毎年何本も公開されるマンガの実写化作品では、本来ありえないはずのキャラを演じるために俳優が厳しい「肉体改造」をするケースも少なくありません。なかには危険な増量をした方もいました。



ドラマ『ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編』江渡貝と鶴見中尉が躍るカット (C)野田サトル/集英社 (C)2024 WOWOW

【画像】え…っ?「腹筋スゴイよ!カワイイよ!」 こちらが実写「江渡貝くぅん」ファッションショーの「きわどいショット」です

「死んでもいい」覚悟で作られた悪役の肉体

 見た目および性格も個性豊かなマンガのキャラクターを再現するため、実写化作品では俳優に過酷な肉体改造が求められるケースも少なくありません。『HK 変態仮面』(原作:あんど慶周)では、女性用パンティを被って戦う「変態仮面」の肉体を再現するために鈴木亮平さんがいったん15kg体重を増やして、そこから脂肪をそぎ落とすという過酷な方法でバキバキの筋肉を持つ主人公を演じました。そのほかにも、衝撃的なキャラクターを演じるために増量、減量をして、役に説得力を持たせ、絶賛を受けた俳優たちがいました。

 明治後期の北海道が舞台の人気マンガ『ゴールデンカムイ』(作:野田サトル)は、2024年1月の映画に続き、10月よりWOWOWでドラマ『ゴールデンカムイ 北海道刺青囚人争奪編』が放送されました。軍人から犯罪者まで海千山千のクセが強いキャラが数々再現されているなかで、第6話に出てくる剥製職人「江渡貝弥作」役の古川雄輝さんの役作りが話題になっています。

 見た目は美しい好青年の江渡貝は、母親からひどい抑圧を受けて育った人物で、夕張の炭鉱で事故死した人間の死体を材料にして、革細工や剥製を作っていた異常者でした。もともとの顔も似ている古川さんは、持ち前の柔らかな雰囲気で江渡貝を演じてます。さらに、古川さんはオファーを受けた直後から、原作の江渡貝にしっかり腹筋があることに注目し、糖質制限を始めて10kgの減量をし体脂肪率10%以下の肉体を作って撮影に臨みました。

 6話だけの登場ながら、人皮の衣装を着こなして優雅に「キャットウォーク」を披露する人気の「ファッションショー」のシーンもしっかり演じており、「ちゃんと実在感もありつつ、ここまで変態に演じてくれた古川雄輝さんに感謝」「最初は自信なさそうなのに、ファッションショーで徐々に自信がついていく感じがガチ」「表情含めデコルテも美しいし、素晴らしい役作り、役者魂だと思う」と、絶賛されています。江渡貝が惚れこむ「鶴見中尉(演:玉木宏)」との美しいダンスシーンも披露されました。

 また、同年の映画『ブルーピリオド』(原作:山口つばさ)では、高橋文哉さんの減量および細やかな役作りの数々が称賛を集めました。高橋さんが演じた男子「鮎川龍二」は、周囲から「ユカちゃん」と呼ばれており、格好も顔立ちも身体つきも女の子にしか見えない人物です。

 3次元で再現するにはハードルが高い役を演じるために、高橋さんは8kgの減量だけでなく脱毛も行い、撮影開始前からヒールをはいて内股ですごしたり、独自で香水やネイルの研究もおこなったりと熱心に実写ユカちゃんを作り上げていきました。東京藝術大学受験が題材の作品のため、日本画の練習も並行して行っていたそうで相当大変な準備だったと思われます。

 こだわって再現された実写版のユカちゃんには、「かわいくなりたいという、自分自身にできることは全てやったという努力の賜物が表現されてて本当にすごかった」「ユカちゃんを男性の高橋文哉が演じることで葛藤や苦悩が痛いほど伝わって見事」「絶対違和感バリバリだろうなぁってキャラを違和感なく落とし込んでる」と、熱い褒めの意見が相次ぎました。

 一方、危険なレベルの「大増量」で悪役を演じたのが、2019年の映画『宮本から君へ』(原作:新井英樹)で、主人公「宮本浩(演:池松壮亮)」が立ち向かうラガーマン「真淵拓馬」を演じた、一ノ瀬ワタルさんです。

 最初は親しみやすい一面も見せていた拓馬は、宮本の恋人「中野靖子(演:蒼井優)」に性的暴行を加え、復讐しに来た宮本を返り討ちにする衝撃的な役柄です。最後のマンションの非常階段での決闘シーンまで、R15+指定となった過激な本作の悪役として、強烈な存在感を示しました。

 原作で圧倒的な肉体を持つキャラとして描かれている拓馬役を受けた一ノ瀬さんは、激しい筋トレと「1日ケーキ1ホールと生卵30個」といった極端な食事も行い、たった2か月で33kgもの増量をしています。

 公開時、「真淵拓馬は絶対に自分にしか出来ない」「この作品を撮り終わったら、死んでも良いと覚悟して挑んだ」などのコメントを出していた一ノ瀬さん演じる悪役には、「絶対にかなわないと思う肉体の説得力だけでなく、あのジトっとした目付きが怖すぎる」「あれだけの巨漢なのに、ちゃんと大学生なりの幼さまでしゃべり方で表現しているのがすごい」と絶賛が相次ぎました。

 本人は気さくで明るく、かわいらしい人柄で知られる一ノ瀬さんですが、『宮本から君へ』で彼を知った人のなかには「マイナビ転職のCM、池松壮亮と一ノ瀬ワタルが仲良く共演していてビクっとなった」「『サンクチュアリ』観るまで一ノ瀬さん見ると恐怖がよみがえってくる体質だった」と、あまりに強烈な役ゆえにトラウマを植え付けられた人もいたようです。