大会直前の怪我でピッチに立てなかった大谷圭史。東福岡は優勝を果たせずも“あいつのために”戦い抜いた時間は一生の宝物だ【選手権】

[高校選手権・準決勝]前橋育英(群馬)3-1 東福岡(福岡)/1月11日/国立競技場

 県予選の3試合と本大会の準々決勝まで無失点。伝統のサイド攻撃だけでなく、手堅い守備で3年ぶりの選手権で躍進し、日本一に輝いた15年度以来の4強入りを果たした。東福岡にとって“復活”をアピールするには十分な戦いぶりだったのは確かだ。

 大坪聖央(3年)、山禄涼平(3年)のCBコンビを中心とするディフェンスは統率が取れており、球際の強さも持ち合わせる。6月のインターハイ予選・準決勝で敗退してから磨き直してきた守備の強度は、全国の舞台でも通用した。

 そんなチームで、どうしても触れておくべき選手がいる。今年の新チームの立ち上げ当初から主軸を担ってきたMF大谷圭史(3年)だ。

 4-1-4-1の布陣ではアンカー、4-4-2や4-2-3-1ではダブルボランチの一角に入る背番号6だが、その姿はピッチにない。国立の舞台だけではなく、今大会は一度も試合に出場できなかった。

 今から遡ること約3週間前。宮崎で実施した直前合宿中のトレーニングマッチで大谷に悪夢が襲う。芝に足を取られ、左膝の前十字靭帯を損傷。高校サッカー最後の晴れ舞台を目前にして、欠場が決まったのだ。

「最初は何も考えられなかった。遠征中ということもあって診察結果を出してもらうまで、時間がかかったのもあるけど、本当に悔しくて…」

 なんで俺が――という思いもあった。それでも心に折り合いをつけ、サポート役に回って仲間のために奔走。チームも勝利を重ね、「嬉しい気持ちがあった」(大谷)。しかし、本音を言えば、胸中は複雑。「出たかった」という気持ちも少なからず残っていた。
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 そうした大谷の思いは仲間たちも痛いほど理解している。だからこそ、「大谷とともに」を合言葉に、誰もが“あいつのために勝つ”と戦ってきた。

 キャプテンのDF柴田陽仁(3年)は言う。

「圭史の分まで俺らがやる。そこは毎日のようにみんなに対して言ってきた。やっぱり、あいつが一番悔しいと思うけど、いろんな感情を抑えながらチームのために、怪我をしてからも動いてくれた」

 だが、物語は準決勝で終わりを迎えた。前橋育英を相手に先手を取ったが、3失点で1-3の逆転負け。試合後、選手たちは大谷への思いを口にする。

 ギラヴァンツ北九州U-15時代から大谷と一緒にプレーしてきたMF神渡寿一(3年)は「最後、優勝で終わりたかった」と漏らし、「圭史もそう思っていてくれたはず。中学の3年間を経て、東福岡でも3年間一緒にやってきたので本当に悔しい」と唇を噛む。

 柴田も涙を浮かべながら、「圭史の分までもっともっとやらないといけなかったと思う。本当に今までありがとうという気持ちと同時に、今は本当に申し訳ない気持ちがある」と吐露した。

 それでも、ベスト4まで勝ち上がった事実は揺るがない。仲間とともに日本一を目ざして戦った時間は一生の宝物だ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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