
「Lemino ROBOT 短編映画コンペ IN泉佐野フィルムフェス2025」表彰式が3月23日、大阪府泉佐野市のエブノ泉の森ホールで行われ、グランプリを『ミヌとりえ』の全辰隆(チョン・ジニュン)監督(35)、審査員特別賞を『ボウル ミーツ ガール』の関駿太監督(23)が受賞した。

同コンペは、NTTドコモが提供する動画配信サービス「Lemino」と制作会社「ROBOT」が共催。2021年1月1日以降に完成した60分以内の短編作品が対象だが、計462作品の応募があり、10本作品が入選。犬童一心監督、内田英治監督、耶雲哉治監督が審査に当たった。

グランプリに輝いた『ミヌとりえ』(26分)は、亡くなった祖父が残した手紙を携え、韓国の群山という町にやって来た日本人のりえとゲストハウスのオーナーである韓国人の青年ミヌの交流を描く。
全監督は秋田出身の在日韓国人3世。秋田高校を卒業後、韓国語と韓国の文化を学ぶため渡韓し、ソウル大学時代に映画制作を始め、その後、韓国芸術総合学校へ進学し、映画演出を専攻した。現在は東京在住。本作は22年から映画祭に出品し、ジャパンワールド映画祭 2022グランプリをはじめ、多数の賞に輝いており、近く商業監督デビューも決まっている。
全監督は「この映画はコロナ禍で撮りました。国を越えての交流が困難になった時でも、人々は交流していかなきゃいけないんじゃないかと思って作りました。僕は映画を作るよりも、観るのが好きで、性別、年齢、国籍を超えていく姿に感動します。それが映画の力。今、世界の分断が進んでいますが、映画をいっぱい観てもらえれば、距離が縮まっていくと思います」と喜んだ。

関駿太監督の日本大学芸術学部の卒業制作作品『ボウル ミーツ ガール』(23分)はボウリングのボウルを投げられない内気な少女・アズミの成長物語。関監督は「本当にうれしいです。仲間に報告して、みんなでご飯を食べて、喜びを分かち合いたい」と笑顔を見せた。内田監督は「すぐに商業映画を撮れるのではないかという実力を感じました。主演の瀬戸璃子さんも賞をあげたいくらい素晴らしい。その演技を引き出した関監督を評価させていただきました」と語った。
犬童監督は「過去3年間の新作を対象にしているので、すごくレベルが高かった。この2本に絞るまでは早く決まったのですが、グランプリは悩みました。『ミヌとりえ』は日韓関係が離れていこうとする時に、その絆を留めようとする若者の小さな戦いを描いています。作家がテーマから作品を作ることは意外と少なく、その“声”の大きさを感じました。『ボウル ミーツ ガール』は個人的には一番好きな作品ですが、『ミヌとりえ』の力強さと比べると少し弱いかなと感じました」と総括した。

最後に同映画祭のプログラミング・ディレクターを務めたROBOTの丸山靖博氏が登壇し、「入選した10人の監督にはLeminoとROBOTとともに企画を進め、新しいエンタメを作りたいと思っています」と明らかにした。
「泉佐野フィルムフェス」は、2025年3月21日(金)から3月23日(日)まで開催。
取材・文 ・撮影 / 平辻哲也
イベント情報

「泉佐野フィルムフェス」
監督自ら制作秘話を語りながらのコメンタリー上映、声優や活弁士によるライブパフォーマンスなど、ここでしか味わえないエンタメ体験が盛りだくさんの、作り手と観客の“距離が一番近い”エンタメフェス。
【開催概要】
開催日:2025年3月21日(金)~23日(日)
会場:エブノ泉の森ホール(大ホール・マルチスペース)
主催:泉佐野フィルムフェス実行委員会
公式サイト izumisano-film