未来へ繋ぐ、大人のためのヴィンテージ【Witty Vintage】赤嶺れいこさんインタビュー

ファッション業界人や感度の高い古着好きからの注目度が高く、上質なヴィンテージが必ず見つかるお店としても知られる【Witty Vintage】。大手アパレル会社勤務を経て、オンラインショップからスタートし、販売や企画を担当しているディレクターの赤嶺玲子さんにお話を伺いました。

メゾンブランドとアメリカンヴィンテージが主軸のサロンのような空間

●ハイレベルな接客を身につけた会社員時代、ヴィンテージへの関心のきっかけ

オンラインストアからスタートし、2020年、祐天寺の古いビルの1階に実店舗をオープンした【Witty Vintage】は、落ち着いて買い物ができるゆったりとした空間。アメリカで買い付けた1900〜2000年代のミリタリーやジーンズ、ロックT、カフタンドレスなどのヴィンテージのほかに【DRIES VAN NOTEN】や【Chloe】、【Yves Saint Laurent】などのメゾンブランドのアーカイブが並んでいて、まるでサロンのような雰囲気。厳選された上質なヴィンテージと商品のバックボーンをしっかり伝えてくれる接客で、30〜50代を中心に目の超えた古着好きのファンが多く、まさに大人のためのヴィンテージショップ。

ディレクターを務める赤嶺玲子さんは、地元の福岡で美容師を経て、ファッションの世界へ思い切って転職。「美容師とは労働環境が大きく違う、大手で経験を積みたい」と転職先に選んだのは大手アパレル企業。福岡で1年ほど勤務したのち、東京へ転勤となりますが、これが玲子さんにとってのターニングポイントとなりました。

「美容師とアパレルスタッフは同じ接客業ですが、お客様との関わり方が全然違いました。例えばレジカウンターに立っていても、入口の方に絶対お尻を向けないのは基本。自分で良かれと思ってしていたコーディネートが、ブランドのフィルターを通してないからダメだったり。当時の私は個性的なアイテムをたくさん取り入れてたんですが、小柄なのに主張が激しいものばかりつけているとアイテムに負けてバランスが悪くなっちゃう。上司にそう指摘されて初めて自分を客観視できるようになって、お客様にも身長や体型に合わせて足し引きしてご提案できるようになりました。かなりコーディネート力が鍛えられたので、今も接客する際はすごく役に立っています。ハイレベルな気遣いが求められる環境だったので、自分の礎になったと思います」

青山店で2年、その後同企業のメンズブランドに3年勤務したのち、インテリアブランドへ異動し、販売と企画職を担当することに。この会社員時代の経験が、現在のお店の空間作りやオリジナルアイテムの企画、丁寧な接客のベースとなったそう。

「どのブランドでもディスプレイ用の什器や小物も、ほとんどヴィンテージだったんです。お店のレイアウトを担当させてもらっていたのですごく楽しくて。その一方で販売の仕事は数字や実績に追われる部分もあって、ただ新作を売ってるだけではなく、残るものを手掛けたいという気持ちにだんだん変わっていきました。そこで何かを残したり作ったりできる部署に移りたい、と思い、社内の人にも相談に乗ってもらって、インテリアブランドへ異動することに。ものづくりの一環に関われたことは楽しくて、今振り返ると大きな経験でした」

●買い付けと運営は夫婦で分業 掘り出し物を見極め、価値を高める

その後、妊娠をきっかけに退職。夫の優樹さんと共にオンラインで【Witty Vintage】を起ち上げたのは出産後わずか半年後でした。

「結婚前から夫は独立してメンズのヴィンテージのバイヤーをやっていたんですが、買い付けに行くと私用にレディースも買ってきてくれていたんです。私用以外にも、年代が古くて状態が良かったものを買い付けていて。メンズにはない面白いものがレディースにはある、と彼も新鮮だったようです。古いもの自体にとても詳しかったので、性別問わずステッチや生地感で年代がわかるし、歴史的なバックボーンなど、私も夫から教わりながら知見を深めていきました。買い付けは基本的に夫に一任しています。私は店舗のディレクションなど」

優樹さんは現地にいる何人ものディーラーとの信頼関係を築いているので、他にはないレアなヴィンテージの買い付けが可能に。そして一着一着、丁寧にクリーニングやリペアをして、最善の状態に仕上げ、お店に並べているそう。また、大量に買い付けたドレスシャツをコンディション別に分類し、シミがあるものは天然の色素に化学染料を少し配合する「ボタニカルダイ」という手法で染め上げてオリジナル商品化するなど、アップサイクルも積極的に行っています。

「オンラインショップを始めた頃は、自宅の一画で撮影していました。息子がすごくよく寝る子だったので助かりました(笑)。最初から今のような形を目指していたわけではなかったんです。当初は『いい感じのレディースのオンランショップをやる』みたいな、ざっくりしたイメージしかなく。もちろん知名度もないし、当時私も夫もフォロワーがたくさんいたわけでもなかったんですが、会社新時代の繋がりや、人脈に恵まれていたんだと思います。2020年にこの店舗をオープンしたんですが、そこに至るまでにポップアップショップを何度かやっていまして。一番最初は2018年の3月に、ユナイテッドアローズの原宿店でやらせてもらいました。夫の繋がりでスタイリストの安西こずえさんにスタイリングの提案をしてもらったり、インスタライブを行うなどいろんな仕掛けを行ったイベントで、それが起爆剤となって一気に認知度が高まりました。昨年からはそういったファッション業界で繋がりのある人をゲストに迎えて、ものづくりへの思いを伺ったり私の考えをお話しする音声メディアの発信をSpotifyとyoutubeで始めました。みなさん取材を受けることが多い方達なので、普段インタビューで話さないような内容を話していただいてます。人にフォーカスした情報発信をすることで、お客様にも買う時により商品の価値を感じてもらえるんじゃないかな」

●【Witty Vintage】だからこそできる、未来へつながる活動

その後、順調にファンを増やし、2020年1月に現在の店舗をオープン。待望の実店舗でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いわずか3ヶ月で休業することに。赤嶺さんはその期間に環境問題について深く学び、現在もSNSでマイバッグの持参を呼びかけるなど、ショップの運営方針にも大きく影響を受けたと話します。

「“ヴィンテージのものを長く大切にする”ということとサステナビリティに関する活動は、最初から繋げて考えていたわけではなくて、実は後付けなんです。だから環境問題について考えるようになったとき『自分たちが今やっていることが古着屋でよかった』と心から思いました。生活にどう関わっているか、自分ごととしては捉えてないなかったけど、深く知ることで自分達にできることは全部やるようにしました。調味料や食材をオーガニックなものに変えたり、電力会社を再生可能エネルギー100%を供給する『みんな電力』に切り替えたり。お店での取り組みで言うと、マイバックの持参を呼びかけたり、発送用の袋を85%さとうきび由来のものに変えたり。この袋の強度は従来のプラスチック素材の袋と同等ですが、環境負荷を軽減するもの。富山の会社が作っている素材を使ってオリジナルのものを製作しました。

他にも、一部のオリジナルアイテムの売上の1%を地域の福祉施設に寄付しています。オリジナルアイテムにつていては、新しいものを作ることに少し抵抗はあったんですけど、ヴィンテージを活かせるものを、というコンセプトで始めました。たとえば1950〜60年代の古い年代のスウェットで状態がいいものって、もう世の中に本当になくっなっているんですよね。あっても気軽に買えない値段になってしまう。そこでその形をもとにオリジナルでシンプルなものを作れば、いろんなアイテムに合わせられて、よりヴィンテージアイテムを楽しむ幅を広げてもらおうと思って作りました。復刻というよりは、いいとこどりみたいな感覚です。環境活動のために新しいものを生み出すことに対して違和感を感じていた時期も正直あったし、私はハマるととことん突き詰める性格なので疲れてしまうこともありましたが、今は自分達のできる範囲で選択しながらバランスよくやっていけるといいのかな、と考えています」

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【Witty Vintage】SHOP INFO

東京都目黒区五本木2丁目13-1 1F


13:00-18:00/不定休