Credit: University of Auckland – Sharks… even more amazing than you realised(2025)

予想外の驚くべき光景が目撃されました。

ニュージーランド・オークランド大学(University of Auckland)の研究チームはこのほど、同国の近海でサメの背中に乗っかって移動するタコの姿が撮影されたと報告したのです。

しかもタコが乗っていたのは、世界最速のサメとして知られる「アオザメ」でした。

研究者らはこのサメとタコの意外な組み合わせをB級映画にちなんで「シャークトパス(sharktopus)」と呼んでいます。

しかしなぜタコはアオザメの背中に乗っていたのでしょうか?

目次

サメの背にのるタコを発見!なぜタコはアオザメに乗っていたのか?

サメの背にのるタコを発見!

この異様な光景は2023年12月、ニュージーランド北島の沿岸部にあるハウラキ湾(Hauraki Gulf)での生態調査中に発見されました。

研究チームは金属味を帯びた灰色のサメ1頭が水面に現れたのを確認。

その姿形からネズミザメ目の一種「アオザメ(学名:Isurus oxyrinchus )」であることがわかりました。

アオザメは最大全長4メートル45センチ、体重も500キロを超えます。

しかし彼らの最大の特徴は、世界最速のサメであることです。

アオザメは時速50〜80キロで遊泳することができ、瞬間的には時速100キロを出すことも可能だといわれています。


アオザメ/ Credit: ja.wikipedia

ところがチームはすぐにアオザメの姿に違和感を感じました。

頭から背中の辺りに何やらオレンジ色の物体がくっついていたのです。

最初はブイが絡まっているか、ケガをしているのだと思いましたが、ドローンを飛ばし、水中カメラも使って撮影したところ、何とその正体はタコであることが判明したのです。

実際の様子がこちら。(元動画は記事最後に添付してあります)


アオザメの背中にのるタコ/ Credit: University of Auckland – Website video repository(youtube, 2025)

研究者らはこの光景に驚きを隠せませんでした。

というのもアオザメとタコは同じ海に住んでこそいるものの、普段の生活エリアがまったく違っているからです。

アオザメは外洋性であり、広い水中を悠々自適に泳ぐ生活をしているのに対し、タコは海底にとどまって地面密着型の生活をしています。

それにも関わらず、このタコは何食わぬ顔でアオザメの背に乗って移動していたのです。

サメの方もタコを気にするそぶりも見せず、マイペースに泳いでいました。

ただしタコはすべての脚を小さくまとめて目立たないようにし、しっかりとサメに吸着していたようです。

これはおそらく、アオザメが本気を出して泳ぐと、タコがすぐに振り落とされてしまうからだと考えられます。

なぜタコがアオザメの背中に乗っていたのかはわかりませんが、研究者らはそれに至ったいくつかの仮説を述べています。

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なぜタコはアオザメに乗っていたのか?

メルヘンチックな理由を想像するなら、このアオザメとタコがお互いに厚い友情で結ばれており、サメが友達のタコを背中に乗せて運んであげていたのだと思いたいところです。

しかし現実的に考えると、それはなかなかありそうもないことでしょう。

一般的にサメとタコとは”食う・食われる”の関係でしかないからです。

その中でチームはタコがサメの背に乗った経緯について、次の仮説をあげています。

最も有力なのは「捕食からの回避」です。

タコが水中を漂っていた際に運悪くアオザメが襲ってきて、それを間一髪かわした可能性があります。

そして普通に泳いで逃げるのは分が悪いので、タコが機転を効かしてサメの背中にくっついて身を潜めたのかもしれません。

背中の上ならサメの鋭い牙が届くこともないでしょう。


Credit: University of Auckland – Sharks… even more amazing than you realised(2025)

もう一つは「偶然の接触」です。

タコがたまたま強い波や水流に押し流されて、そこを通りかかったアオザメの背中につかまり、そのまましがみついていた可能性もあります。

いずれの仮説が正しいのかは定かでありませんが、このアオザメとタコはその後、ゆっくりと水中に潜っていって姿を消したそうです。

研究主任のロシェル・コンスタンティン(Rochelle Constantine)氏は今回の不思議な光景について、こう話しています。

「海洋科学者として最高の瞬間のひとつは、“次に何を目にするか分からない”ということなんです。

こうした特別な瞬間を未来にも残していくために、私たちは保全活動を支援し続けなければなりません」

参考文献

Octopus spotted riding on top of world’s fastest shark
https://www.livescience.com/animals/sharks/octopus-spotted-riding-on-top-of-worlds-fastest-shark

Sharks… even more amazing than you realised
https://www.auckland.ac.nz/en/news/2025/03/11/sharks-.html

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部