変身ヒーローの金字塔である『仮面ライダー』の「意外と知らない」最終回とは。
『仮面ライダー』ビジュアル。画像はプレスリリースより (C)石森プロ・東映
【画像】えっ、ビジュアル気持ち悪! こちらが『仮面ライダー』最終話に登場した「ゲルショッカー首領」です(4枚)
ついに判明するか? ゲルショッカー首領の正体
1970年代初頭、「変身ブーム」と呼ばれる一大ムーブメントを巻き起こした『仮面ライダー』。最高視聴率30.1%を誇り、およそ2年にわたるロングラン放送となりました。伝説に残る大ヒット作だけあり、藤岡弘、のケガによる降板など、現在でもさまざまな逸話が語り継がれています。
さて、そんな本作の最終回を「実は覚えていない」という人も多いのではないでしょうか。ここでは第98話「ゲルショッカー全滅!首領の最後!!」を振り返ります。
物語は2話構成で、前話の97話では、ゲルショッカーのアジト内で捕らわれた立花藤兵衛、ユリ、ヨッコ、チョコのライダーガールズ、ナオキ、ミツルの少年ライダー隊の仲間たちを前に、本郷猛はタイフーン(変身ベルト)を凍結させられ、変身できなくなってしまいます。
そんななか、ゲルショッカー怪人のヒルカメレオンが、いままさにユリの血を吸おうと管を伸ばす場面で第97話は終わりました。
続く第98話冒頭で仮面ライダー新2号が駆けつけて危機を脱出。ダブルライダーはアジトに仕掛けられた時限爆弾の在処を突き止めるも、これをヒルカメレオンが妨害します。新1号がヒルカメレオンと戦うなか、新2号は爆弾を解除してふたりはヒルカメレオンを拘束し、ブラック将軍の居場所を白状させようとします。そこにブラック将軍の声が響き渡り、人体実験用の囚人の解放と交換条件を提示します。
本郷と一文字隼人はヒルカメレオンとともに指定された場所に到着。そこでふたりはヒルカメレオンの正体がブラック将軍であることを知らされ、復活した怪人軍団に取り囲まれます。声は腹話術で全ては罠だったのです。
ヒルカメレオンもブラック将軍の姿に戻り、窮地に立たされたふたりに対して高みの見物を決め込みますが、なぜか本郷と一文字はせせら笑います。ふたりはゲルショッカーの最高幹部が全て怪人だった前例を踏まえ、正体を確かめるためにわざと罠にはまったのでした。
企てがバレたブラック将軍は姿を消しますが、ふたりは変身してゲルショッカー戦闘員と戦いながら、その行方を追ってついにヒルカメレオンと雌雄を決する時を迎えます。激闘の末にヒルカメレオンはダブルライダーの強さに圧倒され、岩場に保護色で身を隠します。
しかしすぐにその位置に見破られダブルチョップを浴びせられたヒルカメレオンは満身創痍でブラック将軍の姿に。そして「時間はよし、俺の役目は終わった」と告げ、時間稼ぎだったことを明かし、「我が偉大なる首領に栄光あれ!」と叫ぶや否や爆散。その壮烈な死に「ゲルショッカーの幹部はみんなそれぞれ勇敢だった」と敵ながらも讃える新1号のセリフが視聴者の胸を熱くします。
ブラック将軍が倒され、残るはゲルショッカー首領の正体です。
「テレビマガジン特別編集 本郷猛/仮面ライダー1号 増補改訂」(講談社)
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結局、ゲルショッカー首領って何者?
ショッカー、そしてゲルショッカーを統べる首領の正体は、これまでも第67話「ショッカー首領出現!! ライダー危し」、第94話「ゲルショッカー首領の正体!!」と、サブタイトルで大々的に打ち出されてきましたが、劇中ではいずれも煙に撒かれてしまう展開で正体は謎のままでした。視聴者としても当然、興味のある展開です。
ゲルショッカーは彼らの仲間であるFBI捜査官の滝和也を利用して立花藤兵衛らを拉致して、本郷&一文字をおびき寄せます。そこに赤い頭巾に身を包んだゲルショッカー首領が幻影のごとく姿を現しました。これは第67話に登場した首領と同じ衣装ですが、この時の中身は、改造人間の肉体組織を破壊するアンドロガスを仕込んだマネキンでした。
ダブルライダーはこの首領の攻撃を潜り抜け、姿を消した首領を追ってアジトに潜入して、ついに直接対面を果たします。最終回ですし、「いよいよ正体が明かされるときが来たか!」と期待が高まる瞬間です。
新2号が「正体を見てやる!」と赤い頭巾を剥ぐや、多数の蛇を這わせた不気味な頭部が現われ、「これが正体なのか!?」と思って観ているなか、さらに新1号がその頭部をつかみ引っ張ると、今度はひとつ目の白い頭部が現われます。そして首領が「ゲルショッカーの最後だ。わしと一緒に死ね!」と言うや壁面のショッカーマークが吹き飛び、それとともに首領の体は崩れ落ちて爆発してしまいます。
煙が晴れると、そこには緑色の首領の目が転がっており、新1号が「首領の頭脳の本体だ」と近付こうとすると、間髪入れずに基地全体が爆破。ダブルライダーは脱出し、ゲルショッカー首領の正体については結局のところ明かされることありませんでした。それどころか、人間なのか、宇宙人なのか、改造人間なのか、どういった出自を持つキャラクターだったかも不明のままです。
全く違う展開で最終回を迎えたマンガ版でも、やはり首領の正体は不明のままで終わりました。こうした結末を、却って不気味さを漂わせる余韻ある作劇とするか、消化不良と捉えるかは人によって異なるかもしれません。