Credit: Colossal Biosciences – Scientists Have Bred Woolly Mice on Their Journey to Bring Back the Mammoth(2025)
絶滅はふつう、不可逆的なものです。
ある生物種が地上から姿を消すと、その存在は化石記録の中にのみ残されます。
しかしマンモスに関しては、この暗黙の了解が覆されようとしているのです。
マンモスは恐竜などに比べて新しい生物であり、DNAが数多く見つかっていることから、復活のための実験が進められてきました。
そしてこのほど、米コロッサル・バイオサイエンス(Colossal Biosciences)の研究チームが、最先端の遺伝子編集技術を用い、マンモス特有の長くて厚い体毛を持ったマウスを誕生させることに成功したのです。
これはマンモス復活に向けての大きな前進であり、チームは最短で2028年頃のマンモス作成を計画しています。
研究の詳細は2025年3月4日付で生物学のプレプリントサーバ『bioRxiv』に公開されました。
目次
マンモス復活の未来は近い?マウスに「マンモスの毛」を生やすことに成功!
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マンモス復活の未来は近い?
マンモスは約400万〜1万年前の氷河期にかけて存在した大型哺乳類です。
また北極海のウランゲリ島には約4000年前までマンモスがいたとされています。
6600万年前に絶滅した恐竜に比べると、マンモスはつい最近まで実在していたように感じるでしょう。
マンモスは厚い毛皮と優れた脂肪代謝を持ち、寒さの厳しい氷河期の環境でも生きることができた素晴らしい生物でした。
ところが氷河期の終わりの気候変動や人類の狩猟圧によって次第に数を減らし、最終的には絶滅へと至っています。
Credit: canva
しかしマンモスは厳寒の北極圏に暮らしていたことから、遺体の多くが永久凍土の下に埋もれて保存されました。
そのため、科学者たちにとっては幸運なことに、DNA断片を含むマンモスの遺骸が数多く回収されているのです。
これは絶滅種を復活させるプロジェクトにおいて、マンモスが最適な材料を持っていることを示しています。
今日までの研究ですでに、マンモスのDNAは現存するアジアゾウと約99.6%一致しており、遺伝子編集技術を駆使すれば、アジアゾウを代理母としてマンモスを再び誕生させることが理論的に可能だと報告されているのです。
その一方で、課題も山積しています。
これまでの研究で得られたマンモスの遺伝子が正しく発現するかどうかは、実際にアジアゾウの胚にマンモスの遺伝子を挿入して、どのような個体が誕生するのか観察するのが一番です。
しかしアジアゾウの妊娠期間は22カ月と長く、絶滅危惧種にも指定されているため、そう簡単に遺伝子編集の実験には使えません。
そこで登場するのが「マウス」です。
マウスの妊娠期間はわずか20日と短いため、胚から成体までのサイクルが非常に速く、遺伝子編集の結果をいち早く知るには最適となります。
これらを踏まえて、研究チームは今回、マウスに「マンモス特有の長くて厚い体毛」を生やすための遺伝子編集実験を敢行しました。