
リオネル・メッシであることは簡単ではない――。
出入国のためにパスポートを見せるだけでも、そこでさまざまな事件が巻き起こる。例えば2010年11月。メッシはブラジルとの親善試合を戦うために、アルゼンチン代表の一員として中立開催のホストだったカタールを訪れた。しかし数日後、メッシが激怒する事件が起こった。なんと彼のパスポートの写真がSNSに投稿されていたのだ。
犯人はカタールの空港職員であることが判明。彼は世界最高の選手のパスポートが自分の手の中にあるのが信じられず、まずは記念にと自分の携帯で写真を撮り、その後どうしても自慢したくなってSNSで世界の発信してしまったのだ。
これとまったく同じことが、2016年にも起こっている。
メッシがサッカー・アワードの授賞式出席のため、今度はドバイを訪れたのだが、またしても彼のパスポート画像が流出してしまった。この時はより悪質で、空港に着いたメッシに一緒に写真を撮ることを断られた警察官が(長旅で疲れているからとメッシは断ったらしい)、腹いせからかメッシのパスポートが映った動画を投稿してしまった。
そして「これはメッシのパスポート、今ドバイにいる。さてどうしよう。燃やしてしまうか、それとも入国させてやるか。まあ入国させてやるか」とコメント。動画にはメッシの証明写真やパスポートナンバーまでがばっちり写っていて、結局この警察官には禁固1か月の刑が下った。
今年2月、インテル・マイアミはホンジュラスで地元オリンピアと対戦した。メッシももちろん、チームと一緒に移動した。
この時のホンジュラスの空港職員は、メッシのパスポートを手にすると固まり、信じられないという感じに二度見。メッシ本人が目の前にいるという現実をなかなか受け入れられなかったようだ。
その職員が前述のパスポートチェックにまつわる逸話を知っていたのかはわからないが、とにかくプロフェッショナルな態度を保ち、冷静を装いながらパスポートをチェック。最後の最後にはどうしても我慢ができなくなったのか、勇気を出してサインを求め、メッシもそれに応じたという。ただ、その様子は一部始終、カメラに撮られていて世界に拡散されてしまった。
ちなみに、メッシ自身がやらかしたこともある。2023年に北京で行なわれた親善試合にアルゼンチン代表の一員として参加した時のことだ。メッシはスペインのパスポートで入国しようとしたが、必要な入国ビザを取得していなかったため、空港で足止めされた。以前、ビザなしで台湾に入国した経験があり、今回も不要だと思い込んでいたという。その際、空港職員に放った一言も話題を呼んだ。
「だって、台湾は中国の一部なんじゃないのかい?」
この発言は単なる無知から出たものだったが、結果的に「台湾は中国の固有の領土」と主張する中国政府の微妙な立場を突く形となってしまった。結局、メッシは2時間足止めされたものの、その後にビザを発給され、無事に入国を許可された。
取材・文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子
【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/1963年8月29日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身。ジャーナリストとし中東戦争やユーゴスラビア紛争などを現地取材した後、社会学としてサッカーを研究。スポーツジャーナリストに転身する。8か国語を操る語学力を駆使し、世界中を飛び回って現場を取材。多数のメディアで活躍する。FIFAの広報担当なども務め、ジーコやカフー、ドゥンガなどとの親交も厚い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授として大学で教鞭も執っている。
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