2025年一発目の北米興収は『ライオン・キング:ムファサ』が逆転勝利!ディズニー作品が年末年始に底力を発揮

2025年の幕開けとなった先週末(1月3日から1月5日)の北米興収ランキング。上位10作品の合計興収は9882万ドル、全体の総興収は1億384万ドルと、昨年の幕開け(トップ10合計が7539万ドルで総興収は8591万ドル)は上回ったものの、従来の水準にはまだまだ届いておらず。感謝祭から年末にかけて“メガヒット級”の大作が複数あったにもかかわらず、なぜそうなっているのかといえば、答えは簡単。コロナ禍以降にひときわ顕著になってきた、ヒット作への一極集中(今回の場合は複数の作品あるとはいえ)がまだまだ色濃いからである。


年末から4本の大作映画が牽引してきた北米興行。2025年の幕開けから見える課題とは? / [c]Everett Collection/AFLO
参考までにちょうど10年前の2015年の年明け最初の週末を見てみれば、トップ10作品の合計興収は1億2585万ドルで、全体の総興収は1億5500万ドル。数字だけ見れば特別高いわけではないが、両者の差(つまりそれは11位以下の作品の合計興収となる)が3000万ドル弱ある。2019年以前は概ね2000万ドル前後の差があるのが常だったが、先述の通り2024年には1000万ドル強、そして2025年は500万ドルもない。

1位の作品の興収が2000万ドル強であることは2015年も2025年も共通している一方で、10位の作品の興収を比較してみると3分の1以下になっている。しかも2015年は18位までが興収100万ドル以上だったのに対して、2025年は11位までであり、そもそもの作品数もおよそ半減。ヒット作とそうではない作品の差が極端になり、結果的に劇場で観られる作品の選択肢が失われつつあるという大きな問題に加え、昨年頻繁にあったような閑散期がふとした拍子でまたやってくる可能性も極めて高いといえよう。


前作ほどのメガヒットは厳しくも、全世界興収はまもなく5億ドル突破! / [c]Everett Collection/AFLO
そういった意味で順風満帆なスタートとは言い難い2025年(さらにロサンゼルスの大規模な山火事も、少なからず今後の映画興行に大きな影響を与えることになるだろう)。上位10作品の顔ぶれは年末から変わっていないが、2週連続1位だった『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』(日本公開中)と同2位だった『ライオン・キング:ムファサ』(日本公開中)の順位がついに逆転。前週末には興収20万ドル差まで迫っていた『ムファサ』は、『ソニック』に200万ドル近い差をつけて勝利をもぎ取ることに成功した。

さらにトップ10で順位の変動が見られたのはもう1作品、前週の5位から4位にアップした『モアナと伝説の海2』(日本公開中)だ。ここまで『ウィキッド ふたりの魔女』(3月7日日本公開)と熾烈な接戦を繰り広げ、年末には2週続けてリードを許してきたが、前週比65.9%の興収を維持したことで逆転。しかも3位の『Nosferatu』との差もごく僅かだ。やはりファミリー層の集客が見込める年末年始とあって、ディズニーブランドの底力が発揮されたと考えることができる。


【写真を見る】ゴールデン・グローブ賞で3部門制覇!3時間半の大作『ブルータリスト』が限定公開ながら大健闘 / [c]Everett Collection/AFLO
先ごろ発表された第82回ゴールデン・グローブ賞で主要3部門を受賞した『ブルータリスト』(2月21日日本公開)は、まだ8館の限定公開(かつ3時間半の長尺)でありながらも前週比115.7%の興収で15位をキープ。意外なことに観客の大半が35歳以下という同作は、1館あたりのアベレージ興収3万ドルと高い数字を記録しており、次週には一部の劇場でIMAX上映、そして1月24日(金)からは拡大公開も控えている。賞レースが佳境へと突入するこのタイミングで、興行的にも存在感を示すことになるだろう。

文/久保田 和馬