連覇を目指すBL東京、副将の原田衛が初代表のシーズンで感じた試練「最後は優勝できるシーズンにしたい」

 兵庫県生まれの勤勉なプロラグビー選手は、ユーモアの人でもある。

 原田衛は3月22日、東京・秩父宮ラグビー場で国内リーグワン1部の第12節に出た。

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 ディフェンディングチャンピオンの東芝ブレイブルーパス東京の副将として、3季連続ファイナリストの埼玉パナソニックワイルドナイツを向こうに63分間プレー。激しいタックル、突進を重ねて42―31で勝って、12チーム中2位から首位に浮上した。
  20時以降はスマートフォンを触らず21時には床につき、トレーニングの合間には英会話の勉強もする、まして息抜きが「クラブハウスでのストレッチ」という25歳は、激しいぶつかり合いに好感触を得た。

「どれだけプレッシャーをかけられるかをテーマにしたなかで、いい感じに勝負できたかなと」

 人を笑わせたのは、鮮やかなトライシーンを振り返った時だ。

 前半27分。4点リードのブレイブルーパスは、ハーフ線付近左のラインアウトから中央へ展開した。ここではタックラーにただぶち当たるのではなく、タックラーを引き寄せながら死角へパスを通す動きで壁をこじ開けた。勢いをつけた。

 ここから左へ振り戻す際、すでにスリリングなパスワークを予感させた。

 堅守で鳴らすワイルドナイツの防御役が5人、並ぶ区画へ、ブレイブルーパスは9人を配していた。かつ、複層的な陣形も作っていた。

 前方のメンバーが仕掛け役、おとり役、動きながらのつなぎ役とそれぞれのタスクを全うすると、大外にはノーマークに近かった攻め手が3人も残っていた。その端側にいたのが原田だった。

 気持ちよさそうに走る別な味方から、敵陣22メートル線付近でパスをもらった。そのまま無人の街道を駆け抜けた。

 身長175センチ・体重101キロのサイズでスクラム最前列中央のフッカーを託されるタフガイは、フィニッシュに至るまでの走力も光る。

 当の本人はまず、攻撃の設計図を敷いた「ヨシさん」こと森田佳寿コーチングコーディネーターを賞賛した。

「(この連係技は)練習では全然、決まっていなかったんですけど、試合になるとこんなに(スペースが)空くんやというくらいに人(目の前の相手)がいなかった。ヨシさんのオーガナイズがよかったのかなと」

 仕留め役としての所感を問われれば、この調子で述べた。

「ボールを落とさないように、ということだけを考えて…」    

 誰もができない経験を、誰もが持ち得ぬ感性で肥やしに変えている。

 昨季はクラブ史上14シーズンぶりの日本一とベストフィフティーン入りを果たし、そのまま日本代表の主力候補に遇された。非テストマッチ(代表戦)ではゲーム主将も務めた。

 強豪国とも対戦した。上には上がいると知ったことで、もっと筋量を増やすべきだと意識した。

 学生時代から「ラグビー、できてるうちにやっとかないと。遊ぶとか、休むとかは、(現役生活が)終わってからでもできる」と考えている。昨年12月からいまなお続くシーズンのさなかも、個別のジムワークに励む。

 寮の食事の他に、調理した鶏肉を採るのも忘れていない。

「世界トップ4のフッカー」となるべく、肉体をアップデートする。

「トレーニングには終わりがないというか、常に自分のマックスを更新したい。もうちょっとサイズも大きくなって、動けるようになるのがベストです」

 目標体重は「極秘」とのことだ。

「行って(達して)ないやん! って、思われるのが嫌なんで」
  ナショナルチームでは、スタッフへの厳しい態度で知られるエディー・ジョーンズの「怒られ役」の選手も担ったと自覚する。

「期待の裏返しやと思うんで、頑張ります」と己を奮い立たせていたら、故障を抱えながら「お前のタフさを見せるチャンスだ」とゲームの登録メンバーになることもあった。
  この試練からも、価値を見出していた。

「逃げなくてよかったな、っていうのはあります。この状況でも試合に出られるんだという自信にもなるというか、その他が楽に感じるというか…。メンタル的にも成長できました」

 2024年の代表活動を11月に終え、少しの休息ののちに12月下旬からのリーグワンへ身を捧げる。

 開幕当初こそ苦労した。戦術や考え方の異なる日本代表からブレイブルーパスへ戻り、そう時間が経たぬうちに実戦を迎えるシチュエーションが「想像よりも難しい」と再認識した。調子を上げるのに時間がかかった。

 もっともその問題は、時間が解決したか。

 今度のワイルドナイツ戦へ徐々に復調の原田は、「バイウィーク(リーグワン期間中の休息週)もあり、いい感じでリフレッシュできているのかな」と微笑んでいた。

 国を代表する戦士として「日本ラグビーが今後どうなっていくかはエディーさんと組織全員にかかってくる。何が何でも勝っていかないと」としつつ、まずは、リーグワンで力を尽くす。

「白熱した戦いが多いなか、東芝らしく、1日、1日、1試合、1試合を突き詰めていって、最後は優勝できるシーズンにしたいです」

 残り6戦あるレギュラーシーズン、6チームからなるプレーオフで、強さを、逞しさを表現する。

取材・文●向風見也(ラグビーライター)
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