
1年ほど旅を続けた後、好奇心が摩耗したようになり、何を見ても何を食べても感動しなくなったことがあります。
旅人の間では「旅鬱」と呼ぶらしい。
カンボジアに滞在中、1週間ほどホテルに籠り、その後、気分を変えようとインドに渡りますが、それでも変わりません。
旅を切り上げることに。
ふと帰国前に好物の麻婆豆腐を食べたいなぁと思いました。
麻婆豆腐発祥の地は、中国の四川省にある成都。
100年ほど前、この街で麻(天然痘跡)のある婆(おばさん)が作る羊肉と豆腐を使った料理が話題になり、彼女の死後、麻婆豆腐と呼ばれるようになったらしい。
私はインドから中国は成都に向かい、
ホテルに荷物を置くと、すぐ隣の食堂に入り、麻婆豆腐を頼みました。
料理の上にまぶした花椒に、ひーひー言いながらも、どんどん楽しくなっていきます。
その後、成都にあるパンダの研究所に向かい、
長距離列車の旅計画まで思いつくなど、
意欲がわきはじめました。
どうやら旅鬱から抜け出したらしい。
この旅からでしょうか。
時には食べ物目的から作る旅を考えるようになったのです。<text:イシコ>