〈甲斐FA人的補償〉ソフトバンク最速156キロ右腕獲得で巨人・小林を待つ地獄の捕手サバイバル…その命運を握る男とは?

福岡ソフトバンクホークスから国内フリーエージェント(FA)で読売巨人ジャイアンツに移籍した甲斐拓也捕手(32)の人的補償として、ソフトバンクは16日、伊藤優輔投手(28)を獲得した。

甲斐の代役即戦力を補強しなかった理由

今オフFAの目玉として巨人に移籍した甲斐の人的補償は、大卒社会人5年目の伊藤優輔だった。

球界を代表する捕手、甲斐の移籍で手薄となったソフトバンクの捕手陣だが、フロントは巨人から人的補償で捕手を補強するという特効策はとらずに投手陣の補強を選択をした。

今月、ソフトバンクの仕事始めとなった鏡開きでの会見で城島健司CBOは、甲斐の功績を称えながらも、現状の捕手陣への期待も口にしていた。

「いきなり甲斐が抜けたわけではない。ポテンシャルの高い捕手がいる。その中の誰がポジションをとるのか。代わってやってくれるだけの人材はいると思う」

新戦力が台頭するチャンスというポジティブな面を強調したが、甲斐の抜けた穴はそう簡単に埋まるはずがない。

昨季の甲斐は119試合出場で打率.256。球界ナンバーワンと呼ばれる強肩や長年常勝軍団を支えてきたリードなど、数値化できない守備面での貢献度は高く、それだけにソフトバンクにとって戦力ダウンは免れない。

「甲斐の代役候補筆頭は、今季6年目となる27歳の海野隆司です。とはいえ、昨季51試合出場で打率.173。これがキャリアハイの数字なんです。まだシーズンを通して出場した経験すらない若手に甲斐の代役を求めるのは酷でしょう。

そこで必要になるのがベテランの存在ですが、DeNAからFAで移籍してきた33歳の嶺井博希は昨季たった4試合の出場です。今季は同じDeNAから現役ドラフトで上茶谷大河、トレードで濵口遥大というかつてのドラフト1位投手たちが移籍してきます。2人をよく知る嶺井にとっては追い風になると思いますが、それでも正捕手として甲斐の穴を埋める存在になるとは思えません」(パリーグ球団スカウト)

現有戦力だけで扇の要の穴を埋めるには心許ないソフトバンクが、捕手王国の巨人から人的補償で甲斐の代わりとなる選手を補強しなかったのは何か秘策があるのだろうか。

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2人の名手による捕手再転向というウルトラC

その秘策とささやかれるのが昨季、三塁手としてパリーグの「ベストナイン」と「ゴールデン・グラブ賞」を獲得した栗原陵矢の捕手再転向説だ。

「ソフトバンクの不動のレギュラーには内外野に捕手経験のある栗原と近藤健介がいます。この2人のどちらかが捕手再転向というウルトラCが実現したら、甲斐がいたとき以上にとんでもない打線ができるんですけどね。近藤はともかく、栗原に関しては捕手への未練もあるみたいですけど…」(前同)

当の栗原は昨季の開幕当初に小久保監督から「練習はしなくてもいい。心の準備だけはしておいて」と緊急事態に備えた第3捕手としてのスクランブル要請を受けていた。これに対して栗原もゴールデン・グラブ賞の表彰式の際、2021年までの登録ポジションだった捕手への思いを明かしている。

「やっぱりまだまだ捕手でゴールデン・グラブ賞をとりたい気持ちはある。プロ野球選手である以上、チャンスがまだまだあるのでいつかとりたい」

実際、捕手という特殊なポジションを考えると栗原の再転向は現実的ではないが、そんな話を期待したくなるほど、今季のソフトバンクの捕手陣には不安がつきまとう。

一方で、甲斐の補強により、捕手陣の競争が熾烈なのが巨人だ。

昨季は大城卓三が96試合、岸田倫行が88試合、小林誠司が42試合の出場。だが、42試合の出場にとどまった小林も同級生の菅野智之と「最優秀バッテリー賞」を受賞するなど、リーグ優勝に貢献している。

今季はその大城、岸田、小林という3つ巴の正捕手争いの中に球界ナンバーワン捕手の甲斐が加わることで、とんでもなくハイレベルな争いとなる。

「特に小林に関しては菅野が登板する試合での出場が多かったので、菅野がメジャー移籍するとなると、非常に難しい立場です。さらに甲斐は強肩で守備面に定評のある小林と同じタイプ。打撃のいい大城などと違って、出場機会は激減するでしょう」(セリーグ球団スコアラー)

そんな崖っぷちの小林が巨人でもう一花咲かせるためにカギを握る存在が、あの男だという。