車掌がおらず、運転士1人が乗務する鉄道のワンマン運転。地方のローカルでは当たり前となっていたが、最近は大都市圏でもワンマン化の波が押し押せているようだ。
関東の私鉄大手では、京王、京成、西武、東急、東京メトロ、東武が導入済み。JR東日本も川越線や八高線、青梅線などで実施しており、今春のダイヤ改正からは南武線(川崎―立川)と常磐線の各駅停車(綾瀬―取手)の2区間、26年春からは横浜・根岸線(八王子―大船)で開始することを発表。その後もワンマン運転の線区を拡大し、30年ごろまでには首都圏の主要路線で導入する見通しだ。
だが、大都市圏では1~2両の編成が当たり前のローカル線と違って車両数も多い。各駅の乗降客の数にしても同様で、運転士はこの状況を1人で対応しなければならない。彼らの負担は増すばかりで、現場からは悲鳴の声も上がっている。
ワンマンでの乗務機会が多い30代の私鉄運転士も、「今は慣れましたが、これまで車掌が行っていた安全確認も1人でしなければならず、仕事量は明らかに増えました」と語る。また、別の鉄道会社に勤務する40代運転士も「車両数が多いうえに駆け込み乗車も頻繁に発生します。それを確認し、自分で対応するのは大変。車掌と乗務していた時のほうが楽」と本音を漏らす。
関西でもJR西日本や私鉄各社が導入しているが、大都市圏でワンマン運転が実施されるようになった背景としては鉄道会社の人手不足がある。加えて、働き方改革の影響もあり、ひと昔前のような無茶なシフトを組んで働かせることができなくなった点も大きい。
今のところ、首都圏や関西圏でワンマン運転による大きなトラブルなどは聞かれないが、問題がないわけでもないようだ。
「地方のワンマン運転の列車は多くても4両程度ですが、大都市圏ではその倍以上。最新型の列車だと運転席にホームの様子を確認できるモニターが付いていますが、それでも運転士1人で安全確認を行うには車両が多すぎます」(鉄道事情に詳しい全国紙記者)
この問題をいかにして解決するか、それが都市部でのワンマン運転の今後の大きな課題になりそうだ。