完全に独壇場だった。タケ・クボ(久保建英)はこの活躍に値する。にもかかわらず、彼の数字が圧倒的なものでも決定的なものでもないため、レアル・ソシエダが誇る宝が正当に評価されないことが多々ある。
タケはトップレベルの選手だ。市場の注目銘柄であり、古巣のレアル・マドリーもサイドにワールドクラスの選手を揃えているにもかかわらず、今なおその動向を注視している。
タケが今シーズンもアノエタでプレーしているのは、ソシエダのスポーツ部門がレンタル生活を続けていた彼に着目し、大きな賭けをしたからだ。聡明で将来のビジョンを明確に描くタケは、キャリアのピンチを救ってくれたことに感謝し、ソシエダでプレーし続けている。代理人の意向通りに動いていたら、とっくに去っていたことだろう。
タケはそのカテゴリーに相応しい評価を受けなければならない。しかしソシエダのファンの間ですら、「エゴが強い」、「良い日と悪い日の差が激しい」、「スイッチを入れる試合を選んでいる」といった誤った烙印を押す輩が存在する。タケほど強力な牙を持った選手はチームには見当たらないにもかかわらず、だ。
もちろん毎試合、ハイパフォーマンスを見せるわけではない。閃き、調子、チームの勢い、相手の守り方&守備の強度などさまざまな要因によって左右される。それは全てのサッカー選手に共通することであり、その中でもタケは別格なのだ。
魔法の力を持ち、制御不能で、一瞬で試合を決める。ビジャレアル戦のように。タケがソシエダのスター選手と呼ばれるのは、決して偶然ではない。異質な存在だ。ボールが彼の足元にあるとき、何が起こるか分からない。
51分だった。その瞬間、ミケル・オジャルサバルは、スプリントしているタケの姿をほとんど見ていなかった。大きく敵陣めがけてロングボールを蹴り込むと、タケは元チームメイトのダニエル・パレホより一瞬早くボールに触ると、そのままペナルティエリアに侵入。いったんギアを落とした後、前を塞いだキコ・フェメニアの股を抜いて、左足でシュートを流し込んだ。
ゴラッソだった。もしかしたら、彼がソシエダに来てからのベストゴールかもしれない。違いを生み出す選手とはこういうものだ。
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立ち上がりから予感はあった。早々にセルジ・カルドナの股間を抜いて縦に突破。その後もソシエダが試合の主導権を失う中、果敢に仕掛ける姿勢を見せ、22分にルカ・スチッチのシュートをお膳立てすると、30分にもゴールライン際からマイナスのクロスを供給。そのこぼれ球に反応して蹴り込まれたスチッチのシュートは惜しくもポストに嫌われた。
後半、ゴールシーン以外でも、決して逃げずにボールを要求し、83分に交代でピッチを退くまでハードワークし続けた。
地元の偉大なアイドル、オジャルサバルに連れられての交代だったが、「クーボ!クーボ!」の叫び声がアノエタに響き渡った。
陰鬱な月曜日の夜、自らの健康を危険に晒してまでも、底冷えするスタジアムに駆け付けた観客はその場に居合わせた幸福感に浸っていたことだろう。
取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸
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