2024年に北米で公開された映画作品と、同じく放送・配信されたテレビドラマ作品を対象にした第82回ゴールデン・グローブ賞の授賞式が現地時間1月5日に開催された。現地時間3月2日(日)に授賞式が行われる第97回アカデミー賞にも直結する<映画部門>の受賞結果を紹介する前に、まずは歴史的快挙が生まれた<テレビ部門>の受賞結果から振り返っていこう。
■「SHOGUN 将軍」がゴールデン・グローブ賞でも快挙!
“テレビドラマ界のアカデミー賞”として知られるエミー賞で歴史的な受賞劇を見せた「SHOGUN 将軍」 / 『SHOGUN 将軍』 ディズニープラス「スター」で独占配信中Courtesy of FX Networks
戦国の日本を描いたジェームズ・クラベルの小説を、真田広之が製作・主演を務めて映像化したドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」(ディズニープラスにて独占配信中)。“テレビ界のアカデミー賞”ともいわれるプライムタイム・エミー賞で18部門制覇という大旋風を巻き起こした同作が、このゴールデン・グローブ賞でも快挙を成し遂げた。
作品賞(ドラマ部門)に加え、吉井虎永役の真田が主演男優賞(ドラマ部門)、鞠子役のアンナ・サワイが主演女優賞(ドラマ部門)、樫木薮重役の浅野忠信が助演男優賞(共通部門)にそれぞれノミネートされ、その4部門すべてを受賞。授賞式で登壇した真田は、関係者やキャスト・スタッフへの感謝を告げると「世界中の若い俳優やクリエイターたちに伝えたいです。自分らしくいてください。自分を信じて、決してあきらめないでください。頑張ってください。ありがとう」とエールを送った。
浅野忠信の謙虚なスピーチに拍手喝采! / [c]Everett Collection/AFLO
また、エミー賞では惜しくも受賞を逃した浅野は「皆さん、私のことを知らないかもしれませんが、私は日本の俳優です。私の名前は浅野忠信です。いま日本で撮影中なので、今夜すぐに東京に戻って明日から撮影をしなければなりません。大きなプレゼントをいただき、ありがとうございます!」と英語でスピーチ。マーベル作品などにも出演する浅野の謙虚な姿勢に、会場から大喝采が巻き起こる一幕も。
現地時間1月26日(日)に授賞式が予定されている第30回クリティクス・チョイス・アワードのテレビ部門(ドラマシリーズ)でも5部門6ノミネートを果たすなど、まだまだ賞レースを盛り上げそうな「SHOGUN 将軍」は、すでにシーズン2とシーズン3の製作も決定している。ふたたび真田率いる「SHOGUN 将軍」チームが喝采を浴びることに期待したい。
「一流シェフのファミリーレストラン」のジェレミー・アレン・ホワイトは3年連続受賞! / 『一流シェフのファミリーレストラン』ディズニープラス「スター」で独占配信中[c] 2025 FX Productions, LLC
「SHOGUN 将軍」と同じくFXが手掛けたコメディシリーズ「一流シェフのファミリーレストラン」で主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされたジェレミー・アレン・ホワイトは、3年連続の同賞受賞を達成。同一作品・同一俳優による主演部門の3年連続受賞は、「マッシュ」のアラン・アルダ、「スピン・シティ」のマイケル・J・フォックス、「セックス・アンド・ザ・シティ」のサラ・ジェシカ・パーカー以来、史上4人目の快挙となった。
■『エミリア・ペレス』『ブルータリスト』…オスカー有力作が順当に受賞!
ゾーイ・サルダナは助演女優賞を受賞。一気にオスカーの最有力候補に名乗り / [c]Everett Collection/AFLO
続いては<映画部門>の受賞結果を紹介していこう。最多受賞を果たしたのは、作品賞(ミュージカル・コメディ部門)をはじめ最多8部門10ノミネートとなっていたジャック・オディアール監督の『エミリア・ペレス』(3月28日公開)。作品賞と助演女優賞、非英語作品賞、そして主題歌賞の4部門に輝いた。
トランスジェンダー俳優として初のアカデミー賞主演女優賞候補が期待されるカルラ・ソフィア・ガスコンは、自身の受賞は叶わなかったものの、作品賞受賞に際し「光は常に闇に勝つ。私たちを牢屋に入れたり、殴ったりすることはできても、私たちの魂や抵抗する気持ち、アイデンティティを奪うことは決してできない」と力強くスピーチした。
【写真を見る】デミ・ムーア、34年ぶりのノミネートで悲願の初受賞!容姿の衰えから美と若さへ執着する元人気女優を怪演 / [c]Everett Collection/AFLO
そんなミュージカル・コメディ部門で、ガスコンや他の前哨戦で圧倒的な強さを見せる『ANORA アノーラ』(2月28日公開)のマイキー・マディソンを破って見事に受賞を果たしたのは、『サブスタンス』(5月16日公開)のデミ・ムーア。同作でムーアは、50歳を越えて容姿の衰えによる仕事の減少から、新しい再生医療に手を出してしまう元人気女優を演じている。
名作『ゴースト ニューヨークの幻』(90)以来34年ぶりのノミネートにして悲願の初受賞となったムーアは「いまは、ただただ衝撃を受けています。この仕事を45年以上続けてきましたが、愛友として賞をいただいたのはこれが初めてです。身が引き締まる思いですし、感謝の気持ちでいっぱいです」と、喜びをあらわにした。
『戦場のピアニスト』から22年、エイドリアン・ブロディがゴールデン・グローブ賞初受賞! / [c]Everett Collection/AFLO
一方、ドラマ部門の作品賞は、アカデミー賞で有力視されている『ブルータリスト』(2月21日公開)が受賞。同作はほかにもブラディ・コーベット監督の監督賞と、エイドリアン・ブロディの主演男優賞(ドラマ部門)も受賞しており3冠を達成。ブロディは自身がアカデミー賞主演男優賞に輝いた『戦場のピアニスト』(02)以来22年ぶりのゴールデン・グローブ賞候補であり、受賞は今回が初めてとなった。
ほかに共通部門では、『リアル・ペイン~心の旅~』(1月31日公開)のキーラン・カルキンが助演男優賞を受賞。脚本賞はエドワード・ベルガー監督の『教皇選挙』(3月20日公開)が受賞し、興行的に大成功を収めた作品に贈られるシネマティック・ボックスオフィス・アチーブメント賞は、北米だけで興収4億5000万ドルを超える大ヒットとなっている『ウィキッド ふたりの魔女』(3月7日公開)が受賞。
アニメーション映画賞ではラトビア映画『Flow』が大金星! / [c] Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five.
そして、ディズニー&ピクサーの『インサイド・ヘッド2』(24)やディズニーの『モアナと伝説の海2』(公開中)、ドリームワークスの『野生の島のロズ』(2月7日公開)、アードマンとNetflixがタッグを組んだ『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』(Netflixで独占配信中)と例年にも増して強力な顔ぶれがそろったアニメ映画賞では、ラトビア映画『Flow』(3月14日公開)が受賞を果たすサプライズも。
大洪水を生き延びたネコたちの冒険が描かれる『Flow』。ラトビア映画のゴールデン・グローブ賞アニメ映画賞受賞は今回が初めてのことで、これまで同賞を受賞した作品は過去18回のうち17作品がアカデミー賞の長編アニメーション映画賞にもノミネートされ、うち15作品が受賞に漕ぎ着けている。アカデミー賞国際長編映画賞のショートリストにも選出されている『Flow』の快進撃にも大いに注目が集まるところ。
第97回アカデミー賞のノミネート発表は現地時間1月19日(日)に予定されている / [c]2024 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
現地時間1月17日(金)に予定されていた第97回アカデミー賞のノミネート発表は、現在ロサンゼルスで発生している山火事の影響により、同1月19日(日)に延期されることが決定している。無事にアカデミー賞が開催されることを願いながら、それぞれの作品から届けられる明るい話題を待ちたい。
■第82回ゴールデン・グローブ賞テレビ部門受賞作品
<ドラマ部門>
●作品賞
「SHOGUN 将軍」
●主演男優賞
真田広之「SHOGUN 将軍」
●主演女優賞
アンナ・サワイ「SHOGUN 将軍」
<リミテッドシリーズ・アンソロジーシリーズ・テレビ映画>
●作品賞
「私のトナカイちゃん」
●主演男優賞
コリン・ファレル「THE PENGUIN-ザ・ペンギン-」
●主演女優賞
ジョディ・フォスター「トゥルー・ディテクティブ ナイト・カントリー」
<ミュージカル・コメディ部門>
●作品賞
「Hacks」
●主演男優賞
ジェレミー・アレン・ホワイト「一流シェフのファミリーレストラン」
●主演女優賞
ジーン・スマート「Hacks」
<共通部門>
●助演男優賞
浅野忠信「SHOGUN 将軍」
●助演女優賞
ジェシカ・ガニング「私のトナカイちゃん」
■第82回ゴールデン・グローブ賞映画部門受賞作品
<ドラマ部門>
●作品賞
『ブルータリスト』
●主演男優賞
エイドリアン・ブロディ『ブルータリスト』
●主演女優賞
フェルナンド・トーレス『I’m Still Here』
<ミュージカル・コメディ部門>
●作品賞
『エミリア・ペレス』
●主演男優賞
セバスチャン・スタン『A Different Man』
●主演女優賞
デミ・ムーア『サブスタンス』
<共通部門>
●助演男優賞
キーラン・カルキン『リアル・ペイン~心の旅~』
●助演女優賞
ゾーイ・サルダナ『エミリア・ペレス』
●監督賞
ブラディ・コーベット『ブルータリスト』
●脚本賞
『教皇選挙』
●作曲賞
『チャレンジャーズ』
●主題歌賞
「El Mal」『エミリア・ペレス』
●非英語作品賞
『エミリア・ペレス』(フランス)
●アニメーション作品賞
『Flow』
●シネマティック・ボックスオフィス・アチーブメント賞
『ウィキッド ふたりの魔女』
文/久保田 和馬