今季GT500の数少ない変更点“モノコック”。「一番心配してたけど、問題ない」と王者au TOMS……ただライバルとの差は縮まる?

 2025年のスーパーGT・GT500クラスは、変化が少ないシーズンと言える。新型車両を投入するメーカーもなく、空力開発も凍結されている。その点で数少ない変更点のひとつと言えるのが、モノコックだ。

 今季はGT500クラスのモノコックが全車新調されることになった。クラッシュなどで交換したチームを除き、基本的には各車2020年から5シーズン使われてきたモノコック。これがフレッシュなものへと入れ替えられた。

 モノコックは言わば、GT500車両の根幹をなす構造物。個体が変わり、剛性などが変わることにより、フィーリングにも変化は少なからずあるだろう。

 トヨタ・GRスープラで2020年以降に3度のGT500タイトルを獲得したTGR TEAM au TOM'Sにとっては、このモノコック変更は最も心配されることだったという。しかし現状は問題がないようだ。

 au TOM'Sの吉武聡チーフエンジニアは、次のように語る。

「去年までのモノコックで3回チャンピオン獲っているわけで、それを変えるのは結構怖いですよね」

「一番心配していたんですけど、今のところ違和感も全然ないし、ほぼほぼ変わらないような感じ。問題ないです」

 またau TOM'Sでドライバーを務める山下健太は、若干の違いは感じ取っているとのことだが、「全体的には変わらず走れていますし、大きな問題はないと思います」と基本的にポジティブなコメントを残した。

 オフシーズンのテストを総括して、「フィーリングも悪くないですし、ドライバーも変わらず、クルマもほとんど変わっていないので、今のところ順調に来ています」と語る吉武エンジニア。逆に心配事はあるのかと尋ねると、例年よりも年間を通じてのレース距離が短くなり、レースでの強さを発揮しづらくなる点を挙げたが、夏の富士ラウンドで開催されると言われているスプリントレースはノーウエイトになるという話も入ってきているらしく、「そうなるとそこは結構有利かな」とのこと。やはり死角はないに等しい。

 今年もau TOM'Sがタイトル本命ということは間違いないだろう。しかし、「昨年よりは差が縮まるはず」と証言するライバルが多い点は注目に値する。au TOM'Sと同じスープラ陣営、TGR TEAM KeePer CERUMOの大湯都史樹もそのひとりだ。

「(au TOM'Sは)やっぱり速いという印象はあります。安定してパフォーマンスが高く、常にトップをとれるパフォーマンスを持っているというのはひしひしと感じますが、去年ほどの差は感じないかなと。そこはまあまあポジティブですね」

 そう語った大湯。差が縮まったと感じるのはどういった点からかと尋ねると、こう答えた。

「セットアップもあるとは思いますが、どちらかというと全車が(モノコックを交換し)新車になったという要素も結構あるかなと思います」

「(車両のフィーリングは)だいぶ変わりましたね。僕たちの抱えていた、『ここはどうやっても治らないな』という症状が、新車になって起きにくくなりましたね」

 また、今季GT500はブレーキのメーカーが変更になったことで、ドライバーがフィーリングの違いを感じているという声も聞こえてきている。規則が大きく変わらないからこそ、そういった細かな変更が勢力図に影響を与えるかもしれない。