
最近のローソンと言えば、過去4度に渡って実施されている「盛りすぎチャレンジ」の印象が強い。価格据え置きで各種フードやスイーツの大幅増量が敢行される同フェアは、時代にそぐわぬ気前の良さから開催のたびに好評を博している。
が、このほどそんな「盛りすぎ」路線とは対照的な商品を発見してしまった。2025年3月25日に新発売されたその商品の名は、「天かすご飯」。文字通りご飯の上に天かすが乗ったシンプル極まりない小型の弁当である。
何と言うか、困惑である。「これほど足し算の極致から引き算の極致へと高速で切り返すコンビニがあっただろうか、いやない」と、有史以来初めての反語が内心浮かんだくらいには困惑である。しかし同時に、抑えようのない興味がふつふつと湧いていたのもまた事実であった。
そういうわけで商品棚に並ぶ「天かすご飯」に手をのばした筆者だったが、その奇抜な内容構成もさることながら、次いで価格面にも驚かされた。
およそ500円から600円程度の弁当に挟まれる中、「天かすご飯」は驚異の税込297円を叩き出していたのである。むろん具材の種類やボリュームでは引けを取っているものの、それにしても安いと言わざるを得ない。
何なら目線を上にずらせば、高級おにぎりである「焼さけハラミ」が全く同じ297円で売られている。筆者は少々呆気に取られた。人間はあまりに示唆に富んだコンビニの棚を前にすると、しばらく立ち尽くすほかなくなるのである。
ともあれ、深い思索に絡め取られつつも無事「天かすご飯」を入手できた。改めて眺めてみても、コンビニの弁当というより「丁寧にパッケージングされた究極節約レシピ」といった感が拭えない。
ただここで補足しておかねばならないのが、この弁当には天かすに加えて、天丼たれや青のりもまぶされているという点である。他の商品においては変哲のない調味料たちであっても、297円の世界に降り立ったそれらは輝ける福音にも等しい。
何だかんだと言葉を連ねてきたが、「美味しそう」であればこそ手に取ったわけで、実際に一口目を頬張ったあともその期待が裏切られることはなかった。
たれを吸った柔らかな天かすと、もちもちと弾力のあるご飯を噛み締めるほどに、甘辛い味わいが染み出す。ささやかに華を添える青のりの風味も良い。一気にかき込みたくなるくらいやみつきになるし、その衝動をこらえてじっくり楽しみたくなるくらい豊潤だ。
天かすの食感や弁当全体のボリュームに物足りなさを覚える人もいるかもしれないが、個人的には「これはこういうものだ」と捉えれば十分受け入れられるというか、インパクトだけに終わらない作り込みさえ感じている。
正直、そこに「297円にしては」というフィルターがかかっていないと言えば嘘になる。だがそこらのフィルターならいざ知らず、このご時世に「297円」というまばゆいフィルターから免れることは至難であるし、変にそれを差し引いて評価するのもむしろ誠実ではなかろう。
結論、本商品はシンプルながらハイクオリティな297円弁当である。少なくとも筆者はローソンの挑戦を評価したい。こういう弁当が新たな選択肢として誕生したことに、何ら異存はない。
興味の湧いた方はぜひ、ローソンの商品棚の前に立ってみてほしい。その時のあなたは、この先鋭的な弁当の誘惑を振り払うことができるだろうか……いや、できない。
参考リンク:ローソン 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:RocketNews24.