大相撲初場所は1月12日に東京・両国国技館で初日を迎える。今場所は、横綱同時昇進に注目が集まるのは言うまでもない。琴桜(佐渡ケ嶽部屋)と豊昇龍(立浪部屋)の2人の大関にそのチャンスがある。

 キーマンは、ズバリ1人横綱の照ノ富士(伊勢ケ浜部屋)だ。6日の横綱審議委員会(横審)による稽古総見では初場所の出場を問うた記者に「誰が休むといった!」と凄んでみせた。

 両膝痛に加え、長年糖尿病に苦しむ照ノ富士は今も満身創痍の状態にあるが、本人は初場所出場に向けて意欲満々だ。令和4年9月場所からの直近14場所で11場所も休場。それでも横審から引退勧告などが出ない理由の一つに「出場皆勤した3場所で全て優勝している」(夕刊紙記者)ことがある。

 先場所で悲願の初優勝を果たした琴桜と準優勝の豊昇龍は「どちらが優勝しても、この2人の大関が先場所と同等の成績を残せば同時昇進の流れはできている」(古参の相撲記者)とのこと。稽古総見で照ノ富士は「3大関の2人が綱取りなので、上(横綱)に上がってくればいい」とエールを贈っていたが、当然立ちはだかるつもりでいる。

 場所前に関係者の間で話題になったことがある。照ノ富士が所属する伊勢ケ部屋は昨年末から公式YouTubeを始めており、元日には同部屋出身の4人の横綱が集結して新春座談会を配信した。これが相撲界のYouTubeでは破格の17万再生を叩き出したのだ。

 理由は現役の照ノ富士のほか、伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)、宮城野親方(元横綱白鵬)、元横綱日馬富士が揃ったこと。相撲記者が言う。

「驚きました。伊勢ケ浜さんは相撲関係者の間でも無口で有名です。しかも照ノ富士と宮城野親方(白鵬)は貴乃花親方が協会を退職するきっかけになった『鳥取事件』で対立していましたからね。その時に貴ノ岩に暴行を働いた日馬富士まで来日して撮影していたとは…」

 照ノ富士と宮城野親方は日本に帰化しているが、日馬富士を入れた3横綱の共通点はモンゴル出身という点だ。

「宮城野親方が最近、部屋の垣根を超えてモンゴル力士だけで話して込んでいる姿をよく見かけます。それも笑顔で」(同)

 琴桜と綱取りを争う豊昇龍も叔父が元横綱朝青龍というモンゴル人力士の出世株だ。初場所では再びモンゴル勢が息を吹き返すのか。照ノ富士の初場所出場は多くの化学反応を起こすことになる。

小田龍司

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