Blackmagic Designによると、Opera Grand RapidsとColvin Theatricalが、オペラ映画「Stinney: An American Execution(原題)」の制作にBlackmagic Designのカメラ、スイッチャー、DaVinci Resolve(編集&グレーディング用)を使用したという。
PBSで初公開された同作は、世界で初めて生のオペラが映画的に収録された作品のひとつで、撮影には6台のBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2デジタルシネマカメラ、編集とカラーグレーディングにはDaVinci Resolve(編集、カラーグレーディング、VFX、オーデディオポストプロダクション用ソフトウェア)が使用された。
Opera Grand Rapidsは、ミシガン州で最も古くから運営されているプロのオペラハウスで、1967年以来、世界トップクラスのアーティスト、舞台監督、指揮者、振付師、舞台セットデザイナー、衣装デザイナーたちや、グランド・ラピッズ交響楽団、オペラ・グランド・ラピッズ・コーラス・アンド・チルドレンズ・コーラス(Opera Grand Rapids Chorus and Children’s Chorus)などが活躍している。
「Stinney: An American Execution」は、1944年にジョージ・スティニー・ジュニアが不当に処刑されたことの苦悩にスポットを当てた作品である。ジョージ・スティニー・ジュニアは、アメリカで合法的に死刑に処された最年少の人物だった。このオペラ作品は、フランセス・ポロック氏が作曲し、ティア・プリス氏が脚本を担当した。
Opera Grand Rapidsは、オペラの映画的な撮影および配信を世界で初めて開始したオペラ会社のひとつで、2020年にライブオペラの配信制作を完遂したのは世界初のことだった。
エグゼクティブ・プロデューサーのエミリー・シャーウィッチェ氏は、映像制作および配信、ヒップオペラなどの新しいプログラムなどを取り込み、オペラという芸術を新しいオーディエンスにとって親しみやすいものにすることで、Opera Grand Rapidsを世界で最も尊敬され、先進的な考えを持つオペラカンパニーに成長させた。
シャーウィッチェ氏は「Stinney: An American Execution」もそのビジョンに基づいていると話す。
シャーウィッチェ氏:グランドオペラはボリュームも大きく、感動的で 壮観なものです。しかし「Stinney」はそうではなく、社会的なメッセージを持った、深く内面に迫るような、現代的な作品です。
Opera Grand Rapidsが「Stinney」の制作を発表した際、シャーウィッチェ氏は映像制作者のコディー・コルヴィン氏と会って、この現代的オペラの撮影コンセプトについて話し合った。コルヴィン氏は、過去にも映画的なマルチカメラ撮影を行っている映画・メディア会社、Colvin Theatricalの創設者で、今回の「Stinney: An American Execution」では映像撮影の監督と映像制作の管理を担当した。
コルヴィン氏は、オペラ公演を映画的に撮影することの計画、ピッチング、利点について、次のように説明する。
コルヴィン氏:エミリー(シャーウィッチェ)と私が「Stinney」について話し合いを始めた際、シネマカメラで撮影したら素晴らしいものになるだろうと感じましたが、その方法でオペラ公演が全編にわたって撮影された前例は見つけられませんでした。オペラの撮影は、従来、シネマカメラより扱いやすい放送用カメラで行われていました。シネマカメラは、被写界深度が浅く、より正確な操作が求められるため、ライブ環境で使うには難しすぎると考えられていたからです。
しかし、私たちのチームはBlackmagic Cinema Cameraを劇場のライブ環境で使用したことがあったので、「Stinney」でBlackmagicシネマワークフローを使用することに不安はありませんでした。実際、本当に良かったと思います。
シネマカメラで撮影することで、今後のオペラ撮影の新しい基準となるレベルのディテールが得られました。パフォーマーの細かな表現を捉えることや、複数の出演者間でフォーカスを切り替えること、オペラの非常に動きの多い照明器具を撮影することなどが、Blackmagic Designの機器ですべて可能になります。
さらに、Blackmagic製品の価格は競争力が高く、購入しやすいので、地方で舞台芸術を運営する小さな会社でもこのような撮影が行えます。
コルヴィン氏が満員の客席を撮影する際は、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2に搭載された特定の機能が役立った。
コルヴィン氏:Pocket Cinema Cameraはリグ組みしても小さく、軽い三脚に乗せられます。観客の生の反応を、中断なしで撮影できました。サイズが小さいので、誰の視界を遮ることもありませんでした。
コルヴィン氏は、Blackmagic Pocket Cinema Camera 6K G2のスーパー35センサーもライブパフォーマンスを撮影する上で利点となったと話す。
コルヴィン氏:Blackmagic Pocket Cinema Camera 6Kのクロップファクターのおかげで、安価な70-200mmの望遠レンズで撮影でき、300mm以上という実用的な焦点距離が得られました。これは観客席から撮影する際に非常に役立ちました。
撮影の後、コルヴィン氏はPBSの非常に厳しい締め切りに間に合わせる必要があった。同氏は、DaVinci Resolveを使用して編集からカラーコレクションまでのすべてを行い、DaVinci Resolve Studioのマルチカム編集機能も大いに活用した。彼は、DaVinci Resolve Studioを使用して最終バージョンを調整し、PBSの厳格な放送基準に準拠させただけでなく、PBSが義務付けているインターレースでの納品に向けてフッテージをフォーマットすることができた。
コルヴィン氏:DaVinci Resolveでは、公共テレビ用のバージョン、ウェブ用のバージョン、映画用のバージョンのすべてを、1つのタイムラインから書き出せます。Blackmagicに搭載されたブロードキャストセーフ機能と色域リミッター機能を使用して、作品を公共テレビ用にすばやく設定できました。その一方で、デジタル納品と劇場納品用のカラーグレーディングはそのまま維持できました。
最初に観たオーディエンスの反応は、息をのむような唖然とした沈黙、そして万雷の拍手だった。
シャーウィッチェ氏:これはオペラを体験する新しい方法です。その良い例として、主人公のジョージ・スティニーに寄っていき、彼の目にズームインすることができました。それを見た視聴者は、彼の痛みを感情レベルで感じることができました。これは、観客席に座って観る場合よりも強い感覚です。オペラは元から最も感動的な劇場体験のひとつですから、この感覚が加わるのはさらに素晴らしいことです。
「Stinney: An American Execution」はpbs.orgで配信中。