リモートワークを通して見えた女性のキャリアの壁。石倉 秀明さんが“女性の課題解決”に挑む理由とは?

D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)が重要視される現代において、女性の課題解決に積極的に取り組む男性がいます。メンバーのほとんどがフルリモートの会社というキャスターの元取締役であり、現在は山田進太郎D&I財団のCOOを務める石倉秀明さんです。石倉さんご自身のキャリアを振り返りながら、女性の課題に深く関わる理由について、パラナビ編集長の岡部が聞きました。

キャスターでの経験から生まれた、社会構造への問題意識

岡部 まずは、キャスター時代の経験から伺いたいと思います。石倉さんは以前、メンバーのほとんどがフルリモートの会社であるキャスターの取締役を務められていましたね。

石倉 はい、キャスターでは約8年間取締役を務めました。社員の9割以上が女性という環境で、多くの女性がリモートワークを希望する背景には、結婚や出産、夫の転勤などの理由があることを実感しました。

岡部 具体的にどのようなケースを通じて、リモートワークが女性のキャリアにとって重要な選択肢であると感じましたか?

石倉 たとえば、結婚後にパートナーの転勤で仕事を辞めざるを得なかったり、出産後にフルタイム勤務が難しくなったりする女性が多いですよね。転職のたびに雇用形態が非正規にシフトしてしまうケースもあります。こうした状況は、多くの女性にとって深刻な問題です。働く意思があるのに、環境が整わないためにキャリアを継続できないケースが後を絶ちません。

岡部 なるほど、単なる業務効率の問題ではなく、社会構造の問題として捉えられたわけですね。

石倉 そうですね。たとえば、生理や体調不良など、女性特有の健康課題もあります。こうした事情があるにもかかわらず、従来の制度は「男性中心・フルタイム勤務」を前提に作られているんです。

岡部 日本社会に根付くこの構造的な問題は、どこから生じていると考えていますか?

石倉 歴史的に、日本の企業文化は「終身雇用」と「年功序列」の2つを基盤にして発展してきました。この仕組みのもとでは、長時間働くことが評価され、育児や家庭と両立しながら短時間で成果を出す働き方が想定されていませんでした。とくに女性は、ライフイベントに伴って仕事の継続が難しくなる場面が多く、結果としてキャリアの選択肢が狭まってしまうのです。

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問題に気づいた以上“何もしない”という選択肢はなかった

岡部 石倉さんは、そうした制度の歪みに気づいたとき、どのように感じられましたか?

石倉 正直、僕自身が「加害者側」だったと自覚しました。企業の制度設計をしてきた側として、これまでの働き方の前提が男性向けに作られていることに気づいたんです。

岡部 「加害者側」という表現は強いですね。

石倉 でも、実際に制度を作ってきた立場として、女性が不利になる仕組みを放置していたことは事実です。そこに気づいた以上、“何もしない”という選択肢はありませんでした。気づいたのであれば、その問題を是正するために行動しなければならないと思いました。

岡部 その問題意識が、現在の財団での活動につながっているわけですね。

石倉 そうです。キャスター時代はリモートワークという形で「構造をハック」することで問題を緩和してきましたが、本質的には構造自体を変えないと根本的な解決にはなりません。

岡部 だからこそ、財団という非営利の形で取り組むことを選ばれたのですね。

石倉 そうですね。営利企業では、どうしても利益を優先せざるを得ません。でも、D&Iの課題は短期的な利益とは相反することも多い。だからこそ、財団として長期的に取り組むことに意味があると考えました。