東大卒アイドルだった私が、最年少26歳で渋谷区議会議員になった理由。「東大の恥」など誹謗中傷も。

一つひとつの積み重ねが未来を変える

──その後、26歳の最年少で渋谷区の区議会議員選挙に初当選されました。アイドル出身が政治家になるという前例のない挑戦を、色眼鏡で見てくる人も多かったのではないですか?

そうですね。アイドル出身というだけで、真剣な想いがあっても「チャラチャラしている」「媚びている」など言われました。当選してからも「若くてアイドルだから当選できたんだよね」と、マイナスの評価を受け続ける状態でした。

──それはつらいですね……。どのように乗り越えたのですか?

マイナスの評価をそのままに受け取りたくはないので、その評価をなんとしても覆そうと。私がここでくじけてしまうと、若者が政治に参画する必要性を痛感した経験や、メンバーの輝く姿を見て受けた衝撃、感動が無かったものになってしまいます。私は政治活動の軸を再確認しながら、小さなことから積み重ねていき、市民の皆さまに信頼していただける活動をしようと心に誓いました。

──その誓いのとおり、橋本さんは1期目で100以上の政策を議会に提案。そのうち50もの施策を実現されました。まさに有言実行ですね。

具体的には、以下のような政策の実現に力を尽くしました。

●行政手続きをオンライン化、AI導入による作業効率の向上
●すべての避難所に大容量のバッテリーを整備。災害時もスマホの充電ができる体制を整備
●性別に依らず相談できるIPV(親密なパートナー間の暴力)・DVに対応する相談窓口を開設
●若い世代が環境政策を議論する「シブヤ若者気候変動会議」の設置
●渋谷区独自の不妊治療支援を実現させ、治療開始日が43歳未満の区民の金銭的負担を軽減

政治家って経験と時間を重ねていかないと発言力が得られない、政策実現できないとよく思われがちです。でも、民間企業ではたらいたことがない、前職はアイドルだった私が26歳で最年少の渋谷区の区議会議員になり、1期目でこれだけの政策を推し進めてきた。

この議員活動に関して積極的にSNSなどを通じて発信していく中で、若い政治家が増えたという事実は、私が社会に対して影響力を持って貢献できたことの一つなのかなと実感しています。前回の統一地方選挙前も、「政治家になりたい」という20代の方からの相談がすごく多かったんですよ。

──すごいですね。発信する際に意識されていることはありますか?

日々の等身大の発信を心がけています。最近、政治の分野でも派手なパフォーマンスや物言いで注目を集める手法が増えています。でも、私はそれには乗りたくないです。現実との乖離を強く感じているので、つまらなくてもいいから「ありのまま」を伝えることを忘れないようにしています。


※2024年末、インフルエンザ急増で渋谷区の救急外来がパンク。橋本さんはSNSで状況を知り、迅速に病院へ対応を呼びかけた 

──1期目の4年間を経て、2期目へと突入された今、周りにいる方や区民からの評価に変化はありますか?

確実に変わってきていますね。最初は周りの方から「アイドル議員」と言われることが多かったのですが、今では多くの方が「優秀な『議員』さんです」と紹介してくださるようになりました。渋谷区長になりたいと公言しているので、区民の方からも「ぜひ区長になってください!」と応援していただく機会も増えてきて。こうしたポジティブな評価をいただくと、期待に応えられる自分でいようと一層頑張る力が湧いてきます。

──渋谷区長になって実現したいことを教えてください。

区サービスのアップデートやバリアフリー社会の実現、スタートアップ支援など、今取り組んでいることをさらに強化していきたいです。

中でも、渋谷区のポテンシャルを活かして、「渋谷ならではの豊かさ」をもっと外に出していきたいですね。都市に住む主な理由に「仕事へのアクセスが良いから」などが挙げられると思うのですが、リモートワークが当たり前になったら渋谷を選ばなくなってしまう状態はあまりにも悲しいなと。

音楽やアートなど渋谷には「ならでは」のカルチャーがたくさんあることを、アイドルで渋谷中のライブハウスをまわっていた私自身も感じています。だから、街に路上アーティストがいて、当たり前にカルチャーに触れられる海外の都市のように、オープンスペースを活用しながら渋谷での生活をさらに豊かにしていきたい。そしてそこからコミュニティなどが生まれて、愛着が湧いて……と、「渋谷の人や経験が好きだから住み続けたい」と思ってもらえる街づくりに尽力していきます。

渋谷区は日本で初めてパートナーシップ制度を導入した自治体なんですよ。何かを変えようとするとき、最初の一歩を踏み出し、影響を与えられる街だと確信しています。

一人ひとりが自分の幸せを自分で選び、実現できる社会を目指して「公平性」も大切にしながら、渋谷区長に就任できたあかつきには、渋谷区から社会を変えていく所存です。

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「できない理由」を考えてしまうあなたへ

──ご自身のキャリアを振り返ってみて、“はたらくこと”についてどう思われますか?

私は政治家になった今でも、「アイドルをやっていて良かった」と思っています。最初の職業としてアイドルを選んでいなかったら、今のようにタフではなかったし、コミュニケーションや発信もうまくできていなかっただろうなと。

これまで頑張ってきたこと、はたらいてきた経験は絶対に今後に活きると身をもって実感しているので、これからも突拍子もない挑戦でも恐れずにやっていきたいですね。自分がやってきたことに自信を持って歩みを進めていきます。

──最後に、変わりたいと思いつつも一歩を踏み出せない人にメッセージをお願いします。

小さくてもいいので、自分ができることから取り組んでみてはどうでしょうか?そうすれば、新しい出会いやきっかけが広がり、もう少しだけできることが増えていきます。それを繰り返していくうちに、自分が思い描いてきたことに近づいていくと思うんです。

最初から理想に到達できなくても、私は「求めていたのは100だったのに、実際は10しか達成できなかった」と悲観するのではなく、少しでも前進している事実に目を向けて、「ここからまた一歩ずつ進んでいこう」と考えるようにしています。あきらめずに理想を追い求めていけば、あなたも必ず理想に近づけるはずです。

(文:平谷 愛 編集:おのまり・いしかわ ゆき 写真:目次ほたる)