」や「ストーキング」をしている人物という皮肉な設定に、新人で脚本も手掛けたキム・セフィ監督の非凡な才能を感じさせる。『ハンサン ―龍の出現―』(22)のピョン・ヨハンと『勇敢な市民』(1月17日公開)のシン・ヘソンという旬の俳優たちの緊張感ある演技も見もの。(映画ライター・佐藤結)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼