長尾謙杜、映画『室町無頼』で挑んだ超絶アクションシーンへの想い…クライマックスは「僕のフィーバータイム!」

直木賞を受賞した垣根涼介の史実に基づく歴史小説を映画化した『室町無頼』(1月17日公開/ IMAX 公開中)。室町時代を舞台に、腐りきった政治と世の中を叩き直すため命がけの戦いに挑んでいく“無頼”たちの姿を描く本作は、スケールの大きい一揆の場面や迫力満点の殺陣、本格アクションも大きな見どころだ。今回、主人公の蓮田兵衛(大泉洋)のもとで、身も心も成長していく青年、才蔵を演じたなにわ男子の長尾謙杜にインタビュー。棒術を駆使する才蔵の超絶アクションの裏側について、熱く語ってもらった。


【写真を見る】「これからもいろいろなアクションに挑戦したい!」と意気込みを語った長尾謙杜 / 撮影/植村忠透
自由人の蓮田兵衛(大泉洋)は、武士の階級でありながらひそかに倒幕と世直しを画策する無頼漢。京とその周辺の悲惨な状況と窮民を見た兵衛は、立ち上がる時を狙っていた。抜刀術の達人、槍使い、金棒の怪力男、弓の名手と個性たっぷりのアウトローたちを束ねる兵衛はついに巨大な権力に向けて空前の大暴動を仕掛けるも、幕府軍がその行く手を阻む。幕府軍を率いるのはかつての悪友、骨皮道賢(堤真一)。“髑髏の刀”を手に一党を動かす道賢を前に、兵衛は命を賭けた戦いに挑むのだった——。

■「気分は『ベスト・キッド』の修行シーン」


「六尺棒」の超人的な棒術を身につけた才蔵のアクションは必見! / [c]2025『室町無頼』製作委員会
長尾謙杜が演じるのは、自己流の棒術で生計を立て極貧生活を送るなか、兵衛に出会い、その生き様に心酔していく青年、才蔵。地獄さながらの修行を経て「六尺棒」の超人的な棒術を身につけ、兵衛とともに戦いに出る。修行シーンをはじめ、ワンカットで撮影されたクライマックスシーンでは六尺棒を構える長尾渾身のアクションが堪能できる。「棒術と聞いた時には棒を持ったアクションのイメージがまったく湧きませんでした。六尺棒は僕の身長よりも10センチくらい長いもの。最初のころは地面に当たったりして振るだけでも大変でした。最初の練習はほぼ素振りだけ。本当に身になっているのかな、なんて思ったりもしました」と懐かしむ。

「気分は『ベスト・キッド』の修行シーン。服を(ハンガーに)掛けるだけの作業をずっとやっている時のあの気持ちがすごくよくわかって(笑)。でも、練習を開始して1か月くらい経ったころに、(相手の技を)受けられるようになったり、ちゃんと様になっていたりしたので、基礎をやっていてよかったなと思いました」と棒術との出会いと練習期間を振り返る。空手経験があるため、腰の使い方や重心の落とし方はつかみやすかったそうで、「いま、改めて振り返るとすごく楽しかったし、これからもいろいろなアクションに挑戦していきたいです!」とアクションそのものにも興味が湧いたと力強く語った。


才蔵は兵衛(大泉洋)に出会い、その生き様に心酔していく / [c]2025『室町無頼』製作委員会
「楽しかった」と笑顔を見せた長尾だが、才蔵のアクションとしての“棒術”の魅せ方には難しさも感じていたようだ。「練習では決まった型があるけれど、本当の戦いとなったら次に相手がどんな攻撃をしてくるのかはわからない。攻撃されたように見せること、戦いのなかでのアクションの魅せ方という部分は、自分なりに研究をして撮影に挑みました」と説明。それに加えて、京都撮影所のスタッフやアクション監督をはじめ、アクション部にもどんどん質問してよりよいものを作り上げることができたと充実感を滲ませる。「京都撮影所と聞いた時は、怖いのかなとか独特の雰囲気があるのかなと考えたりもしたけれど、いざ行ってみると迎えてくれたのはすごく優しいレジェンドたち。僕の年齢に近いスタッフさんもいらっしゃるけれど、みんなが温かく迎え入れてくれて…優しかったです」とニッコリ。「これまでたくさんの作品を作ってきたすごい方たちばかり。モノづくりへのこだわりや姿勢がめちゃくちゃかっこよくて。こんなすごい場所に参加していると思うだけで、僕も頑張ろうという気持ちになりました。メイクも小道具も撮影のセットも、すべて一流のものが揃っている。自然と役に入り込めたし、皆さんのおかげで才蔵を作ることができました」。


巨大な権力に向けて巻き起こった空前の大暴動の結末は / [c]2025『室町無頼』製作委員会
続けて、京都撮影所に抱いていた“怖さ”を感じることはほとんどなかったと強調。「厳しいとは聞いていたけれど、実際には厳しい言葉をかけられることも、怒られることも全然なくて。ただ、1回だけ『明日の撮影は怖くなるかも…』と思ったことがあって。実は、照明さんに大の阪神ファンの方がいて。撮影期間の日本シリーズで阪神が負けた次の日はちょっと不安がよぎりました。周りのスタッフさんも『明日は荒れるかも』なんて言っていたし、僕も『明日はちゃんと照明当ててもらえるかな』って思ったりもして。でも、心配不要でした(笑)」とニヤリ。初のアクション映画で練習も含めて過酷な現場だったにもかかわらず、スタッフ陣に温かく迎え入れられたことにより、のびのびとリラックスして撮影に挑めたようだ。「アクションもそうですし、時代劇の所作もわからないことだらけ。『これで合っていますか?』などとたくさん質問しながら才蔵を作っていきました。初対面でも自分より年上の方にも物怖じしないタイプなので、京都には意外とすんなり馴染めたのかなと思っています」と余裕も漂わせていた。

■「いろいろな場面で根性が身についたし、やり遂げたあとの達成感は大きかったです!」


厳しい修行シーンも見事に演じきった / [c]2025『室町無頼』製作委員会
アクションシーンに加え、一見長尾とは見分けがつかない才蔵のビジュアルも注目ポイントだ。「体重は6キロくらい増やしました。もともとガリガリ体型だし、飢饉の時代設定ということもあり、そのままの僕の体でも合っているのかなとも思いました。でも、才蔵としては足腰を強くする必要もあったし、少し大きな体というイメージがあって、増量することにしました。修行前も修行後のシーンも近いタイミングでの撮影だったので、できる限り(体重の)調整はしましたが、足りない部分はメイクなど皆さんの力をお借りしながら準備していきました」と役作りを解説。初めて才蔵としての自分の姿を見た時には「誰?って思いました(笑)。ポスターでは僕だとわかるビジュアルが使われていたので、すごくうれしくて。カットによっては僕だとわからないシーンがたくさんあるので」と別人のように仕上がったビジュアルに触れつつ、「才蔵のシーンは全部僕が演じています。ちゃんと僕だと認識した上で、観ていただけたらうれしいです!」と冗談混じりにもしっかりとアピールした。


長尾が現場で心を打たれた大泉、堤が見せた”顔”とは / [c]2025『室町無頼』製作委員会
また、棒術などアクションシーンでのテクニックに加え、本作で身についたのは“根性”と即答。「もともと根性はあったほうだと思うけれど、さらに根性がついた気がしています。アクションをしていくなかで身についた根性もあるし、朝4時に起きる根性もついたし、2時間くらいかかるメイクも根性で乗り切った感じ。いろいろな場面で根性が身についたし、やり遂げたあとの達成感は大きかったです!」と言い切る。


大泉の印象はムードメーカー。現場では誰よりもしゃべっていたとのこと / [c]2025『室町無頼』製作委員会
また、大泉や堤ら、共演シーンの多い先輩役者からの刺激や学びもたくさんあったという。「実は、お芝居のことを細かく話すことはほとんどなくて。現場では他愛もない話で盛り上がりました。大泉さんはとてもフランクな方。熱く語ってなにかを教えるタイプではないので、背中を見て学ばせていただいたことはたくさんあります」とし、特に勉強になったのはオンオフの切り替えだったそう。「大泉さんはすごく切り替えが上手だし、現場のみんなを引っ張っていく姿もすごく勉強になりました。引っ張っていくだけではなく、みんなに同じように寄り添って、優しくフォローする姿はとてもすてきだと思いました」とニコニコ。「ムードメーカーで、誰よりもしゃべっている(笑)。厳しい撮影もたくさんあったけれど、大泉さんの人柄の良さには、僕もそうだし、キャストもスタッフもみんな助けられていたと思います」と才蔵が兵衛に惚れ込んだように、長尾も大泉の魅力に惹かれた様子。


堤演じる骨皮道賢は兵衛のかつての悪友で現在は幕府軍を率いている / [c]2025『室町無頼』製作委員会
大泉や堤の時折見せる“ある表情”も長尾の心を打ったという。「大泉さんや堤さんの“お父さんの顔”が見られたのがすごくうれしくて。芸能人で俳優というイメージしかなかったけれど、『娘に会いに東京に帰ります!』って、京都から東京に向かう姿を見るとなんだかドキッとすると同時に、心が温かくなって涙が出そうになることもありました」と先輩たちの新たな一面を見たことを喜んでいた。

■「いつかは馬に乗って刀を振る役に挑戦したいです!」


クライマックスのアクションシーンは「僕のフィーバータイムです!」とニッコリ / 撮影/植村忠透
劇中で才蔵は、兵衛のためなら!と一緒に戦いに出ることを決意。長尾にとって“ついていきたい!”と思えるのはどのような背中なのか。「事務所の先輩のSUPER EIGHTさんや、WEST.さんは関西の僕たちの道を作ってくれた方々。なにわ男子は大倉(忠義)くんにプロデュースしてもらっていますが、大倉くんやSUPER EIGHTさんが作ってくれた道を進みながらも、なにわ男子というグループとして新しい道も作っていけたらいいなと思っています。そういう意味で(兵衛と才蔵の関係に)似ているのかなと思います」と共通点を挙げた。


大泉洋、堤真一ら先輩俳優からは「背中で学ばせてもらった」とのこと / [c]2025『室町無頼』製作委員会
アクションに加え、本格的な時代劇への参加も本作が初めてとなる。「(松本)潤くんが主演を務めたドラマ『どうする家康』が僕にとって初めての時代劇でしたが、ガッツリと挑むのは今回がほぼ初めてになります。時代劇は日本がこれまで培ってきた伝統の一つですし、これからも大切にしていかなければいけない文化。そこに自分が参加させていただけるだけでもすごく光栄なこと。しかも今回は東映の本気が伝わる映画なので、これまでの時代劇を大切にしつつも、新たな部分が見える時代劇の新境地をお届けできるのではないかと期待しています!」と自信をのぞかせる。棒術を身につけた長尾は今後もアクションにどんどん挑戦していきたいと意気込む。


大泉演じる自由人の蓮田兵衛は武士の階級でありながらひそかに倒幕と世直しを画策する無頼漢 / [c]2025『室町無頼』製作委員会
「やっぱり刀は振ってみたいし、馬に乗ってみたいです。今回は役的に自分の足で走るシーンが多かったけれど、いつかは馬に乗って刀を振る役に挑戦したいです!」と宣言。クライマックスのアクションシーンは「僕のフィーバータイムです!」とおすすめした長尾。「才蔵として“棒”を振る最後のシーン。練習期間も含めたら半年間くらい才蔵として頑張ってきた思いを込め、才蔵として生きている時間に集中していた気がします」と才蔵として過ごした時間にしみじみ。感想は観た人それぞれに託すとしながらも、「これまでに見せたことのない僕を見せられた作品だと思います。僕を知ってくれている方には新しい自分を楽しんでもらえると思うし、この映画で僕のことを知ってくれる人がたくさんいたらすごくうれしいです。映画を観た方の反応が僕がいま一番楽しみにしていることです!」と目を輝かせ、多くの反応あることに期待を込めていた。

取材・文/タナカシノブ