マンガやアニメにおいて、連載中や放送中に騒動が巻き起こることは決して少なくありません。そのなかでも、よりにもよって最終話周辺で思いもよらぬ事態に見舞われ、後世に語り継がれることになった伝説のマンガがありました。



画像は石ノ森章太郎先生によるコミックス『サイボーグ009』第9巻(秋田書店)

【画像】え、鼻がめっちゃ縮んでる! こちらは『サイボーグ009』ジェットの最新の姿です(3枚)

真の最終話は幻に?

 SNSでの炎上が連日のように話題となる昨今ですが、SNSがなかった昭和にも炎上騒動になりかねない話題がいくつもありました。それはマンガ界隈も例外ではありません。今回は、よりにもよって最終話でひと騒動を起こした作品をご紹介します。

『8マン』

 1960年代に連載された『8マン』(原作:平井和正/作画:桑田次郎)は、ロボットの電子頭脳に人格と記憶を移植された刑事が「8マン」として難事件を解決するSFバトルアクションです。アニメ化もされるなど順風満帆でしたが、突然の打ち切りによって最終話を迎えます。

 なぜそのような事態になったかというと、作者の桑田次郎先生(現:桑田二郎)が銃刀法違反の疑いで逮捕されたことがきっかけです。急遽マンガの打ち切りが決まり、当時アシスタントを務めていた楠たかはる先生などを中心に最終回が代筆されました。その内容はなんとも切ないラストで、秘書に正体がバレてしまった主人公は、一度は事務所へ戻ろうとするものの、そのまま行方をくらましてしまうというものでした。

 ちなみに桑田先生本人が描き直したリライト版ものちに発表されています。ふたつの最終回は『8マン』のコミックス完全版に収録されているので、見比べて楽しむことも可能です。

『サイボーグ009』

『サイボーグ009』は、『仮面ライダー』の生みの親として知られる石ノ森章太郎先生が手掛けた作品です。さまざまな特殊能力を持つ9人のサイボーグ戦士の活躍を描き、国内外のSF作品に多大な影響を与えました。

 1964年に「週刊少年キング」(少年画報社)誌上に登場して以来、掲載誌を転々としながら50年以上にわたり連載されていますが、実は1966年に「週刊少年マガジン」(講談社)に掲載された「地下帝国ヨミ編」で一度、完結を迎えます。

 物語のラストで主人公の「009(ジョー)」は、秘密結社「黒い幽霊団(ブラックゴースト)」の首領との決戦を制しました。その際、ジョーは宇宙空間に放り出されてしまい、助けにきた「002(ジェット)」と一緒に大気圏へ猛スピードで落下します。それによって発生した熱で火だるまとなり、最後は流れ星のようにチリとなって消えました。

 あまりにも悲劇的なラストに、読者からは「ジョーを生き返らせて」との抗議が殺到したといいます。その結果、ふたりは生きていたことになり、連載も月刊誌「冒険王」(秋田書店)へと場を移して物語の続きが描かれました。

『ハレンチ学園』

 少年誌におけるお色気マンガの先駆けとなった『ハレンチ学園』(作:永井豪)は、内容もさることながら、最終話も伝説として語り継がれています。

 本作は「聖ハレンチ学園」を舞台に、変態すぎる教師と生徒の攻防が描かれたギャグマンガです。スカートめくりや風呂のノゾキ、女子の身体検査への突撃など、現代も続くお色気マンガの様式が多く詰め込まれています。

 しかし、こうした内容が過激すぎると全国のPTAからクレームが殺到し、作者の永井豪先生は自ら作品の打ち切りを決断します。終盤では、クレームを皮肉るように、物語は「大日本教育センター」と「聖ハレンチ学園」の争いへと発展しました。これまでの世界観が一転し、爆弾や戦車まで登場する大戦争はまさに地獄絵図としか言えません。

 なお作品自体の人気は高かったことから、のちに第2部の連載がスタートしました。2022年には『漫画家本スペシャル 永井豪本』の出版を記念して新作『新装開店ハレンチ学園』が発表されるなど、連載から50年以上経っても愛される作品となっています。