“記録的なうなぎ豊漁”でも値下がりしない理由…老舗うなぎ屋がため息「ウチみたいな小さな店には入ってこないよ、コメだって高いし」

いまやすっかり“超高級品”になってしまったうなぎ。もともと高級品ではあったが、この十数年での値上がり幅はあまりにも大きく、簡単には手を出せなくなっている。そんな中、今年は「うなぎが安くなるかもしれない」とのウワサもあるが、本当なのか。

うなぎが安くなる! かもしれない……

うなぎの稚魚「シラスウナギ」が今年は記録的な豊漁だという。全国的にどこでも多く獲れており、静岡県では前年比の約3倍、鹿児島県では2008年度以来の高水準、岐阜県でも非常に好調で、同県では例年の15分の1の価格で「シラスウナギ」が取引されているとの報道もあった。

豊漁の原因は詳しくわかっていないようだが、高騰が続くうなぎがたくさん獲れているというニュースはうれしい限りだ。

しかしだからといって、市場に出回るうなぎの価格が安くなると考えるのは時期尚早だという意見もSNSで多く上がっている。

〈一度値上げしてしまうと値下げしないのが問題なのよね〉

〈昨年の倍獲れてると言えば聞こえはいいけど、50年前の100分の1とかですからね。僕たちは今まさに食文化の消滅に立ち会っているんです〉

〈豊漁ってことは1960年くらい獲れてるんですよね? まさか「5年前より多い」レベルの話をしてないですよね?〉

〈またバカみたいに獲って、数年後に「全然獲れなくて困ってます」ってなるんだろ〉

確かにニホンウナギ天然成魚(黄ウナギ)の漁獲量を見ると、1960~70年代は3000トンほど獲れていたのが、2005年以降は500トン、2015年以降は100トンを下回り、2018 年の漁獲量は統計が始まって以来過去最低となる68トンを記録している。

だが一方で、今年はシラスウナギが例年よりも安く取引されているのは事実。果たして、うなぎの値段はどうなるだろうか。都内の鮮魚専門店で話を聞いた。

「確かにニュースなどでシラスウナギがたくさん獲れていると見ますね。だがまだ、我々のところまでは話が来ていません。シラスウナギをよい品になるまで育て上げて、そこから出荷ということなので、価格に影響があるのはまだ先の話かと思います」(都内鮮魚専門店、販売員)

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うなぎも「大きな問屋さんが買い占めちゃう」

今夏のお盆以降くらいには、今獲れているシラスウナギは出荷されるというが、その時期には市場価格に変化が出てくるのだろうか。

「うーん、正直言うと、あまり変わらないと思います。うなぎは7、8年前頃に一気に値上がりして、ここ数年も緩やかに値上がりを続けています。

養殖の育ち次第になりますが、もしたくさん出荷されても値上げせず、去年と変わらない価格で出せるというくらいじゃないですかね。今までも、何度か『今年は値段が下がるんじゃないか?』と言われたことはありましたが、結局変わることはありませんでしたから」(同・販売員)

さらに都内の老舗うなぎ料理店に話を聞いてみたが、ここでも「下がることはないだろう」との見解だった。

「シラスウナギがたくさん獲れているというニュースは確かに見るね。でも『ここまで入ってきたらいいね』という感じだよ。うなぎはまず、大きな問屋さんが買い占めちゃうから。たくさん獲れても、そこからなかなか出さなくなっちゃう。いろいろあるんですよ」(老舗うなぎ屋・亭主)

うなぎにも大きな組織の買い占めがあるとは。今年大きな話題になっている“令和の米騒動”を思わせる。

「私らみたいな小さい店はもう黙って問屋さんの言いなりですよ。馴染みもあるからそう簡単に問屋さんを変えることもできないし、第一、それで仕入れるうなぎの鮮度が悪くなったら元も子もない。

店では必ず生きたうなぎを毎日仕入れていて、もしあがっていたら(死んでいたら)『ちょっとどうなってんの!』ってクレームの電話してるしね。そういう事情もあるから、問屋さんは簡単には変えられないのよ」(同・亭主)

では、うなぎがたくさん獲れた場合は問屋が儲かるのか? と聞くと、意外とそうでもないらしい。