「レッドブル」のグローバルサッカー部門の責任者に就任したユルゲン・クロップ氏が、同社が本部を置くオーストリア・ザルツブルクの空港に隣接するイベント会場「HANGAR-7」で行なわれた発表会に出席した。
【動画】久保が古巣ビジャレアル戦でゴラッソ!
マインツ、ドルトムント、リバプールで指揮を執り、チームに多くのタイトルをもたらしてきたサッカー界屈指の名将は、昨季限りでいったんベンチを離れ、その後の去就が注目されていたが、昨年10月にこれまでとは異なる役職で活動することがレッドブルによって明らかにされていた。
同社の公式サイトによれば、彼は今後5年間にわたって「レッドブル傘下のサッカークラブの国際ネットワークを統括。各クラブの日常業務に関与することはないが、戦略的なビジョンを提供することで、レッドブルの哲学を推進する各クラブのスポーティングディレクターを支援する。さらに、レッドブルのグローバルサッカー部門における世界規模のスカウティング業務の補佐と、指導者の養成や育成に貢献する」という。
そして1月14日、レッドブルカラーのF1マシンが並ぶ会場に企業プロジェクト・投資CEOを務めるオリバー・ミンツラフ氏とともに姿を現わした57歳は、同社製のエナジードリンク缶を手に、新たな挑戦に向けての抱負を以下のように語った。
「(ブンデスリーガ第16節のブレーメン戦で)RBライプツィヒの4万2000人のサポーターを見てこう思った。『ライプツィヒを応援し、彼らが勝つのを見たいと思っている人々には、良いサッカーを見る価値がないのか?』と。そして『彼らはそれに値する』と感じたし、それを提供する価値があると思った。それはライプツィヒだけでなく、(同じレッドブル系列のクラブが所在する)ザルツブルク、ニューヨーク、日本、ブラジルのファンも同様だ。彼らは良いサッカーやサポートを受けるに値する。私はそれを提供したい」
また、彼は「医者は、患者がどこの街から来たかで区別しない。弁護士もそうだ。私はフットボールの医者だ。どこでも、全力を尽くせるところなら、その場所で助けるのが好きだ」とも語っているが、これはドイツの伝統的な「50+1ルール(親会社の名前をクラブ名に冠せず、クラブ所有期間が20年未満の場合は49%までしかオーナーシップを保有できない)」に抵触していると指摘されているライプツィヒで業務に携わることへの批判に対する反応である。
「9年間イングランドにいたら、同じ人間ではいられない。他の種類のフットボールを見たことがない人々と同じ視点で戻ることはできない。私の意見では、人々は可能な限り最高のものを受けるに値する」 クロップのこれらのコメントを報じた英国の日刊紙『The Guardian』は、「レッドブルは、彼が『最高のものを提供できる』人物だと期待しているが、ライプツィヒとレッドブル・ザルツブルクは今季のチャンピオンズリーグで苦戦し、後者は国内リーグでも5位に低迷している。リーグ・ドゥのパリFCには集中的な取り組みが必要になる。そして、ブラガンチーノや大宮アルディージャの課題は、さらに掴みどころのないものになるだろう」と、彼のアドバイザーとしての仕事に困難が待ち受けていることを指摘した。
一方、リバプールのクラブ専門サイト『LIVERPOOL.COM』は、前述の「道義的な部分での反感」に注目し、「クロップのここまでの姿勢は、ドイツの多くの人々を納得させるには十分ではないかもしれない」と綴りながらも、「彼がこの新たな役職で何をもたらすのかを見るのは非常に興味深い」と関心や期待も寄せる。
さらに、「クロップはピッチ上においては、レッドブルの価値観と完全に一致している。発表会では『私も人々に翼を与える』と冗談を言ったが、その言葉通り、彼のアプローチはレッドブルのクラブネットワーク全体で好まれるだろう。実際、リバプール時代にはスタイルの類似性から、サディオ・マネ、ナビ・ケイタ、イブラヒマ・コナテ、南野拓実、ドミニク・ソボスライら、レッドブル系列のクラブの選手を獲得することが好きだった」と、新たなプロジェクトとの相性の良さも指摘する。
そして、「クロップがこの新たな役職に就くことは、十分に正当化される。実際、これは素晴らしいチャンスのように思われる。直接現場で指揮を執ることなく、サッカー界のトップレベルで活動を続けるのである」と好意的な見解を示して記事を締めている。
最後に母国ドイツのスポーツ紙『kicker』は、「クロップが今回の発表会で具体的な内容について多くを語ることを避けたのは、今この段階で公に何かを発表すれば、各拠点に混乱を招き、計画の実行が困難になる可能性があるからであり、またブラジルやアメリカ、日本で直面する状況について、彼自身がまだ十分に把握できていないという事情もある」としたが、こちらも名将の挑戦に興味を示した。
「クロップは、その圧倒的な存在感をもって、ドイツ語圏を超えて広く人気を誇る新しいサッカー大使として、企業の代表を務めることになる。その豊富な経験を活かし、各拠点を刺激し、活性化させる役割、さらにサッカーだけでなく、様々なスポーツの展開においても相乗効果を生み出すことが期待される。そして、成功への土台を築くということでライプツィヒのリーグ制覇も期待されており、彼の尽力によってマイスターシャーレを手にできれば、それだけで大きな喜びとなるだろう」
構成●THE DIGEST編集部
【動画】パルマGK鈴木彩艶、トリノ戦でスーパセーブ連発!
【動画】バルサがマドリーを粉砕! 圧倒的な強さでスーペルコパを制す!
【動画】ヘスス・ナバスのラストゲームとなった18節マドリー戦ハイライト