1999年に上演されて大ヒットした舞台『FOLKER』(主催:大阪府・大阪市・大阪文化芸術事業実行委員会)が、2月14日(金)から大阪・堂島リバーフォーラムで上演されます。「大阪国際文化芸術プロジェクト」として再演されることになったこの作品の稽古が、1月9日(木)に公開されました。熱の入った稽古の模様と、吉本新喜劇の内場勝則ら出演者の本番に向けた意気込みをレポートします。
出典: FANY マガジン
女囚刑務所での“フォークダンス群像劇”
『FOLKER』は、大阪の劇団「遊気舎」が1999年に上演した舞台。劇作家の後藤ひろひとが作・演出を手がけたもので、女囚刑務所のレクリエーション・プログラムとして取り入れられたフォークダンスで、コンテストに出場することになった受刑者たちの奮闘を描いた群像劇です。
この日、公開されたのは、受刑者たちがフォークダンスの練習をするワンシーン。和気あいあいとコミカルなやりとりを繰り広げる受刑者たちのなかで1人、主人公の“空那”(紅ゆずる)だけが心を閉ざしています。ダンスの練習にも参加せず、穏やかな空気を壊そうとさえする一幕です。後藤が「ここまで」と声をかけると、主演の紅は涙をぬぐうような仕草を見せたのち、スタッフや内場らと台本を見ながら話し合っていました。
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公開舞台稽古後の取材会には後藤、紅、内場のほか、遠藤久美子、大路恵美、楠見薫、小島聖、東風万智子が参加しました。
大阪国際文化芸術プロジェクトにこの作品を選んだ理由について、後藤は「ほんの3、4年前までこういう(稽古場のような)閉ざされた部屋の中で手を繋いで笑って踊っていたら怒られていた」とコロナ禍当時の演劇界を振り返りながら、「その時代が終わったのであれば、やるべき舞台はこれしかないと思った」と語ります。
そして25年ぶりの再演について、こう説明します。
「遊気舎という劇団は個性的な劇団員が多かったので、(役に)当てて書かなければいけなかった部分もあったけど、今回は実力のある役者ばかり。リライトする上でも、かつて手加減していた部分を取っ払って難しい表現まで書き込んだので、25年前とはまったく感触が違います」
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主人公の空那を演じる紅は「今日、見ていただいた場面は空那として核となる」と説明しつつ、本番に向けてこう意気込みました。
「(空那は)バックボーンがすごく大切な役。怒りでしか表現できない部分もありつつ、刑務所に入った情けなさもあるのではないかなと。幼少期からの持っているマインドがフォークダンスに出会い、初めてできた仲間たちとの化学反応によってどう変わっていくのかが大切だと思うので、稽古の中でキャッチしていきたい」
紅は今回の舞台のための役作りについても明かします。
「いままではダークな役といってもどこかカッコよかったり、美しさを求められたりというところがありましたけど、今回、美しさはまったくいらないんです。だから心を荒ませようと思って、家の中をとっ散らかしてみていて。本当はめちゃくちゃ綺麗好きなので、本当に嫌です! けど、そういうストレスの一つひとつが役に繋がればいいなと思っています」
そんな空那を25年前に演じたのは、今作で“和江”を演じる遊気舎出身の女優・楠見薫です。楠見は紅に、こんな期待を寄せました。
「(紅さんによる空那は)最高です。顔合わせの初日に紅さんと席が横で。本読みをしたんですけど、紅さんの台本がすでにボロボロ。それを見て“負けました”と思いました。私、めっちゃ(台本が)綺麗だったんで(笑)、読み込みの量が違うなと思いました」
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内場「ただただ一生懸命やるだけです」
朗らかなキャラクターの“千歌”を演じる遠藤は、稽古中の“注意点”をこう語ります。
「自傷行為を繰り返しながら自分のやってしまった罪と向き合ってきたなかで、仲間たちとダンスに出会って変わっていく役。(稽古中に)おいしいおやつがいっぱい出てくるので、たくさん食べながらも太らないように気をつけます」
優等生的なキャラクターの“辻川”を演じる大路は「優等生なので姿勢よくやっていこうと思ってるんですけど、ふだん猫背なので姿勢を気を付けるだけでも筋肉痛です。なんとか本番までに背筋を伸ばしていきたい」と気合を入れました。
一方、おとなしい性格ながらもキーマンである“祥子”役の小島は「ほぼ喋らないんですけど、喋らないでいるってけっこう大変です(笑)。外野にいて見渡すというよりは中にいる人としてどう存在していけるかというところを、みなさんとともに見つけていきたいですね」と語ります。
そして、拘置所の厳しくも優しい所長“黒崎”を演じる東風は「みなさんと一緒のシーンもあるんですけど、またちょっと違うところや面白いシーンもあるので、台本の面白さそのままをお届けできるよう、まっすぐにやっていこうと思います」とコメントしました。
この作品の見どころのひとつはフォークダンスのシーンです。受刑者にフォークダンスを指導する“松岡”を演じる内場は「ただただ一生懸命やるだけです」と言いながら、こう力を込めました。
「フォークダンスってちゃんとするとしんどいんですよ。劇中で6曲くらい踊るんですけど、講師役ということで全部覚えなあかんので大変です。けど、やりがいがあるというか、やればやるほど深いなと。みなさんにもっともっとフォークダンスの魅力を広めたいですね」
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報道陣から「ダンスが苦手な人は?」という質問が出ると、紅以外の全員が静かに挙手。大路は「習った1日目は本当にできなくて涙が止まらなかったです」と明かします。小島も「頭の中では、むかしバレエやってたし、体が動くイメージがあるんですけど、ついていかない年齢を受け止めています。ストレッチもしないともとに戻らない」と語りました。
そんななか、紅が後藤に「どういう感じで踊ったらいいんでしょうね?」と質問すると、後藤は「えぇ!?」と驚きながら、「空那はのちのち女囚たちのチームリーダーとなって、フォークダンスバトルに臨んで勝ち進んでいく存在なので、成長する段階を見せてもらいたい」とアドバイスしていました。
そのほか、男性ブランコ(平井まさあき、浦井のりひろ)も出演する舞台『FOLKER』は2月14日(金)~23日(日・祝)の期間、上演されます!