是枝裕和が“向田邦子の最高傑作”をリメイク 「女は阿修羅だよ」ラストの台詞に込められた“男女の悲哀”

ラストの台詞に込められた「男女の悲哀」

――現場の雰囲気はどんな感じでしたか? 

つねにセット脇に用意したテーブルにりえちゃんと尾野さんが笑って話していて、それにすずちゃんと蒼井さんが巻き込まれ、本番ですって呼んでもなかなか来ないっていう(笑)。

三女と四女だけのシーンだとスムーズなんですけど、長女と次女が絡むとなかなか本番にいけない。本番直前まで全然関係ない話で盛り上がって。もちろん本番が始まればすっと役に入りますけど。すごいにぎやかな現場でした。

――タイトルにもなっていて印象的なラストの「女は阿修羅だよ」という台詞に対して、どう思いますか?

男の身勝手な物言いだなと思いますね。それで、今回は鷹男がその台詞を言ったあと、姉妹に笑いながら「バカじゃないの?」って否定させましたけど。

男は都合よく女を菩薩と阿修羅に分けるじゃないですか。でも基本的に一人の中に両方ともいるんですよね。もちろん、四姉妹の中にも。

――ドラマでも男はオタオタしていて、場を取り繕うのに必死でした。

現実、そうじゃないですか。ただ、女性が4人いれば、4人のキャラクターってこうなるよねっていうパターンがいくつかあって、そこはちゃんと踏襲してる感じがしますね。

『海街』をやったとき、実際の四姉妹を取材したんですよ。そこで長女はどうなりやすいとか、三女だけは他の姉妹と服を共有できないとか、音楽や服の趣味が合わないのはおもしろいなと思いました。

「阿修羅」も長女が奔放ではないけど自由恋愛をして、次女がむしろ長女的なふるまいで“母”を継いでいくというのは、話としてあるなって感じで。向田さんも三姉妹で、取材をされたかどうかはわからないけど、すごくちゃんと書かれてるなって印象を改めて受けました。

――最後に、今回ドラマで全話監督をされるのは13年ぶりだったかと思いますが、最近のTVドラマについてはどう思われますか?

数が多すぎるなと思ってます。全部見られないんだもん。いまいくつあるんですか? 

これだけの数をこなす役者もスタッフもいないよね。相当、無理して作ってるんだと思います。

昔はTVの前に座って見るものは一つって決まってたけど、いまは裏番組を録画して後追いで何本でも見れちゃうから。そういう意味では作り手が大変な時代になっている。これだけの数を埋めなくちゃいけない、誰の要請で埋めなくちゃいけないのかわかんないけど、単価は安い、数は多いで、役者も大変だと思いますよ。本当に変えた方がいいと思う。

取材・文/高田秀之 撮影/石井文仁

〈作品詳細〉

Netflixシリーズ「阿修羅のごとく」
独占配信中

ある冬の日。竹沢家の四姉妹が久しぶりに集まった。生け花を教える長女・綱子、専業主婦の次女・巻子、図書館で司書として働く三女・滝子、そしてウエイトレスの四女・咲子。滝子の話では、母・ふじと暮らす老齢の父・恒太郎には愛人と子どもがいるという。信じられないとは思いつつ、母の耳には入れないことを誓い合う4人。しかしこの騒ぎをきっかけに、女性たちの日常に潜む、さまざまな葛藤や秘密が明るみに出る。

【キャスト】
宮沢りえ 尾野真千子 蒼井 優 広瀬すず

【スタッフ】
原作・脚本:向田邦子
監督・脚色・編集:是枝裕和
企画・プロデュース:八木康夫
プロデューサー:福間美由紀 北原栄治 田口聖
音楽:fox capture plan
制作プロダクション:分福
製作:Netflix