GDP4位で騒いでいる場合ではない?日本の研究の質がイランやスペイン以下であることが判明! / Credit:Canva . ナゾロジー編集部
日本から優れた論文が出なくなりつつあります。
日本の文部科学省(MEXT)による分析によって、日本の研究が世界の人々から注目される研究成果を出せなくなっていることが示されました。
報告書では、日本は中国と米国に次いで世界3位の研究開発費を投じているにもかかわらず、学術論文の上位10%に掲載される論文数が20年の間に4443本から3767本と15%も減少しており、韓国・スペイン・イランに次ぐ世界13位と大きく順位を落としました。
報告書は日本が停滞している間に、周辺国のレベル上昇したことが主な原因としています。
しかしここ20年の間に、日本以上に順位を急激に低下させ続けた先進国は存在せず、単なる停滞が全ての原因とは言えない状況にあります。
なぜ日本の研究は第一線から退きつつあるのでしょうか?
目次
研究開発費は3位なのに注目される論文数は13位質の高い論文の絶対数が急減している研究時間の短縮と待遇の悪化
研究開発費は3位なのに注目される論文数は13位
研究開発費は3位なのに注目される論文数は13位 / Credit:Japanese research is no longer world class — here’s why . Nature
報告書によると、現在の日本の研究開発費は世界3位、提出された論文数は5位となっています。
通常ならば研究費、総論文数が多い場合、質の高い研究の数も連動して増えていきます。
実際、20年前の日本では論文数は2位、注目度が高いトップ10%に入る論文数は第4位(シェア6%)でした。
しかし現在トップ10%に入る日本の論文数は13位(シェア2%)となり韓国・スペイン・イランに次ぐ順位となっています。
つまり研究費(3位)と発表される論文数(5位)は多いのに、注目される論文数が大きく低下しているのです。
報告書では、原因の一端が積極的な研究費の投資がないことを理由の1つに上げています。
過去20年にわたる大学の研究支出を2000年を「100」とした場合、現在の日本は「130」です。
しかし同じ時期に米国は200、ドイツは160、中国は1170、韓国は490と激増しています。
論文数の「シェア率」の観点からみた場合、研究費が大きく伸びた国が増えれば増えるほど、相対的に日本のシェアが低下していきます。
日本が研究に対して20年前と同じレベルで努力を傾けていても、論文数のシェアを維持することはできなかったでしょう。
では研究の質の低下も同じ原因なのでしょうか?
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質の高い論文の絶対数が急減している
質の高い論文の絶対数が急減している / Credit:科学技術指標2023
研究の質が下がったのも、周りの国が伸びたからなのでしょうか?
ここで注目すべきは、世界全体の論文数もまた、20年前と比べて大きく増えているという点です。
日本でも20年前に比べて発表される論文数は約6万5000本から7万本と5000本ほど増えています。
ただ日本の増加速度は他の国々(上位25カ国)と比べると、最も遅い部類となっています。
米国は同じ時期に20万3000本から30万2000本と10万本近く増加し、中国に至っては46万本の増加、イタリア、フランス、ドイツ、イラン、韓国など他の国でも数万本もの増加がみられます。
総論文数が増えたということは、世界全体で研究が活発になり、新規分野の開拓が進んでいることを示しています。
そして増加した論文の中に優れたものが含まれていれば、全体数の増加に連動して質の高い論文の絶対数も増えていきます。
ただ日本では同じことは起こりませんでした。
日本では20年前はトップ10%に入る論文の数は4443本でしたが現在では3767本と劇的な低下を見せています。
総論文数が増えたものの、評価の高い論文数はむしろ減っているのです。
これはシェア率ではなく、絶対数の減少です。
つまり日本の研究の質が低下したのは単に周辺国が伸びたのに加えて、評価の高い論文を出す能力が日本から失われていることも原因となっていたのです。
実際、主要国のうち、トップ10%に入る論文数(絶対数)が減ってしまったのは日本だけです。
しかし、なぜ日本では質の高い論文を出せなくなってしまったのでしょうか?
まず考えられるのは、研究者数の減少です。
日本の研究者数が2000年代後半から僅かに増化している / Credit:科学技術指標2023
報告書では各国の研究者数が調べられており、日本の研究者数が2000年代後半から僅かに増化していることを示しています。
大学部門や企業部門の研究者数も20年間の間に増加していました。
つまり日本は20年前と比べて研究者数が少し増えて、論文総数も増えているのに、質の高い論文数だけが減っていると言えるでしょう。
では研究者数が減ってないのに、なぜ研究の質が低下してしまったのでしょうか?