ePaper技術の進化と実用化
静止画表示において、ePaper技術の進化も注目されている。電気泳動技術を用いたePaperは、画面更新時のみ電力を消費するため、省エネルギー性能に優れる。電子書籍リーダーのみならず、最近ではスーパーの電子値札などにも採用され、用途が広がっている。また、ePaperでフルカラー表現が実現し、昨年にはカラーePaperを搭載したKindle Colorsoftが発売されるなど、カラーePaperの普及が期待されている。
PocketBook InkPoster
CES2025で発表されたPocketBookの「InkPoster」は、E Ink社の最新技術「E Ink Spectra 6」とシャープのIGZO技術で狭額化することで、一見普通の額縁にしか見えないデザインを実現している。Wi-FiやBluetooth経由で画像を簡単に切り替えられ、1回の充電で1年間利用できる省エネルギー設計が特徴だ。
ePaperは動画表示には適していないものの、静止画を活用したデジタルアートやポスター用途には非常に実用的である。印刷コストや廃棄物削減にも貢献する可能性があり、環境負荷の低減にもつながる。
(広告の後にも続きます)
デジタルキャンバスの可能性
ディスプレイ技術の進化がもたらす「デジタルキャンバス」という新たな用途は、インテリアとアートの融合をより自然に、日常的に実現するものだ。SamsungやHisenseのように、美術館の名画を家庭に取り入れるだけでなく、NFTやジェネラティブアートなど、デジタルならではの表現とディスプレイの親和性は高い。
これまでにも、インタラクティブ/ジェネラティブオンスクリーンアート作品をキュレーションして配信しようとした「FRAMED」や、任意の映像やデジタル作品を額装することができる「Infinite Objects」など、様々なデジタルキャンバスサービスが提案されてきたが、いよいよディスプレイ技術の成熟により、今こそ取り組むべきホットな領域になりつつあるのではないだろうか。
ディスプレイが単なる映像再生機器から、インテリアの一部やアート作品のキャンバスへと進化する中で、家電メーカー、アーティスト、消費者がそれぞれの立場から新たな価値を創造していく未来が見えはじめている。これは、アーティストにとって表現の場を広げ、消費者にとっては日常にアートを自然に取り入れる手段となり、家電メーカーはライフスタイルとアートをつなぐ存在へと変革することを意味する。
ディスプレイ技術のさらなる進化と、それがもたらす新たなライフスタイルの可能性に、今後も注目したい。