
3月28日から30日にかけて千葉県で開催されている船橋招待サッカー2025。プレミア・プリンス開幕を1週間前に控えるなか、最後の調整の場として設けられたこのフェスティバルで、市立船橋の新2年生が躍動している。
昨年のプレミアリーグEASTで多くの1年生が経験を積んだ。その中の1人であるFW佐々木瑛汰は、得意のスプリントからのラインブレイクや、トップ下やボランチまで落ちてパスで展開するなどマルチロールぶりを発揮。帝京長岡との『プレミア対決』では、何度もショートスプリントを繰り返しながら相手のディフェンスラインを揺さぶり、サイドに流れてボールを受けてカットインや縦突破を披露した。
MF秋陽凪の決勝弾も、佐々木がセカンドボールを拾って、ドリブルで仕掛けると見せかけてペナルティエリア右のポケットにスルーパスを通したことで生まれたものだった。
「覚悟を持って市船に来て、1年生から試合に使ってもらっていたのに、度重なる怪我で離脱する時間が多くてチームに迷惑をかけてしまった。何も貢献できずに終わったので、今年はそうならないように筋トレや怪我をしない身体作りや、チームのために走る、パスを出す、決めきるなど勝利に直結するプレーをしないといけないと思っています」
こう固い決意を口にする佐々木は、北海道出身で北海道コンサドーレ札幌U15時代にはU-15日本代表に選出されるほどの存在だった。当然のようにユース昇格の打診があったなかで、なぜ市船を選んだのか。
「中学2年生の時に高校選手権をテレビで観て以来、ずっとあの舞台に立ちたい、高校サッカーで多くの部員たちと切磋琢磨して、プレーだけでなく、精神的にも強くなりたいと思うようになったんです。実際に道外に出て、関東遠征などをすると相手のレベルの高さを痛感することも多かったので、高校は道内ではなく、外に出て、高体連でやることは決めていました」
この思いをなかなか言い出せない時期が続いたというが、中3の春にまさに運命とも言える出来事が起こった。
「お父さんの仕事の関係で千葉に転居することになったんです。最初は青森山田とかに行こうと思っていたのですが、千葉で高校サッカーとなった時に市船、流通経済大柏、日体大柏の3チームに自然と絞られました。それを含めてコンサドーレのスタッフの人たちに相談すると、市船と関係があって勧めてくれたんです。実際に練習参加をして、レベル、プレー強度、そして組織的にも自分が鍛えられると思ったので決めました」
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転居した自宅は市船から通学できる距離で、練習場も近かった。まさに運命に導かれるようにブルーのユニホームに袖を通した佐々木は、「これまでお世話になった人たち、市船で出会った人たちに恩返しがしたい」という純粋な気持ちでサッカーに打ち込んだ。だからこそ、その仲間たちと選手権に行けなかったことは悔しかった。
「(日体大柏にPK負けをした選手権予選)準決勝では怪我から復帰したばかりでしたが、最後の方で出場させてもらったのに何もできなかった。3年生にはかなりお世話になったので、たとえ自分が試合に出ても、出なくても一緒に戦いたかった。
仮に選手権では自分が出られなくても、スタンドで応援するだけでも、選手権という舞台がどんな雰囲気で、どんな感情が生まれるのかを味わいたかったし、何より3年生を全力で応援したかったので悔しくて仕方がありませんでした。だからこそ、今年は1年を通してチームに貢献できる存在になりたい、ならなきゃいけないと思っています」
こう淀みなく口に出せる時点で、佐々木は精神的に大きく成長していると言える。チームのために献身的にプレーし、そのうえで個性を出す。運命に導かれて市船にやってきたスピードアタッカーの真価は、まさにここから発揮される。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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