『鉄腕アトム』が爆誕した昭和の時代には、数々の名作アニメ誕生の裏で、多くの珍事件が発生していました。アニメが市民権を獲得し、「クールジャパン」が国策のひとつとなった今では、とても信じられないような昭和のアニメ事件簿を振り返ります。



画像は『鎧伝サムライトルーパー』DVD第1巻(アニプレックス) (C)サンライズ

【画像】え…っ?可愛いけど コチラが『サムライトルーパー』たちが「アライグマ」になったまさかの姿です(3枚)

翌日の新聞にも掲載された前代未聞の「二重放映事件」

 日本初の国産TVアニメシリーズといわれる『鉄腕アトム』が生まれてから、これまでアニメ界隈ではさまざまな珍事件が起こりました。特に今ほどアニメ文化が浸透していなかった昭和の時代には、信じられないようなトラブルが数多くあったように思えます。

 例えば『鎧伝サムライトルーパー』の二重放映事件をご存知でしょうか。同作は「鎧擬亜(よろいギア)」というバトルスーツを身にまとった少年たちの戦いを描いた物語で、事件は1988年9月3日に起こりました。

 この日は、一部地域のテレビ朝日系列局にて第18話「恐怖の妖邪帝王」が放送される予定でしたが、スタッフの人為的ミスにより先週放送された第17話「明かされた鎧伝説」が再度放映されてしまったのです。放送直後には苦情や問い合わせの電話が殺到し、このことは翌日の新聞でも取り上げられたといいます。

 ちなみに翌週の放送では、冒頭で「先週の『鎧伝サムライトルーパー』で放送済みの作品を、まちがって放送してしまいました。本当にごめんなさい。これからも、どうか、応援してください」とテロップが表示された後、改めて第18話が放送されました。昭和に起きた前代未聞の珍事件に、多くの人が驚いたことは言うまでもありません。

 一方でアニメ『戦闘メカ ザブングル』では、公式も思わずネタにしてしまうような珍事件が発生しました。渦中にあったのは、アニメ第27話「うたえ! 戦士の歌を」です。

 同エピソードは、美しき女パイロット「トロン・ミラン」の初登場回でしたが、高校野球の中継が延長した影響で、関西地区では放送されませんでした。当然ながらこの頃は配信サイトで視聴するという手段もなかったため、関西の視聴者は予告映像のなかでしか彼女の姿を見られなかったようです。

 こうした一連の出来事は公式でもネタにされており、1983年に劇場公開された総集編映画『ザブングルグラフィティ』では、トロン・ミランが登場した際に「幻のトロン・ミラン(関西地区で…)」というテロップが表示されました。

 現在のTVアニメでも「作画崩壊」はたまに起こりますが、『超時空要塞マクロス』の作画崩壊はまるで次元が違います。なかでも有名なのが、第11話「ファースト・コンタクト」です。

 ありがちな作画崩壊の例として、アニメーションにおける原画と原画の間の絵、いわゆる「中割り」の線が崩れているというものがあります。しかし、この回では「中割り」がほとんど存在せず、まるでパラパラマンガのように登場人物やキャラクターがカクカクと動いていました。原画の線自体は綺麗なことが、逆に違和感を増大させていた印象です。

 一体どうしてそうなってしまったのか、その裏には過酷な労働環境と切迫した制作スケジュールなど、同情を禁じ得ない事情が絡んでいます。結果的に第11話は「紙芝居」のような仕上がりとなってしまいましたが、当時のアニメスタッフたちがギリギリのところで踏ん張ってくれたおかげで、今や『マクロス』は40年以上続く人気シリーズとなりました。

※本文の一部を修正しました。(2025.1.13 19:25)