
民主主義の基本
「(万博では)世界と未来をその場で見られる。情報化社会の今、なぜ多くの人が観光に行くのか。みんな『リアル』を見たいからだ。海外に行くにはお金がかかるが、万博ならパスポートなしで各国が考えていることの一端を知ることができる。
世界を知ることはものすごく大事だ。約80年前の不幸な戦争は、世界を知らない国民が当時の政府を熱狂的に支持して起きた」
「自分たちはどれだけの力があり、どこに向かっているかをよく理解して投票し、世論をつくる必要がある。重要なことの決定を間違えないよう、一人ひとりの国民が自分の考えをつくるのは民主主義の基本。ポピュリズムの世界になり、判断を誤ってほしくない。そのために役立つイベントにしたい」
一方、万博が成功したかどうかを判断する指標について2024年12月のインタビューで尋ねると、こう答えた。
「想定来場者の2820万人は、(この人数を)想定して準備しましょうということで、その数が目標になっているわけではない。むしろ重要なのは、この万博の意義である、世界を見せ、未来を見せ、(出展者たちが)未来をこういうふうに考えているんだということを来場者に理解してもらうことだ」
「参加国の方々が、自分たちが表現した私の国はこうです、私の考える未来はこうですということを十分表現できた、来場者に伝わったと思える、そういう満足度が達成されるかが重要。(展示をする)企業などの参加者ももちろんそう。
来場者も勉強になったなあ、将来こういうふうにしたいなと思う形になっていくとか、相対的なものだ。ひとつひとつの指標をとって、達成した、しなかったと測るものではない」
「ただ、収支については、赤字になって(国や大阪府・大阪市などの)ステークホルダー(利害関係者)が困ることにならないようにしなければいけない。その思いで、一生懸命チケットを販売し、(万博グッズの販売などから入る)ロイヤルティーも頑張ってもらっている」
写真/shutterstock
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『ルポ 大阪 関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新聞出版)
朝日新聞取材班
2025年2月13日924円(税込)272ページISBN: 978-4022953001
大阪・関西万博が2025年4月、ついに開幕する。各国パビリオンでの展示のほか、有名歌手のコンサート、大相撲、花火大会などさまざまな催しがあり、お祭りムードが醸成されるだろう。
しかし、本当にそれでいいのだろうか。会場予定地での爆発騒ぎや、建設費の2度の上ぶれ、パビリオン建設の遅れなど、問題が噴出し続けた。
巨額の公費をつぎ込んだからには、成果は厳しく問われるべきだ。朝日新聞取材班が万博の深層に迫った渾身のルポ。
◆目次◆
第1章 維新混迷
第2章 膨らみ続けた経費
第3章 海外パビリオン騒動
第4章 夢洲が招いた危機
第5章 万博への直言