
『パラサイト 半地下の家族』(19)で、第72回カンヌ国際映画祭では韓国映画初となるパルム・ドールを受賞、第92回アカデミー賞では作品賞を含む6部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞したポン・ジュノ。彼の最新作にして集大成『ミッキー17』(3月28日公開)より、ロバート・パティンソン演じるミッキーが”クリーパー”に出会う本編映像と、ジュノ監督のインタビューが到着した。
【写真を見る】謎のモンスター”クリーパー”を創造するなかで参考にされたジブリ作品とは / [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
ロンドンでのワールドプレミア、ベルリン国際映画祭で一足早くお披露目され、世界有数のメディアから絶賛を受ける本作。全世界に先駆けて公開された韓国では公開からわずか4日間で観客動員数が100万人を突破、3月7日(金)からは全米でも公開され、オープニング1位を記録。全米及び世界各国でのオープニングを合わせて、早くも世界興行収入が4500万ドルを突破する快進撃を続けている(Box Office Mojo調べ)。
解禁となったのは、落下事故に遭ったミッキーがクリーパーに引きずられ、絶体絶命に陥る衝撃の本編映像。「ここはどこだ?なにが起きた? なぜ俺を食べない?気絶してたのに…」と戸惑うミッキーは、自分を引きずる大きなクリーパーの背中を見つめる。「そうか、子どもに食べさせる気だな。優しいママだ」とクリーパーの心中を読もうとするミッキーに、小さなクリーパー近寄ってくる。顔中をなめられ、手袋をくわえられたミッキーは、観念したかのように目をつむると「早いとこ終わらせてくれ、ほらガブリとかじれよ」と覚悟を決める。だが、クリーパーは一向に食らいつくそぶりを見せずにどんどん進んで行く。「どこに連れて行くんだ?」と困惑するミッキーを、大クリーパーが尻尾を巧みに使って引き上げると、中小のクリーパーが総かがりで雪原に押しだす。ミッキーは「リプリントされた肉はまずいか?おい、俺はおいしいぞ、新鮮な肉だ、味は保証する」と叫ぶ。すると、大中小と3種類の大きさの異なるクリーパーがそろってミッキーを見つめ…。
そして、本日3月17日は公開まで残すところあとわずかの「ミッキー”17”の日」ということで、“謎のモンスター”が登場する本編映像の初解禁に合わせジュノ監督が日本だけの取材に応じた特別コメントが到着。
劇中で“クリーパー”と呼ばれる謎のモンスターは、その見た目から『風の谷のナウシカ』(84)に登場する“王蟲(オ-ム)”を彷彿させる。宮崎駿監督からの影響についてジュノ監督に直撃すると、「『Okja/オクジャ』のときも、主人公のミジャがオクジャのお腹の上で昼寝をするシーンがありましたが、あれはまさに『となりのトトロ』からインスピレーションを受けたシーンでした」と前置きし、「クリーパーはもう少し複雑で、様々なインスピレーションが混在しています。デザインそのものは、クロワッサンから着想を得たもので、パンが出発点です。動きに関しては、様々なアイディアが組み合わさっています」と続ける。
「クリーパーは三種類ですが、ジュニアクリーパー、ベイビークリーパー、そして女王蜂のように一匹だけのママクリーパーがいます」と、大中小3種類存在すると説明する。「ジュニアクリーパーがボールのように丸まっていく動きが登場します。それはアルマジロを参考にしています。出来上がったものを見て、ダンゴムシのようだと言う方もいましたが…」と微笑むと、宮崎監督作の「『風の谷のナウシカ』で王蟲が群れになって突進するシーンも、インスピレーションの源だったと言えます」と告白。
さらに、「クリーパーが群れになって絡み合う姿は、アラスカのトナカイの動きのパターンがモチーフとなっています。動物ドキュメンタリーを観ると出てきます。サークルの中心部分に子どものトナカイを置いて、群れが時計の反対周りにらせん状を描いていく荘厳でスペクタクルな映像があります」と、クリーパーが宮崎監督作品のみならず、食べ物から、動物まで、ありとあらゆるものからインスピレーションを受けて完成したキャラクターだと語った。
そして「宮崎駿監督はいつも生態系や自然、環境に対するテーマを描かれていますが、私も大きな関心を持っているテーマですので、動物やクリーチャーを表現する際には、宮崎駿監督の作品は尽きないインスピレーションの源になっていると思います」と、宮崎監督の表現には常に影響を受け続けていると語っている。
さらにロンドンで行われたワールドプレミアで主演のパティンンがアニメを参考にしてミッキーの役作りを進めたと語ったことについて、「ロバート・パティンソンはアニメをたくさん観ているようで、マニアックな性格ですね」と笑いながら、クリーパーのアクションについて教えてくれた。「先ほど3つのクリーパーについてお話しましたが、その中でアクションを担当しているのは、ダイナミックに飛び跳ねながらアルマジロのように群れになって動くジュニアクリーパーです。すべてのクリーパーが、ウルレーションと呼ばれる直立して鳴き声を発する姿を見ると、多くの脚があることが分かります。複数の脚を持つ生物は、走るときにとても不思議な動きをします。リズムが妙なんです。専門用語ではウォークサイクルといいますが、これを作るのが、クリーチャーを表現する上で最も重要な基本です。ジュニアクリーパーが勢いよく走るとき、ウォークサイクルをどうするべきか。短い脚がいくつもあって、それらを走らせなければなりません。レファレンス先を探しているなか、CGチームのほうから『となりのトトロ』に出てくるネコバスのアイディアが出ました。あのネコは足が4本ではなく、何本もあるんです。『となりのトトロ』ではその足が絶妙なリズムで動く様子が見事に描写されています」と、『ミッキー17』のCGチームは、全世界で愛される『となりのトトロ』を参考にクリーパーの造形、そしてその独特の動きを作り上げたと語っている。
身勝手な権力者によって、何度も死に続けることになるミッキーの逆襲を描く / [c] 2025 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
これまで、予告映像にもその姿は映しだされていたものの、謎に包まれ続けていた謎のモンスター”クリーパー”、ミッキーの前に突如として現れる彼らの目的とは?スタジオジブリ作品多大なる影響を受けた、クリーパーの姿はもちろん、彼らがミッキーの逆襲にどのように関わってくるのか、ぜひ注目して観たいところ。
人生失敗だらけのミッキーは、何度でも生まれ変われる夢の仕事を手に入れた──はずだった。しかしそれは、身勝手な権力者たちの過酷すぎる業務命令で次々と死んでは生き返る任務、まさに究極の“死にゲー”だった。使い捨てワーカーvs強欲なブラック企業のトップが織り成す逆襲エンタテイメントがまもなく開幕する。
文/サンクレイオ翼