「カッコ悪いけど悔しくてたまらなかった」強烈に意識し合う青野未来と桜井麻衣。マリーゴールドの歴史を紡ぐライバル関係から目が離せない

 昨年5月に旗揚げした女子プロレス新団体・マリーゴールドの2025年は、1.3大田区総合体育館でのビッグマッチからスタートした。

【マリーゴールド PHOTO】青野未来 vs 石川奈青の戦いをプレーバック!
 タイトルマッチが5試合組まれ、4試合で王座が移動する波乱の大会。とりわけ内容が充実していたのは“純白のベルト”と呼ばれるユナイテッド・ナショナル(UN)王座をかけたタイトルマッチだ。初代チャンピオン・青野未来に挑んだのは“狂乱の貴婦人”桜井麻衣。
  どちらにとっても、避けて通れない闘いだった。青野と桜井がデビューしたのは“女優によるプロレス”アクトレスガールズ。桜井のデビュー戦の相手が青野だった。

 団体が路線変更、プロレスの技とフォーマットを使ったエンターテインメントという方向性に舵を切ろうとする中で、桜井は退団。スターダムで腕を磨く。そしてさらなる成長のためマリーゴールドへ。

 一方の青野はアクトレスガールズに残ることを選んだ。団体が新しいことに取り組むなら、自分もその力になりたかった。これまでのものとは別に新設されたチャンピオンベルトも巻いた。しかしベルトを失うと自分が何をやるべきか見失ってしまう。もうやめるしかないのか。精神的に追い込まれていた時にマリーゴールド旗揚げが重なった。

 青野がプロレス界、プロレスファンから離れてアクトレスガールズで活動している間、どうしても目に入ったのが「プロレスがやりたい」と団体から離れた選手たちだった。桜井をはじめスターダムで知名度を上げた選手も多い。仲間だった者たちの活躍は嬉しかったが、当然ながら悔しさもあった。

「中でも一番、悔しかったのが桜井でした。デビュー戦の相手をしたからなのか、仲がよかったからなのか。カッコ悪いけど、悔しくてたまらなかった」

 桜井もまた、青野を強烈に意識していた。スターダムでプロレスに打ち込んできた自負もある。マリーゴールド旗揚げ会見に青野たちアクトレスガールズ離脱組が合流してきた時には「今やれば勝つと思います」と言っていた。

 だが、マリーゴールドで先に結果を出したのは青野だった。旗揚げ戦でインパクトを残すと7月の両国国技館大会で初代UN王者に。その後も順調に防衛を重ねた。

 アクトレスガールズでため込んだ悔しさを晴らすような活躍ぶり。多くのプロレスファン、プロレスマスコミの前で試合をするのは久しぶりだったから、新鮮さもあった。それが桜井には納得がいかない。

「どうしてプロレス団体と謳わなくなったところにいた人たちに先を越されてしまうのか。プロレスの試合で経験を積んできたのは私のほうなのに」
  悔しさと、その裏にあるプライドをかけたタイトルマッチ。目立ったのは青野の重厚な攻撃だった。蹴りを軸にパワフルな技をたたみかける。必殺技スタイルズ・クラッシュは雪崩式でも決めた。
  そして青野の攻めが厳しければ厳しいほど、桜井の“受け”も際立つ。粘りに粘る挑戦者に桜井コールが何度も起きた。それが「何よりも悔しかった」と青野は言う。

 ただこれは、単純に試合内容で桜井が支持されたということでもないだろう。桜井が耐える姿に、観客は声援を送った。見方を変えればチャンピオンが強かったということ。存分に実力を見せつけて、その上で青野は敗れた。フィニッシュは桜井がマリーゴールド入団後に蝶野正洋から直接指導されたSTFだ。

 桜井はマリーゴールド旗揚げ戦で納得のいく試合ができず、常に悩み続けてきた。いつの間にか後輩が増え、教えたり引っ張ったりすることへの戸惑いがあったし、青野の活躍に悔しさも味わった。しかしそれが飛躍の原動力にもなっている。

 MIRAIとタッグ王座を獲得、WWEと契約しアメリカに渡るジュリアの壮行試合では激しい試合ぶりで観客を驚かせた。シングルリーグ戦では決勝進出。団体の看板タイトルの一つを手にしても、もはや違和感を抱く者はいない。

 桜井と青野は立場を入れ替えて、またストーリーが展開することになる。青野曰く「どん底」。ならば這い上がる姿を見せるだけだ。

 アクトレスガールズでの青野は、先輩たちが一気に退団した中で力をつけた。何度も苦しみ、泣いて新体制のエースになったのだ。その苦闘の歴史があって、青野未来はマリーゴールドという新天地で輝いた。

 ベルトを失い、どん底から這い上がる姿をマリーゴールドのファンに見せることで、青野の魅力はさらに増すはずだ。ジュリアからの激励メールを受けて戴冠した桜井が、どのようなチャンピオンになっていくのかも興味深い。そうして、マリーゴールドという新しい団体は歴史を紡いでいく。2人のライバル関係も続く。桜井と青野が次に対戦する時は、これまでとはまた違う関係性、違う見え方の試合になるはずだ。

取材・文●橋本宗洋
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