未だ根強い“スバルWRC待望論”。自由度高い新規則の導入で復帰に傾くことはあるのか? STIに聞く

 スバルがWRC(世界ラリー選手権)に帰ってくるかもしれない。ここ数年、そういった噂が浮かんでは消え、その度に大きな反響を集めてきた。“スバルWRC復帰待望論”は未だ根強いと言える。

 スバルの復帰を待望しているのはファンだけではなく、関係者サイドも同様である。特にトヨタの豊田章男会長は、自らが愛するラリーの最高峰であるWRCを盛り上げるためには参加メーカーの少ない現状(2025年はトヨタ、ヒョンデ、フォード/Mスポーツの3社)をなんとかしたいと考えており、スバルの復帰を期待するコメントを各所で残している。

 また自身もラリー畑出身であるFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長も以前、豊田会長とスバルのWRC復帰に関して次のような話をしたことを明かしていた。

「WRCにメーカーを引き込むためにはどうしたらいいかと彼(豊田会長)に尋ね、“情熱的な人”の話を聞いた。そして彼は『スバルだ』と言ったのだ」

「彼らはスバルの株式を所有していて、スバルの参戦プログラムのイニシアチブをサポートしようとしている。実現することを願っている。メーカーが増えるのは良いことだと思う」

 

 結局スバルは2008年以来となるワークス復帰を果たさぬまま現在に至るわけだが、2024年末にはWRCの将来に関する大きなニュースがあった。2027年から導入される新規則が、メーカーの新規参入を促すような自由度の高いものであることが発表されたのだ。

 発表では、SUVやハッチバック、サルーンやコンセプトカーなど、実に幅広いボディワークが共通のセーフティセルに適合させられるようになること、パワートレインは持続可能燃料を使用したエンジン、もしくはハイブリッドや完全電動など、多様な選択肢が設けられることなどが明らかになった。スバルが力を入れる水平対向エンジンの使用が可能かなど詳細については不明だが、参入障壁が低くなるのは確かだろう。

 こういったWRCの動向を、スバルは追っているのだろうか? 東京オートサロンの会場でSTI(スバルテクニカインターナショナル)に尋ねたところ、彼らは上記のような規則変更などの動向をフォローしていることを認めた。ただし、あくまでフラットな立場でのフォローに過ぎず、具体的に何かしらのアクションを起こす予定もないとのことだ。

 話を聞いていくと、ひとつネックとなりそうなのが費用対効果。当然、多くの人々の期待に応え、スバルが満を持してWECに復帰するという様は反響を呼ぶだろうし、その点でのプロモーション効果は見込めるかもしれない。しかしながら世界選手権のWRCともなると、かかる予算はスバルが現在参戦しているスーパーGT・GT300クラスの10倍はくだらないと考えられる。

 WRCは前述の発表の中で、新規則下で高騰しているコストを大幅に削減するとしており、開発の自由度も広がる方向だ。とはいえ一般車にフィードバックできる領域は、かつてスバルが参戦していたグループA時代のWRCと比べると限られているとも言われる。そんな中でWRCに新たに予算を注ぎ込み、相応のメリットを見出せるか……メーカーとしては慎重に判断せざるを得ないのだろう。