画像はAIで生成したイメージ
有名男性タレントの性加害事件をきっかけに主にネット上で取り沙汰されるようになった「守秘義務」。「プライバシーの尊重」という観点から、どの業種にも義務付けられているものだが、これに違反しただけでなく、金儲けに悪用していた人物がいる。
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それが埼玉県内のラブホテルで働いていた久田喜子(仮名・42歳)だ。
当該ホテルのオーナーが証言する。
「ラブホテルと言えば、コンピューターシステムで客とは顔を合わせないようになっていますが、駐車場やロビー、エレベーター、廊下などには複数の防犯カメラがついています。これにより、車のナンバーやお客様の顔を把握できるようになっているのですが、フロント係だった喜子は、これらの映像から知り合いを見つけると、浮気や売春(買春)の証拠として突きつけ、相手を強請っていたんです」
事件が発覚した経緯は、Aさんという被害者がオーナー宛てに喜子の行動をタレこんだことからだったという。
「お客様のAさんは車種と車のナンバーで身バレしたそうです。偶然にも喜子の近所の方だったみたいですね。同行者が奥様でないことを知った喜子から『浮気の証拠写真があるんですけど…』と脅されたそうです。自営業のAさんは口止め料として喜子に50万円払ったと言っていました」
喜子の自宅は隣町だが、立地やコストパフォーマンスが良いことから、喜子の地元からの利用者は多いらしい。
「お客様の立場からすれば、まさか知り合いが働いているとは思わないでしょうし、従業員を確認することはできませんので運が悪かったとしか言いようがないんですけどね。ただ、うちの従業員がお客様を脅迫していると知った時はびっくりしました。お客様が利用した日時や内容などを照合した結果、確かに喜子の仕業だと判明したので呼び出して問い詰めたのです」
喜子はこの際、悪びれた様子もなく脅迫を認め謝罪。ただ、事情を聴くと他の利用者にも強請りを行っていたことが判明したという。
未成年者を同行した映像も…
その不運な2人目のユーザーがB子さんだった。
「B子さんは喜子が昔働いていた工場のパート仲間だったそうです。Aさんの逆パターンで、ご主人以外の男性と来たのを見つかってしまったんです。フロントのタッチパネルで部屋を選んでいた姿がばっちりカメラに映っていたのもありますが、B子さんの持っていたハンドバッグと付けていた特徴のあるキーホルダーが動かぬ証拠となって言い逃れができなかったみたいですね。口止め料として30万円払ったそうです」
また、3人目の被害者であるCさんは「パパ活」現場を見つかっていた。
「Cさんは喜子のママ友のダンナさんですが、喜子がそうした存在だとは知らなかったみたいです。お連れさまが親子ほどトシの離れた若い女性だったこともそうですが、ロビーでのやりとりから、女性が未成年であることがうかがえたんですよね。これはヘタしたら犯罪ですので、ただの浮気現場を押さえられるよりもヤバイじゃないですか? 当然、喜子はそこに付け込んだみたいで100万円を要求していた。Cさんはサラ金で金を工面したと喜子は言っていましたよ」
喜子が白状したのは以上の3名だが、他にも犠牲者がいた可能性は十分に考えられる。
「喜子のやったことは犯罪だし、業務妨害なのでこちらも被害者ですが、ヘタに警察沙汰にしたらホテルの信用もなくなるし、お客様にも余計に迷惑がかかるじゃないですか? それを喜子も分かっていたんでしょうね。謝罪はしたものの、悪びれた様子はまるでなかったのはそのためだったと思います」
当然喜子はその場で解雇されたが、「もしかしたら別のホテルで同じことを繰り返すかも知れない」と考えたオーナーは、近隣の同業者にこの騒動のてん末を情報提供したという。
喜子のやったことは、プライバシーを尊重するラブホ業界にとって由々しき問題だったのは間違いない。
取材・文/清水芽々
清水芽々(しみず・めめ)
1965年生まれ。埼玉県出身。埼玉大学卒。17歳の時に「女子高生ライター」として執筆活動を始める。現在は「ノンフィクションライター」として、主に男女関係や家族間のトラブル、女性が抱える闇、高齢者問題などと向き合っている。『壮絶ルポ 狙われるシングルマザー』(週刊文春に掲載)など、多くのメディアに寄稿。著書に『有名進学塾もない片田舎で子どもを東大生に育てた母親のシンプルな日常』など。一男三女の母。