「正直諦めていた部分もあった」錦織圭、4時間超えとなった全豪オープン初戦で大逆転勝利!<SMASH>

 いよいよ2025年シーズン最初のテニス四大大会「全豪オープン」(1月12日~26日/オーストラリア・メルボルン/ハードコート)が開幕した。

 大会初日の現地12日には男子シングルス1回戦が行なわれ、度重なるケガからの完全復活を期す元世界ランク4位の錦織圭(現74位)が満を持して登場。予選勝者のチアゴ・モンテーロ(ブラジル/同106位)に4-6、6-7 (4)、7-5、6-2、6-3とフルセットに及ぶ大逆転勝利を収め、同大会6年ぶり9度目の初戦突破を果たした。

 昨年3月に左ヒザのケガから約8カ月ぶりのカムバックを遂げ、以前の強さを取り戻しつつある35歳の錦織。新シーズン初戦として年明けに出場した「香港オープン」(中国・香港/ハード/ATP250)では準優勝を飾り、およそ2年半ぶりにトップ100に返り咲いた。

 錦織が全豪に出場するのは21年以来実に4年ぶり。今大会にはプロテクトランキング(負傷離脱前の順位でエントリーできる救済措置)で参戦している。

 初戦の相手は22年10月にキャリアハイの世界61位をマークした30歳のモンテーロ。両者は19年7月のウインブルドンで1度だけ対戦しており、この時は錦織が6-4、7-6(3)、6-4で勝利していた。

 約5年半ぶり2度目の顔合わせとなった今回の対決、錦織はオープニングゲームと第3ゲームを共にラブゲームでキープし上々の立ち上がりを見せる。

 しかし第5ゲームではモンテーロの強打に手を焼き、自身のダブルフォールトとミスも絡んで先にブレークを献上してゲームカウント2-4とリードを許す。第9ゲームでは2本のブレーク及びセットポイントをセーブした錦織だったが、次のゲームではブレークバックできず、38分で第1セットを落とした。
  その後は苦しい状況の中でサービスキープを継続して相手に食らいついていく錦織。だが予選3試合を勝ち抜いてきたモンテーロの強力なサービスに苦戦し、リターンゲームでなかなかブレークチャンスを作れず。終盤の第12ゲームでは錦織がリターンから形を作って2本のセットポイントを取得したものの生かせず、第2セットはタイブレークに突入する。

 ここではモンテーロに立ち上がり2ポイントを連取されるも錦織がすぐさま追いつき、両者が点を取り合う緊迫の攻防が繰り広げられる。だが予選3試合を勝ちぬいてきたモンテーロを崩しきれず、4-4で迎えた9ポイント目では錦織が痛恨のスマッシュミス。そこから立て続けにポイントを奪われて第2セットを落とし、早くも窮地に追い込まれた。

 迎えた第3セット、14分以上に及んだ第1ゲームで7本ものブレークポイントを取りこぼし、フラストレーションがたまる展開が続く。サービスゲームではテンポよくポイントを重ねていく一方、リターンゲームでは反撃の糸口を見出せないままセット終盤へ突入する。

 それでも第10ゲームで2本のマッチポイントを凌ぐと、我慢のプレーを続けてきた錦織に再びチャンスがやってくる。第11ゲームで相手のセカンドサービスを確実に返球し、ラリー戦を制して2本のブレークポイントを取得。ようやくチャンスをものにしてセットカウント1-2とし、逆転勝利に望みをつないだ。
  徐々にリズムを狂わせていくモンテーロに対し、錦織は高い集中力を保ったまま持ち前の攻撃的なリターンで相手にプレッシャーをかけていく。

 第4セットは第4ゲームでモンテーロのボディサービスにうまく対応し、ストローク戦でミスを誘ってラブゲームでブレークに成功。途中左太ももの内転筋負傷によるメディカルタイムアウトを要求したモンテーロはフォア側への踏ん張りが効かず、錦織があっさりとセットオールに持ち込んだ。

 こうなると流れは錦織。モンテーロのミスが増えていく中、広角かつキレのあるストロークで相手を左右に揺さぶり、2本目のブレークポイントをものにして3-1とリードする。第6ゲームでは動きのキレが戻ってきたモンテーロにブレークポイントを与えるも、ここは巧みなサーブ&ボレーと粘りのディフェンスでピンチを切り抜け主導権を渡さない。

 ここから錦織が一気にラストスパート。第8ゲームを難なくキープすると、第9ゲームで攻撃のテンポを上げて2度目のブレークを果たし、4時間超えの激闘に終止符を打った。

 錦織は勝利後に応じたWOWOWのインタビューで次のように試合を振り返った。
 「今もまだ(勝った)実感はない。フィーリングが合っていない感じがあって、かなり負けを覚悟していたから、正直諦めていた部分もあった。マッチポイントを握られたゲームをキープできたことが大きかったかなと思う」

 まさに崖っぷちからの生還。だがその中でも新たな成長の兆しを見せた。この試合で錦織がマークしたサービスエースは21本。錦織のストローク力と驚異のスタミナはもちろんのこと、要所で短いポイントを取れたことも大逆転勝利につながったのかもしれない。

 苦しい試合を勝ち切った錦織は2回戦で第12シードのトミー・ポール(アメリカ/同11位)とクリストファー・オコネル(オーストラリア/同70位)による1回戦の勝者と対戦する。

 ロングマッチを戦い抜いた錦織の体力が心配されるが、次戦までは2日間の休みが設けられるのは非常に大きい。数々の苦難を乗り越えた日本の大エースのさらなる勝ち上がりを期待したいものだ。

文●中村光佑

【画像】錦織圭の「全豪オープン2025」激闘フォトギャラリ―

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