1月10日から1月12日までの全国映画動員ランキングが発表。異例の年末ギリギリ公開でありながら、好成績で前週2位に初登場を果たした木村拓哉主演の『グランメゾン・パリ』(公開中)が、公開2週目にして首位に浮上。4週連続で首位を守り続けていた『はたらく細胞』(公開中)の牙城をついに崩した。
■『グランメゾン・パリ』が公開15日間で動員158万人を突破!
興収30億円超えが見えてきた『グランメゾン・パリ』 / [c]2024映画『グランメゾン・パリ』製作委員会
年末年始の7日間で観客動員100万人に迫るヒットスタートを飾った『グランメゾン・パリ』。公開2週目の週末3日間の成績は、動員が25万9000人で興行収入が3億8800万円と、前週比はどちらも63%ほどの成績をキープ。「成人の日」の祝日となった1月13日までの公開15日間の累計成績では動員158万人を突破、興収は23億円に迫っている。
同作でメガホンをとったのは、2019年放送のドラマ版でも演出を務めた塚原あゆ子監督。昨年夏に大ヒットを記録した『ラストマイル』(24)と、その前に手掛けた『わたしの幸せな結婚』(23)に続き、これで3作続けて動員ランキングの首位を獲得したことになる。おそらく日本の女性監督で同首位獲得作品を3本手掛けたのは、「映画ドラえもん」シリーズの寺本幸代監督と「名探偵コナン」シリーズの永岡智佳監督に続き、実写作品の監督としては初めてではないだろうか。
ドラマ版&スペシャル版につづいて塚原あゆ子監督がメガホンをとった / [c]2024映画『グランメゾン・パリ』製作委員会
『ラストマイル』では脚本家の野木亜紀子と新井順子プロデューサーとのチームで、「アンナチュラル」と「MIU404」と同一の世界線で新たなストーリーを紡ぐ“シェアード・ユニバース”という方法論に挑み、日本の実写オリジナル映画とテレビドラマの劇場版という2つの側面に新たな活路を切り拓いた塚原監督。今回の『グランメゾン・パリ』では一転して、“海外が舞台”という、これまでも複数のテレビドラマの劇場版で試されてきたオーソドックスな拡張を実行している。
そういった点では、近年の日本映画で成功しやすいジャンルの流れを危なげなく汲んでいるようにも見えるが、本作のヒットの決め手となっているのはそれだけではないだろう。物語の要ともいえる料理の描写は、ドラマ版に引き続きプロの料理人からも好評を得るほど魅力的に演出されており、もちろん基礎となるレストランを舞台にした人間模様などの描き込みも的確。ただ規模感を大きくしただけではない“劇場版をやる意味”と“海外に行く意味”が作品に説得力を生む。そうした塚原演出の巧さが、このヒットを後押ししていると考えることができよう。
パリで三つ星を獲得するために、チーム・グランメゾンが奮闘! / [c]2024映画『グランメゾン・パリ』製作委員会
先述の『ラストマイル』が8月公開で、10月から「海に眠るダイヤモンド」があり、12月に「グランメゾン東京」のスペシャルドラマを経て『グランメゾン・パリ』と、監督・演出作が怒涛のように続いている塚原監督だが、もう来月には坂本裕二脚本の『ファーストキス 1ST KISS』(2月7日公開)が控えているのだから驚きだ。5本目の長編映画監督作で、原作も土台となる世界線もない完全なオリジナル作品は次が初めて。その演出の才がフルに発揮されることはもちろん、監督作4作連続の首位獲得も期待できるのでは。
■『劇映画 孤独のグルメ』『366日』が初登場!
当初の見立てを上回る大ヒット!『はたらく細胞』が興収50億突破目前 / [c]清水茜/講談社 [c]原田重光・初嘉屋一生・清水茜/講談社 [c]2024 映画「はたらく細胞」製作委員会[c] 2024 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.IMAX[r] is a registered trademark of IMAX Corporation.
公開5週目にして2位に後退した『はたらく細胞』だが、週末3日間の成績は動員24万3000人&興収3億3700万円と、1位の『グランメゾン・パリ』との差はわずか。累計成績では動員365万人&興収49億円を突破しており、ワーナー・ブラザース映画配給の日本映画としては『東京リベンジャーズ』(21)の興収45億円を抜き去り、『デスノート the Last name』(06)の同52億円、『るろうに剣心 京都大火編』(14)の同52億5000万円をすでに射程圏内に収めている。
3位に初登場を果たしたのは、2012年にテレビ東京系列で放送がスタートし、これまで10シーズンと複数のスペシャル版が放送されてきたドラマシリーズ「孤独のグルメ」を、主演の松重豊が自ら脚本・監督を務めて映画化した『劇映画 孤独のグルメ』(公開中)。初日から3日間で動員16万7000人、興収2億4200万円を記録し、祝日を含めた4日間では動員23万人&興収3億2900万円を突破。
【写真を見る】松重豊が自ら監督と脚本を担当!『劇映画 孤独のグルメ』の気になる初動成績は? / [c]2025「劇映画 孤独のグルメ」製作委員会
比較対象として近年の深夜ドラマの劇場版の成功例を挙げてみると、最終興収14億1000万円を記録した『『劇場版「きのう何食べた?」』(21)が祝日の木曜日公開で、最初の土日2日間の成績が動員10万人&興収1億4500万円。集計方法の違いから正確な比較はできないものの、1日の平均動員が5万人と仮定すれば今回の『劇映画 孤独のグルメ』の方が上回っていることがわかる。シリーズの人気の高さを表す好スタートといえるのではないだろうか。
公開6週目を迎えた『モアナと伝説の海2』(公開中)は4位となり、累計成績は動員348万人&興収46億円を突破。『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』(公開中)は前週よりワンランクアップの5位となり、累計動員92万人&興収13億円に到達。そして、赤楚衛二と上白石萌歌が共演した『366日』(公開中)は6位に初登場を果たしている。
HYの名曲をモチーフにした『366日』は6位スタートに / [c]2025映画「366日」製作委員会
以下は、1~10位までのランキング(1月10日〜1月12日)
1位『グランメゾン・パリ』
2位『はたらく細胞』
3位『劇映画 孤独のグルメ』
4位『モアナと伝説の海2』
5位『劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師』
6位『366日』
7位『ライオン・キング:ムファサ』
8位『劇場版ドクターX』
9位『ビーキーパー』
10位『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメン VS 悪魔軍団~』
今週末は、直木賞受賞の同名時代小説を大泉洋主演で映画化した『室町無頼』(1月17日公開)、「あゝ、荒野」の岸善幸監督と菅田将暉が再タッグを組み、宮藤官九郎が脚本を務めた『サンセット・サンライズ』(1月17日公開)、カラーとサンライズがタッグを組んだガンダムシリーズ最新作のテレビ放送に先駆け、一部話数を劇場用に再構築した『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』(1月17日公開)などが控えている。
文/久保田 和馬