「素人の女とは遊ばなかった」「昔は某球団御用達の銀座クラブがあった」愛甲猛氏が明かす昭和プロ野球界の奔放すぎた女遊び

近年、プロ野球選手の不倫報道とその謝罪が相次ぐなど、球界にもコンプライアンスの波が押し寄せている。一方で、成績さえよければ火遊び程度じゃ文句を言われないという時代もかつては確かにあった。1980年の夏の甲子園を制した横浜高校のエースで、1980~90年代のプロ野球界のウラもオモテも知る“球界の野良犬”こと愛甲猛氏が、ムチャクチャだったあの頃を懐古する。(全3回の1回目)​

銀座に某球団御用達のクラブも

――最近はプロ野球選手の不倫のニュースが後を絶ちませんね。

愛甲猛(以下、同) 今は怖い時代だなって思うよ。この前、元ロッテの清田(育宏。現・埼玉武蔵ヒートベアーズ監督)をサポートしてた、とある会社の会長とゴルフをやったときもその話になって、「あの程度の話、昔は当たり前にあったのに、あんだけ叩かれちゃうんだね」って言ってた。

――昭和に比べると遊びづらくなっているかもしれません。

ただ、今の連中もちょっと考え方が軽いよ。素人を相手にしすぎてる。今は素人も発信力があるし、ああやって(週刊誌に)売っちゃうからね。
昔は「素人と遊ぶな。玄人と遊べ」って言われてて、銀座のクラブの姉ちゃんなんて口が堅くて絶対洩らさなかったもんね。

――まぁ不倫はいつの時代もよろしくはないんでしょうが(苦笑)。

銀座の姉ちゃんと結婚したやつもけっこういるよ。巨人にも在籍していたKとか最多勝も獲得したN、それと監督経験もあるIなんかもそうじゃなかったかな。

――意外!

みんな同じ店の女だよ。銀座の××ってところ。今は知らないけど、当時は西武の御用達のお店で、優勝の二次会、三次会もその店でやったりしてたよね。

今はなき「姫」ってお店もプロ野球選手がよく行ってたね。オーナーで直木賞作家で作詞家でもある山口洋子さんには、みんなかわいがってもらってたよ。

――なんだかいい時代ですね。

グラウンドでしっかりやれば文句言われなかったからね。でも注目度の高いジャイアンツなんかは外で遊ぶとあることないこと書かれるから、球団から「遊ぶなら自分で部屋を取ってそこで遊べ」って指導が出てたみたい。

――愛甲さんの所属球団(ロッテ、中日)は?

当時、ドラゴンズの東京遠征は赤プリ(赤坂プリンスホテル)に泊まってたもんだから、その部屋に女を連れ込んで遊ぶやつが多かったね。

みんなバカだからモーニングコールが鳴る朝10時より前に女の子を帰せばいいだろうってなるから、そのくらいの時間帯はエレベーター前でそういう子たちの渋滞が起こる(笑)。一回、外国人の女の人がいたこともあったな~。

――奔放すぎる!

それとプロ野球の遠征って、宿泊先のフロアをチームで全部貸し切ってるから、その日着たユニフォームとか部屋の前に置いとくと、係の人が回収してくれる。それで翌日、キレイに洗濯して選手別に袋に入れてまとめておいてくれるんだよ。

それがある大阪遠征のとき、洗濯物の中に赤いブラジャーがあって。「誰だ、女の下着まで球団にクリーニングさせてるやつは」って、ちょっと騒ぎになった(笑)。

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1980年代で唯一マジメだった選手は…?

――愛甲さんも横浜高校時代は甲子園のアイドル。プロになっても相当モテたのでは?

まぁ、プロ野球選手だから地方でそれなりに遊んだは遊んだよね。

当時は携帯がなくて、連絡を取り合おうとしたら家の電話か、遠征先だと女の子がフロントに預けた手紙を読むしかなかった。

それで、これも大阪遠征での話なんだけど、宿泊先のフロントで部屋の鍵をもらおうとしたら、大阪の女と金沢の女からそれぞれ「◯◯ホテルに部屋を取ったから遊びにきて」ってメッセージがあって……。同じホテルじゃねえかって。

――修羅場じゃないですか!

3連戦のある3日間、2つの部屋を行き来するしかないよね。しかも、同じ日に大阪の女の部屋で過ごしたあとに「もう門限だから部屋戻るわ」って言って、金沢の女のほうに行くって感じで。

――夜のダブルヘッダー(笑)。逆に1980年代で遊ばない野球選手っていたんですか?

それは村田兆治さんだね。堅物で野球のことしか知らないから、飲みや食事には行ってたけど女関係は聞いたことないね。だってそもそもモテないもん。全部野球の話になっちゃうから(笑)。

――ストイックですね。

ただ麻雀は大好き。投げた日は興奮してなかなか寝れないから、遠征のときは必ず朝まで麻雀をやる。それに付き合うのがトレーナーとコーチ。

でも村田さんってまっすぐな人だから、麻雀があんまり上手くなくって。俺がたまたま見てたときなんて、下家でアガった池さんにイライラした村田さんが麻雀牌を掴んだ手で思いっきり殴ってさ。次の局でまた池さんがアガったら今度は牌を投げつけて。みんなとんでもなく自分勝手で、やばい世界に入っちゃったって思ったね。

――昭和プロ野球界、すごいです!

#2へつづく

愛甲猛●1962年8月15日生まれ。神奈川県逗子市出身の元プロ野球選手。左投左打。1980年には夏の甲子園でエースとして優勝を果たす。同年ロッテオリオンズに入団、1995年オフに中日ドラゴンズへ無償トレード移籍。2000年に引退後は野球解説者、俳優として活動。現在、YouTubeチャンネル『愛甲猛の野良犬チャンネル』を運営中。

取材・文/武松佑季 撮影/村上庄吾