・パワフルな豚肉料理&不思議な味「バター茶」
次に提供されたのは豚肉のスパイス炒め。脂身の多い部位、赤身の多い部位などが混在していて様々な食感と味わいを楽しむことができる。万人受けする逸品だ。
次いで豚タンをシンプルに焼いたもの。見た目通りワイルドで野趣あふれる食べ味。辛めの唐辛子ペーストをつけて食べるとビールを飲む手が止まらない。
ボリューミーでややオイリーな食事の間に出してくれたのは「バター茶」。チベット文化圏で日常的に飲まれているお茶で、ネパール産の茶葉・ギュー・ミルク・塩で作る。
ミルクティーがしょっぱいというのは日本人的には違和感を抱いてしまうかもしれないが、チベット文化圏では欠かせない飲み物で、いざ口に含んでみるとお茶というよりもスープのような飲み口。
もちろん、お茶の香り、ギューやミルクの甘みも感じる。心が安心するドリンクといった印象だった。
バター茶を経て具が入っていない生地のみで作る花巻のような「Tモモ(※チベットモモだと思われる)」とマトンと野菜がたっぷり入ったスープがともに供される。このスープの名前を尋ねると「タルカリ」とのこと。つまり「おかず」だ。タルカリの適用範囲ってだいぶ広いようだ。
Tモモに添えられているのはキュウリやダイコンなどの漬物。浅漬けキムチのような味だった。
スープはマトン、ジャガイモ、ニンジン、インゲンなどなど具沢山。表面に浮いた油膜からも使用されているマトンの脂ののり具合がわかってもらえるのではないか。
スープをすするとマトンの香りとコクが口に広がり、肉を嚙みしめるとマトンのいい意味での臭みとうま味を感じる。味つけは塩ベースで優しい。
Tモモは太麺状にした生地を巻き上げて花巻のように成形して蒸し上げているようだ。
熱々のところをほどき、まずはそのまま口に含むと……ほのかな甘みを感じる。食感はしっかりコシがあってもっちりだ。
こいつをちぎってスープに投入してうどんやすいとんのようにして食べると美味しいに決まっている。お雑煮を彷彿とさせる見た目と味だ。今回提供された料理すべてが正月料理ではないようだが、いずれも食べると晴れやかな気分にさせてくれる。
筆者はここで腹パンになってしまい、Tモモ1つはテイクアウトすることにしたが、さらにダルバートで〆る鉄の胃袋を持つ方もいらっしゃった。
写真を撮らせてもらい、ダル(ひき割り豆)スープもありがたいことにおすそ分けいただく。ダルはニンニクが全面に出ていて、塩気は抑え目といった印象だった。
内容はしっかりと味がしみ込んでいることがうかがえる豚肉、キュウリとニンジンのスライス、青菜炒め、唐辛子とトマトのピクルス(アチャール)と、長粒種のみのライスはたっぷりで食べ応え十分だろう。
8人でこれだけの料理とお酒を堪能して1人4000円いかないぐらい(!?)。もちろん、メニューや仕入れによって価格は変動するだろうが、予約制だからこそリクエストもできる夢のようなチベット系ネパール料理店だった。ここに通い詰めれば、いまだ日本では知られていない当地のグルメや文化が体験できるはずだ。
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・今回訪問した店舗の情報
店名 マナンカフェ(Manang Cafe)
住所 東京都品川区中延5-11-17 福世ビル1F
営業時間 事前予約制(2名~)
執筆:ダルバート研究家・田中ケッチャム
Photo:RocketNews24