デスクワークの人は1日22分の運動を心がけると良いかも / Credit:Canva

デスクワークに従事している人は、長時間座りっぱなしの状態から解放されることはありません。

そのライフスタイルを定年退職するまで続けなければいけない人も少なくないでしょう。

しかし長時間座り続ける健康への害は数多く報告されており、この影響を相殺する方法が模索されています。

ノルウェー・トロムソ大学(UiT)健康科学部に所属するエドヴァルド・H・サーゲルブ氏ら研究チームの2023年の研究によると、1日22分の中程度以上の身体活動によって、座りっぱなしの死亡リスクを相殺する可能性があると報告されています。

これは、過去の様々な研究結果と比べて、よりハードルが低い結果だと言えます。似たような研究成果は色々報告されていますが、比較的取り入れやすい対策を知っておくことは有用かもしれません。

研究の詳細は、2023年10月24日付の科学誌『British Journal of Sports Medicine』に掲載されています。

目次

デスクワークの人は1日40分以上の運動が必要?4つのデータセットから1万2000人を対象にした分析「1日平均22分」の中程度以上の身体活動が死亡リスクを相殺する

デスクワークの人は1日40分以上の運動が必要?

長時間座りっぱなしの人は、心臓病や2型糖尿病、がん、早期死亡など、病気や死亡のリスクが高まることで知られています。

とはいえ、仕事中に頻繁に立ち上がったり、こまめに運動したりすることは現実的ではありません。


デスクワークの人々にとって、身体を動かせるのは、仕事前か仕事後の僅かな時間 / Credit:Canva

実際のところ先進国では、成人は毎日平均9~10時間座って過ごしており、そのほとんどは勤務時間中です。

そのため多くの人は、仕事前や仕事後にいくらかの運動を行うことで、なるべく健康でいたいと考えます。

そしてこれまでに、座りっぱなしの人の運動量と健康を分析した研究がいくつも行われてきました。

例えば、下記の2020年の研究では「1日40分以上の中程度以上の身体活動が必要」だと報告されています。

中程度以上の身体活動には、イヌの散歩、階段の昇降、子供と遊ぶこと、速めのウォーキング、軽めの自重トレーニング、バレーボールなどが含まれます。

無理ではないレベルですが、毎日ヘトヘトになるまで働いている人は「ハードルが高い」と思うかもしれません。

しかしサーゲルブ氏の新しい研究では、もっと短い時間の身体活動でも病気や死亡のリスクを低減できると報告されています。

(※これらの研究で述べられる死亡リスクとは、個々の人々が一定期間中に死亡する確率のことです。今回研究に使用されたデータの中央値は5.2年です)

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4つのデータセットから1万2000人を対象にした分析

この研究では、ノルウェーの「トロムソ研究(Tromsø Study:2015~2016年)」と「ノルウェー全国身体活動調査(NNPAS:2008~2009年)」、スウェーデンの「健康老化イニシアチブ(HAI:2012~2019年)」、アメリカの「アメリカ国民健康栄養調査(NHANES:2003~2006年)」の合計4つのデータセットが用いられました。

分析の対象となったのは、50歳以上の約1万2000人です。

それら対象者は、1日10時間にわたる活動量計の記録が最低でも4日間あり、少なくとも2年間はモニタリングされていました。

加えて、教育レベル、身長、体重、喫煙歴、アルコール摂取量、心血管疾患・がん・糖尿病の有無など、詳細な情報も提供されました。


活動量計を用いたデータセットが使用される。 / Credit:Canva

そしてサーゲルブ氏は、この最新の分析と結果が、以前の研究よりも正確だと主張しています。

というのも、彼らは4つのデータセットを丹念に調整することで、各データセットに含まれる個人データを互いに比較できるようにしたからです。

4つのデータセットはそれぞれ別々の情報源ですが、その調整によって、あたかも全員が1つの研究に参加しているかのようにデータを扱うことができたというのです。

では、その信頼性の高い(と主張している)分析結果はどうだったのでしょうか。