佐藤流司が主演を務める舞台「私立探偵 濱マイク-遥かな時代の階段を-」が2月6日から上演される。本作は、映画監督・林海象による「私立探偵 濱マイク」シリーズを元にした作品で、2021年には「朗読劇『私立探偵 濱マイク』-我が人生最悪の時-」、2022年には舞台「私立探偵 濱マイク-我が人生最悪の時-」が上演された。舞台第2弾となる今回は、脚本・演出を西田大輔が担当し、濱マイク役を過去公演に続いて佐藤が務める。佐藤と濱マイクの相棒・星野役を引き続き演じる矢部昌暉に公演への意気込みなどを聞いた。
-朗読劇から数えると3回目の「濱マイク」シリーズです。まずは、本シリーズに対しての思いを聞かせてください。
矢部 濱マイクという男は、男性から見てもかっこいい男だと思います。そんなマイクを主人公にした作品を、西田さんが脚本・演出を担当して、主演を流司くんが務めるので間違いなくかっこいいと“相棒”として思っています。今回はどんな感じになるのか、とても楽しみです。
佐藤 「濱マイク」という作品は、ヒューマンドラマとしてすごくクオリティーが高いと思います。演じていても、台本を読んでいても、感動します。舞台では、お客さまのリアクションがダイレクトに伝わってきますが、初演のときのお客さまの感動がすごくて。なので、この続編にも全幅の信頼を置いています。
-映画版は1994年公開、ドラマ版は2002年に放送されています。時が経っても色あせないこの作品の魅力はどういったところにあると思いますか。
矢部 今は、技術なども進化した分、あれこれ取り繕うこともできますし、できることもすごく増えてきました。ですが、この物語で描かれているのは、まだまだ不便なことも多い中、必死に真っすぐに生きている人たちが生きている時代です。特に濱マイクは真っすぐな男で、その姿は現代ではあまり見ないものなのかなと思います。でも、僕はそんな濱マイクがすごく好きです。
佐藤 普遍的な面白さがある作品だと思いますが、それと同時に、(映画やドラマを)リアルタイムで見るのと、今、舞台を見ていただくのでは、魅力の感じ方は違っていると思います。令和の今だと、ファンタジーに近いのかなと。銃を持った人がいて、私立探偵がいるというのは、令和の人には身近な話ではないかと思いますが、だからこそ、楽しいのではないかなと思います。
-前作に続き、脚本・演出を西田さんが務めますが、西田さんの魅力はどんなところに感じていますか。
佐藤 偉そうな言い方になってしまいますが、とにかく照明が美しいところが好きです。今回も脚本も西田さんがなさるのですが、作り方の上手さも魅力だと思います。参考になりますね、非常に。
矢部 前回、演出していただいたときに、「かっこいいを追求しよう」とおっしゃっていたのを覚えています。「かっこいい」というのは、誰もが思うかっこよさではなくて、その役としてのかっこよさ。その西田さんの言葉で、星野としてのかっこよさはどこにあるんだろうとすごく考えました。
-どういう答えを導き出したんですか。
矢部 たとえ、みんながピンチになったときも、どんなときでもマイクを信じていること。それから、弱さを見せないところ。一見、お調子者でふざけているけれど、彼なりの熱い部分もあるということです。
-佐藤さんは、濱マイクのかっこよさについては、どう考えていましたか。
佐藤 男らしい男だなと。頼まれたことは断らず、友人や家族思いで、理想的な男だという気がします。
-今回、再び同じ役を演じるにあたって、ブラッシュアップしていきたい部分、より深めていきたい部分は?
矢部 先ほど話した「かっこよさ」はもっともっと追求していきたいと思います。役としての深みという点では、前回演じたからこそ、新たに感じることがあると思うので、それを見つけていけたらと思っています。
佐藤 「濱マイク」に限らずですが、毎回、前回よりうまくなれるようにと思っています。
-そのうまさというのはどんなところで?
佐藤 役によりますが、お芝居のクオリティーです。今回、どんな作品になるのか、まだ詳しいことが分からないので、これだとは言えないですが。
-では、濱マイクは私立探偵という仕事をしていることにちなんで、お二人がもし俳優の仕事をしていなかったら、どんなお仕事をしたいですか。
矢部 僕は保育士です。小さい頃から、動物と子どもが大好きだったんですよ。昔から保育士に興味がありました。
佐藤 俺は、昔の夢が弁護士だったので、弁護士をやりたいですね。
-弁護士ではなく、俳優の道に進んだのはどんな理由があったのですか。
佐藤 中学、高校くらいで、勉強に急に冷めたときがあって。それまでは勉強が好きだったんですが、「これ、俺の人生に必要なさそうだな」というジャンルのものが出始めたんですよ。例えば因数分解。「人生で使う機会あるかな」と考え始めたら、急に勉強に興味が失せてしまって。そこからですね、弁護士じゃなくてもいいと思い始めたのは。「あと何年もこの作業続けるの、無理かも」と。
-なるほど。弁護士になりたかったのは何かに憧れて?
佐藤 いや。弁護士でも警察官でもいいのですが、人の人生を変える仕事をしたかったんです。
-「人の人生を変える」という意味では、俳優もそうですね。
佐藤 そうですね。今、同じことができていると思います。
-改めて作品への意気込みと読者にメッセージをお願いします。
矢部 今(取材当時)はまだ、どんな作品になるのか分かりませんが、前回で得た感触から、今回はより面白くなるんだろうなと思います。僕自身は、この作品で地方公演に出演するのが初めてなので、たくさんの方に見ていただけるチャンスがあるのもうれしいですし、しっかり責任持って面白い作品を作れたらと思います。ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
佐藤 前回、劇場でご覧になってくださった方は、もちろんこの作品の面白さはご存じだと思います。まだこの作品をご覧になっていない方もいらっしゃると思いますが…私、この業界も長くなってまいりまして、うそがつけるようになってきてしまいましたが、この作品はうそではなく、心からお勧めできる作品の続編です。見に来ていただければ、私の言っている意味が分かっていただけるかなと思います。
(取材・文・写真/嶋田真己)
舞台「私立探偵 濱マイク-遥かな時代の階段を-」は、2月6日~11日に都内・サンシャイン劇場ほか、大阪、名古屋で上演。