Credit: Maurilio Oliveira, Institute of Vertebrate Paleontology and Paleoanthropology, Chinese Academy of Sciences(2025)

化石は太古の生物の姿を留めるタイムカプセルであり、「ホントにこんな生き物が地球に実在したのか」といつも私たちをワクワクさせてくれます。

そして最近、中国で新たな翼竜の化石が発見されたようです。

中国・吉林大学(Jilin University)は、約1億6000万年前のジュラ紀にいた新種の翼竜を発見したと報告。

しかもそのほぼ全身の骨格が残されており、生前の特徴がかなり詳しく明らかにできました。

研究の詳細は2025年3月の科学雑誌『Anais da Academia Brasileira de Ciências』に掲載されています。

目次

翼竜は恐竜ではなく「空飛ぶ爬虫類」他のダーウィノプテルスとまったく違う⁈

翼竜は恐竜ではなく「空飛ぶ爬虫類」

翼竜と聞くと、「あ〜、空飛ぶ恐竜ね」と思う人が多いのではないでしょうか?

確かに恐竜と同じ時代に生きてはいましたが、正確にいうと、翼竜は恐竜ではありません。

翼竜は「空飛ぶ爬虫類」と呼ばれるように、実は爬虫類のグループに属していて、恐竜とは一線を画しています。

その種類は非常に多岐にわたり、サイズや種類、見た目もさまざまです。


見た目もサイズも様々な翼竜の世界/ Credit: ja.wikipedia

これまでの考古学的な調査によると、中国は”翼竜のホットスポット”であり、これまでに多くの翼竜化石が発掘されてきました。

とりわけ中国東北部・遼寧省にある地層では、約1億6000万年前のジュラ紀中期〜後期にかけての翼竜化石が多数出土しています。

中でも今回の研究対象となったダーウィノプテルス属(Darwinopterus)は、特に注目すべきグループです。

このグループの翼竜は、初期型と進化型の特徴を併せ持ち、「進化の過渡期」を示す貴重な存在として知られてきました。

これまでにダーウィノプテルス属としては3つの属と5種が報告されていましたが、今回発見された新種の個体はまたそれらとは異なる特徴を多く持ち合わせていたのです。

では、この新しい翼竜にはどのような秘密が隠されていたのでしょうか?

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他のダーウィノプテルスとまったく違う⁈

今回発見されたダーウィノプテルス属の新種は、中国科学院 古脊椎動物・古人類学研究所(IVPP)に保管されていた標本の中に隠されていました。

化石は灰緑色の頁岩(けつがん)の中に埋まっており、チームが新たに詳しく調べたところ、頭骨、頸椎、肩、翼、後肢など、ほぼ完全な全身の骨格が保存されていたのです。

その全身骨格から翼開長は約75センチと推定されています。


新種の骨格化石/ Credit: Cheng et al., Anais da Academia Brasileira de Ciências(2025)

また観察の結果、この個体には以下のような特異な特徴が見られました。

・とさか(前上顎稜)の背側縁が直線的で、側面が滑らか

・上顎に18本、下顎に14本の歯を持つ(ダーウィノプテルス属の他種より多い)

・翼指の第4節骨が第1節骨よりも短い(他種では同等の長さ以上)

さらに歯の形は小さな円錐形で中央がふくらみ、根元から先端にかけて色が濃くなるという、独特な構造をしていました。

以上のような特徴から、この化石標本はダーウィノプテルス属の新種であることが判明し、新たに「ダーウィノプテルス・カンポシ(Darwinopterus camposi)」と命名されています。


新種のイメージ/ Credit: Maurilio Oliveira, Institute of Vertebrate Paleontology and Paleoanthropology, Chinese Academy of Sciences(2025)

それから特に注目されたのが、頭部の骨の一部が癒合しておらず、それに対して翼の骨が完全に癒合していた点です。

通常、成体になると骨と骨のつなぎ目(縫合線)は消えて一体化します。

ところがこの個体では、頭部の骨(前上顎骨と前頭骨など)が癒合しておらず、これは“まだ成長途中”であることを示しているようにも見えます。

しかし同時に、肩甲骨と烏口骨がしっかりと癒合していたり、翼の骨の一部が完全に接合していたりすることから、すでに“成体”だったことも示唆されました。

このことから、翼竜においては骨の癒合が部位によって異なるタイミングで進行し、大人になってからも癒合が続く場合もあることが示されています。

この事実は、これまで信じられてきた「頭部の骨は大人になる前の早い段階で癒合する」という説に対し、大きな再考を促すものです。

今回発見されたダーウィノプテルス・カンポシは、翼竜の成長や進化について新たな視点を提供する貴重な化石となります。

この先、より多くの標本を調査し、骨の癒合のタイミングや順序を解明することで、翼竜の生活史や進化戦略がより明らかになるでしょう。

参考文献

New Pterosaur Species Discovered in China: Darwinopterus camposi
https://www.sci.news/paleontology/darwinopterus-camposi-13775.html

元論文

A new species of Darwinopterus (Wukongopteridae, Pterosauria) from western Liaoning provides some new information on the ontogeny of this clade
https://doi.org/10.1590/0001-3765202520240707

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部