「ロックオン」という言葉は、ロボットアニメや空戦を描く映画などでおなじみでしょう。しかし実際のところ、どのようなことが行われているのでしょうか。現実での事例を解説します。



ロックオン・ストラトスは兄弟ともに三木眞一郎さんが演じた。「機動戦士ガンダム00 Voice Actor Single 三木眞一郎 come across ロックオン・ストラトス 『永遠の螺旋』」(FlyingDog)

【画像】こちらがロックオンをロックオンしていた(はずの)お嬢さんです

そもそも「ロックオン」にもいろいろあって

「ガンダム」シリーズや「マクロス」シリーズ、さらには映画『トップガン』など、ロボットや戦闘機を題材とした作品において、「ロックオン」という言葉は頻繁に登場します。この言葉は、時に「ロックオン・ストラトス」(『機動戦士ガンダム00』)のように主要登場人物のコードネームとして用いられることもあり、あたかも標的に対する絶対的な優位性を確立する魔法の言葉のように響きます。では、実際の軍事技術において「ロックオン」とはどのような行為を指すのでしょうか。

 おおよそロックオン・ストラトスの「狙い撃つぜ!」という決めゼリフが示唆するように、ロックオンとは目標を「追尾」し、その情報を継続的に収集、更新する行為を指します。例えば、レーダーによるロックオンでは、目標に対して電波を照射し続け、その反射波を解析することで、標的の位置、速度、進行方向などの情報をリアルタイムで取得します。

 この「リアルタイムな情報収集」こそがロックオンの核心です。ミサイル誘導や砲撃の照準においては、標的の現在位置のみならず、未来の位置を予測する必要があります。そのためには、目標の動きを精確に把握し、常に最新の情報を基に計算を繰り返さなければなりません。ロックオンは、こうした一連のプロセスの根幹を成すものなのです。

 ロックオンの手法は多岐にわたります。もっとも一般的なのはレーダーによるロックオンで、ほかにも赤外線センサーや光学センサーを用いた手法などが存在します。さらには、人間の目によって標的を凝視し続けることも、広義のロックオンと解釈できるでしょう。

 レーダーロックオンは、電波を用いるため天候や昼夜を問わず運用可能であり、距離や方位を極めて精確に測定できます。しかし、電波を発信する性質上、逆探知されるリスクがともないます。これに対し、赤外線ロックオンや光学ロックオンは電波を発しないため、標的に察知されにくいという利点がある一方、距離情報の取得が困難という欠点を持っています。

 このため、現代の軍事技術では単一のセンサーに依存せず、複数のセンサーを統合した複合センサーシステムが主流となっています。レーダー、赤外線、光学センサーを組み合わせることで、それぞれの弱点を補完し、より精確で信頼性の高い標的情報を得ることが可能となるのです。加えて、コンピューターによる情報処理技術の発展により、これらは自動で情報収集を行い、パイロットはセンサー操作に煩わされることなく、戦術判断や決断といった人間にしかできない領域に集中できるようになっています。

 ロックオンは通常、攻撃の最終段階で行われるものであり、平時に実施されることは稀です。特にレーダーロックオンは、標的側に攻撃の意図を伝達するという意味合いも多分に含まれるため、緊張を一気に高める要因となります。実際、2018年に発生した韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊P-1哨戒機へのレーダー照射事件では、ロックオンが日韓間の外交摩擦へと発展する契機となりました。この事例は、ロックオンが技術的な行為にとどまらず、軍事的、政治的な意味を持つものであることを示しているといえます。